電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2022年2月)

マーズ・アタック!(1996年、アメリカ、監督:ティム・バートン、106分)

 むかしテレビ放送されているのを親が観ていて、それを横目で観ていたことがあったんだけど、とあるシーン*1がトラウマになっていたせいで怖くてグロイ映画だと思い込んでいて中々手が出せなかった。いま観るとほかのB級映画より臓物や流血の描写が少ないこともあってむしろ正統派B級(と言うには演者が豪華だけど)な感じもする。もちろん毒気も強くて、特に宇宙船内で繰り広げられる悪趣味はけっこうきついところもある。絶妙にバランスが取れてる、というか絶妙にアンバランスというか。

 スラプスティックで割と気楽で楽しい(?)映画だった。ただ、もうちょっと相互不理解のシーンがあるのだと期待していた*2ので、その辺はちょっと残念だった。火星人の皆さん、ちゃんと言葉を理解してやってたのね。

 本国ではかなり評判が悪いみたいだけど、やっぱりハリウッド映画を茶化しているようなところがあるし、アメリカを風刺しているようなところもあるから仕方ないのかもしれない。そういう意味では外国人のほうが気楽に観れて良いのだろう。

《印象的なシーン》「逃げないで。我々は友達」

 

 

ヘレディタリー/継承(2018年、アメリカ、監督:アリ・アスター、127分)

「ミッドサマー」の感想を漁っているときに「ホラー作品としてなら前作のほうがずっとよくできていた」みたいなのがあって、気になったので視聴。

 確かにこっちのほうが百倍くらい怖かった。そもそも「ミッドサマー」の怖さって正統派じゃないところがあるから比較するのも違う気がする。「ヘレディタリー」はかなり正統派のホラー作品でゴア描写がきつく、心情描写は辛く、展開にハラハラさせられ、ちゃんと怖い。

 後発の「ミッドサマー」と共通するモチーフがあるのもちょっと興味深い。あとゴアシーンは少ないけどかなり強烈なこと、女優の人の表情がすごいのも共通*3

 完全な善は存在しない。母親も、息子も、そして父親も少しずつ間違っていて、悪いところがある。けれど、善の反対に限りなく近いものは存在する。だから現実味とフィクション感のバランスが良くて、終盤に怖さが爆発するんだと思う。

《印象的なシーン》終盤、目を覚ましたら後ろに何かいる場面。

 

 

透明人間(2020年、アメリカ/オーストラリア、監督:リー・ワネル、124分)

 かなり古典的なテーマというのもあるだろうけど「この描写ならオチはAかBのどちらかだろうなあ」と考えてたら、実際そのB*4の方だった。個人的にはAの方が面白かったと思うけど、それは「透明人間」じゃなくなるからなあ……。

 とてもシンプルな筋書きな映画で、だからいい作品だったと思う反面、この明快さで二時間はちょっと長すぎる気もする。特に無意味なシーンがあったわけではないから不満があるというほどではないけど、もうちょっと二転三転する展開が欲しかったなあ、というのが本音。後半の雨の中の追跡はSF的な対応で面白い。

《印象的なシーン》精神病院での自殺未遂シーン。

 

 

ディアボロス/悪魔の扉(1997年、アメリカ、監督:テイラー・ハックフォード、144分)

 アル・パチーノって凄えや*5……。

 法廷ものの作品はほかに「SUITS/スーツ」を途中まで観ていたくらいだから、こういう作品でも法廷シーンを新鮮に観ることができた。もちろん、主題はたぶんそういうことではなくてもっと道徳的なものだったんだろうけど。こういうシーンをよく見かけるけど、アメリカの裁判ってあんなにドラマチックなのかね。いや、さすがにそんなわけないか。

 仕事か家庭か、みたいな話って一時期の日本だけのことだと思ってたからちょっと意外だった。感想を漁ってみると終盤の展開に白けたという意見も多くて、まあわからなくはない。おれも純法廷ものと思ってたし。個人的にああいう要素は割と好きだし、前振りの各種描写もキッチリしていて良かったと思うけど、どちらかというとキリスト教的な説教っぽさがちょっとなあ。単なるアレルギー反応かもしれないけど、なんとなく原始回帰*6っぽい匂いがして嫌だった。あと、やっぱり異形に見えたやつらはヒトじゃなかったのかな。

 このテーマ、この展開、このオチで二時間超はちょっと長すぎる。特にタイトルと序盤の展開でどういう物語の筋なのかおおよそ見当がつくわけだし、もうちょっと短いほうが「ちょっと観てみようかな」とか「せっかくだし観なおそうかな」と思えるんじゃないかな……。

《印象的なシーン》「はじめまして」

 

 

良いビジネス(2017年、アイルランド、監督:レイ・サリヴァン、5分)

 大長編映画の導入部分を抽出しました、って感じの作品。CGのレベルは高いし話の筋も簡潔だからストレスなく観ることができる。ラストの文字もそれなりに皮肉が効いている。二時間映画であのオチだったら怒るかもしれないけど、そこは短編映画の良いところだ。

《印象的なシーン》唾を吐く異星人。

良いビジネス

良いビジネス

  • Darryl Kinsella
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*1:あのシーンマイケル・J・フォックスだったのか……。

*2:降伏したくて白旗上げたら相手の文化圏では徹底抗戦の意味だった、みたいなやつ

*3:中盤で息子を罵るシーンは圧巻の一言。慟哭もほかの映画のどのシーンより真に迫っていた。

*4:正確にはB+αだったけど、おおまかにはBだった

*5:特に終盤の顔

*6:古き良き社会に戻りましょう的な