電羊倉庫

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浅倉久志編『世界ユーモアSF傑作選』〔会話よりもシチュエーションで笑いをとるタイプが多い〕

『世界ユーモアSF傑作選 1』

 スピンラッドの単行本未収録短編が目当てだったけど、シェクリイやディクスンの短編もあったのが嬉しい誤算だった。この三人の短編もよかったけど、「美味球身」や「コフィン療法」「ガムドロップ・キング」「夢は神聖」と収穫の多い良質なアンソロで、特に最近ユーモアが足りてなかったからいい気分転換になった。

 純粋に明るくて面白い話ならやっぱり「ガムドロップ・キング」が頭一つとびぬけてた。こういうショートショートを書きたくて頑張ってきたけど、イイ手本になるかもしれない。SFというジャンルを茶化しているタイプは「ベムがいっぱい」「終わりのはじめ」より「ノーク博士の島」のほうが好き。なんとなく含みがあるような気がする。「コフィン療法」と「夢は神聖」は筋の運び方やセリフ回し描写方法がどこか映画っぽかった……と思うのは最近いくらか映画を見ていたからかもしれない。「夢は神聖」なんかは一時間半程度の良くまとまったコメディ映画みたいだ。アイディアでいえば「コフィン療法」が比較的奇想だったけどとびぬけてとまではいえないかな。

 ベストを選ぶのは難しいけどやっぱり「コフィン療法」「ガムドロップ・キング」「主観性」の辺りかな。「主観性」はオチよりも頭の方の文章で笑ってしまったけど、あれはどちらかというと翻訳の勝利かも。

《収録作》

チャド・オリヴァー/チャールズ・ボーモント「終わりの始め」
エドモンド・ハミルトン「ベムがいっぱい」
ラリー・アイゼンバーグ「美味球身」
ロバート・アーサー「魔王と賭博師」
ウィリアム・テン「おれと自分と私と」
シリル・M・コーンブルース「かわいそうなトポロジスト」
アーサー・エディントン「呼吸のつづく狒々がいて」
ロバート・ブロック「ノーク博士の島」
ゴードン・R・ディクスン「コンピューターは問い返さない」
ロバート・シェクリイ「宇宙三重奏」
ノーマン・スピンラッド「主観性」
アラン・E・ナース「コフィン療法」
ウィル・スタントン「ガムドロップ・キング」
ピーター・フィリップス「夢は神聖」
フィリップ・ホセ・ファーマー「進めや 進め!」
ジェームズ・E・ガン「女嫌い」

 

『世界ユーモアSF傑作選 2』

 一巻は収録作家で選んだけどこの二巻は「二冊分くらい揃えておくか」という気持ちで購入した。ガンの姉妹作が一巻の終わりと二巻の始まりに配置されているのはなかなか小粋な構成。漫才的な掛け合いの面白さよりはシチュエーションやパロディで笑いを取るタイプが多かった。言語の壁があるから難しいのかもしれないけど、掛け合いで笑いを取るタイプのユーモア小説をもっと読みたい。掌編が二作入っているけど、どちらも好印象。

 ベストは「早熟」か「マーティン・ボーグの奇妙な生涯」かなあ。群を抜いて面白いという作品はなかったけど割と打率は良かった印章。ただ後半に載っていたヴォネガットラファティはいまいちはまらなかった。二人ともアンソロジーとかでたまに読むけどやっぱりどれもあまり琴線に触れてこないからたぶん相性が悪いのだろう。どちらかと言うと一巻のほうが好みだった。

《収録作》

ジェームズ・E・ガン「種あかし」
クリフォード・D・シマック「埃まみれのゼブラ」
ポール・アンダースン「冒険児クロンカイト」
ジェローム・ビクスビイ「火星をまわる穴・穴・穴」
アラン・ネルスン「ナラポイア」
キャサリン・マクリーン「雪だるま効果」
H・アラン・スミス「天国と地獄」
E・B・ホワイト「要約すれば……」
デーモン・ナイト「早熟」
ハワード・シェーンフェルド「創作論理学入門」
ウィリアム・テン「地球解放」
ロン・グーラート「債鬼」
ジョージ・コリン「マーティン・ボーグの奇妙な生涯」
カート・ヴォネガット・Jr.「ザ・ビッグ・スペース・ファック」
R・A・ラファティ寿限無寿限無
チャド・オリヴァー/チャールズ・ボーモント「われはクロード」