電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

King Gnu、Official髭男dism、ハルカトミユキ[ブロガー経由で聴き始めたアーティスト]

 思い返せばこれまでの人生で人から薦められた音楽をあまり聴いてこなかった。しかも歳を取るにつれて新しいものに手を出すのが億劫になっている。これはよくない。精神的老化だ。音楽に詳しくなる必要はないけれど、ある程度広く聴いていたほうがいいに決まっている。ということでとりあえず見に行っているブロガーの勧めていたアーティストの曲をいくらか聴いてみた*1

 

 

King Gnu

 かんそうさん(kansou)の記事から興味を持った。記事を読んだ当時は「ああ、アニメ版の『BANANA FISH』とタイアップしてたなあ」くらいの認識で、ここまで絶賛するのなら、と「CEREMONY」を聴いてみた。

 凄い。

 ギターとベースの区別がつかないレベルの音楽低偏差値感性を貫通して脳を揺さぶってきた。初めてハーラン・エリスンの小説を読んだときの感覚*2に似ている。具体的にどどんなテクニックが使われているのか、どんな楽器を使っているのか、なぜこうも聴きいってしまうのか、まったく分からない。けれどリピートして聴いてしまう。アルバムを通して何度も聴いてしまう。強烈な魅力。

 お気に入りは「ロウラヴ」「あなたは蜃気楼」「傘」。特に「ロウラブ」の〈壊してしまいたい“発作”〉―〈傷つけ合う“脳波”〉がすごく良くて、韻のことも全然わからないけど、ここで〈脳波〉が出てくるのは本当に好き。それと「小さな惑星」の温かさと寒さの描写、そして前向きな諦めというべきなのか〈まあそれも別にいいかと/くしゃみをして笑い合うのさ〉という表現が素晴らしい。純粋に歌詞だけで言えばいまのところ一番好きな歌だ。

 

 

Official髭男dism

 こちらもかんそうさん。あれだけ大ヒットしたのに「Pretender」のサビだけは知っているという無知さ加減だった。やっぱり同曲が収録されている「Traveler」から聴いてみた。

 あっ、世間の評価って正しいんだと思った。アベレージヒッターというのか、全編が何かの形で刺さる。楽しい気持ちになれる曲からどこか後ろ向きで暗い歌、そして強い皮肉の歌詞までふり幅も広い。もちろん音楽的な技巧なんて少しも分からないけど……。

 お気に入りは「155万キロのフィルム」「愛なんだが…」「Stand By You」。「Stand By You」の〈涙のターミナル Uh Uh 並んで立っている〉はなぜなのか自分でもよく分からないけどずっと頭に残っている。歌詞に関連して誤解を恐れずに言うと「異端なスター」は好きだけど嫌いだけど好き。この辺はちょっと長くなるから別記事にしようと思っている。

 あと、これは直接は関係ないけどメインで作詞作曲をしている藤原聡さん以外の三人も作詞作曲で参加しているみたいだけど、これって珍しいんだよね? ファンの人たちからの評価がどうなのかは知らないけれど、もしメンバー全員が作詞も作曲もやり続けるのなら、多様性という意味では完全究極体になるんじゃないかな。

 

 

ハルカトミユキ

 サトシさん(飴玉の街)から。当時なんとなく女性アーティストの曲が聴きたくて色々調べてたら紹介している記事を見つけて、とりあえずということでベスト盤を手に取った。

 あれ、と思った。いや、クオリティが低いとかじゃ断じてなくて、いつもおれが好きになるタイプのアーティストじゃないのに良いなと思えたからだ。最初は気に入った数曲だけリピートして聴いてたけど、気が付いたら二枚組を全部通して何度も聴いている。いままでなかったパターンでちょっと困惑している。

 お気に入りは「17歳」「夜明けの月」「二十歳の僕らは澄みきっていた」。ちなみに「Hate You」は初聴きでびっくりして思わずシークバーを動かして聴きなおした。「どうせ価値無き命なら」の〈明日には枯れる花も/可能性と名付けよう〉が気に入っている。こういうところが好きな理由なのかもしれない。

 こういう表現が適切なのかわからないけど、瑞々しい十代のころに戻れたような気持ちになれる。もちろん、歌詞の棘を含めて。時系列的に無理だけどいまの腐り切った魯鈍な人格じゃない、もっと柔軟で優しかった十代のころに聴いておきたかった。三アーティストのなかでは一番歌詞を読みながら聴きたいという気持ちが強い。

BEST (通常盤) (特典なし)

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 いつも以上に浅い感想になってしまったけど、最近聴き始めたということでご容赦を。

 二人のブログを見てもらえればわかるけど、どちらも熱烈なポルノグラフィティのファンだ。ブログもポルノグラフィティ関連の記事を漁りまくって、ついでにくらいの気持ちで別のアーティストの記事も読んで、今回の事に繋がった。そういう意味では広く音楽を聴いて感想だったり考察だったりプレイリストだったりを作っている人は、それがどんなに小規模な片隅の世界であっても、音楽業界に寄与してるんじゃないかな。誰かが紹介してないと自分からは聴き始めないおれみたいな人間もいることだし……。

*1:ちなみに2020年の初頭くらいの日記をもとに書いているので本当にごく最近というわけではない

*2:短編「世界の中心で愛を叫んだけもの」はマジで全く何をやっているのか/言っているのか、さっぱり全然少しも理解できなかったのに「すごい」と思えるなにかがあった。内容自体は正直いまもよくわからない。「死の鳥」とか「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」のほうが好き