電羊倉庫

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最近見た映画(2022年4月)

プラットフォーム(2019年、スペイン、監督:ガルダー・ガステル=ウルティア、94分)

 こういう閉塞的なシチュエーションの映画はかなり好み。階層社会や飽食、持続可能性がテーマとして提示されつつ、どこか宗教的な物語構造になっているのも面白い。ヨーロッパ映画だしモチーフは聖書関連かなとも思うけど、一か月ごとの変化なんかはアジア系の宗教の輪廻転生を思わせる。

 途中で理想論的なものが提示され、それが否定(というか言葉だけで人は動かせないと反論)され最後の行動では強制力を否定しないものの、暴力一辺倒にならないだけの理屈も備えて動くところは綺麗と汚いのバランスが取れてて良かったと思う。ただ結論は正直ありきたりというか、オーソドックス過ぎて新鮮味はなかったかなあ。

 思わせぶりな描写が多くて、そういうのを読み解くのが好きな人は永遠に楽しめると思う。個人的には、もうちょっと謎を少なくするか作中で種明かし(?)をしてほしかったけど、この辺は趣味の問題かなあ。主人公のゴレンをはじめ、登場人物はみんな魅力的でシンプルな筋書きに起伏を作ってくれている。結局ミハルはどうだったんだろう。子供の存在はあの唐突なラブシーン(?)と関係があったのかとか、正気の度合いはどうだったのだろうとか。そして最後の伝言を含めて。

 最終盤で妙に軽快なアクションシーンが入っていたけど、正直ちょっと浮いているような気もする。

《印象的なシーン》舞い散る紙幣。

 

 

ビンゴ(2012年、日本、監督:福田陽平、99分)

 二連続で主人公がハッと目を覚まして始まる映画を観た……というのはただの偶然だけど、こちらもかなりシンプルな映画。最初と最後がキチンと対応していて、そういう意味では丁寧。ただ、筋書きは良くも悪くもすんなり進んでいくから、意外性にはちょっと乏しいかもしれない。

 たぶんアレだろうなあ……うんうん……あれっ、違うの……あっ、やっぱりそうだよね。あっ、けどそうするのか、うーん……。って感じの映画だった。良くも悪くもシンプルだけど、目の前で即座に執行されるってところはけっこうショッキングだし、それなりにハラハラさせられる。ただ、ちょっと演技が……と思ったけど、あんまり迫真で演技されるとテーマがテーマだけに逆に観づらくなるかもしれない。

 死刑がメインのテーマだけど、あまりそういう方面に深堀はされない。個人的には最後の一展開で死刑制度自体への問題点としてよく挙げられる冤罪の可能性とか、更生がどうというセリフへの批判とかが欲しかった。ただ、メッセージ性がまったくないわけではなくて、特に最後の二択の結末の理由はそれなりに含蓄がある。最後のセリフはちょっと「は?」と思ってしまったけど、やっぱり彼女にとっての「救い」は独りになることだったのかなあ。

《印象的なシーン》窓から見下ろす微かに歪んだ笑み。

 

 

名探偵コナン 時計じかけの摩天楼(1997年、日本、監督:こだま兼嗣、95分)

 昔、テレビ放送されていたのを見たことがあって、最初(ラジコン)と最後(赤と青の二択)だけ覚えていたけどそれ以外は記憶に残ってなかったから新鮮に見れた。

 コナンシリーズは基本的な設定だけは押さえていて、原作もロンドンに行った辺りまでは読んでいるけど、それ以降のことは風聞で耳にする程度。劇場版一作目だけに登場人物もかなり少なく、お祭り感は低いけど複雑さはなくかなり気軽に観れる。筋書きも推理ものというよりはサスペンスっぽい雰囲気*1で、次々に繰り出される時間制限付きの謎解きを解き進めて大きな事件にたどり着く。個人的にはBBC制作『SHERLOCK』「大いなるゲーム」みたいでとても良かった。程よくアクションあり、程よく謎解きあり、程よくラブストーリーありと娯楽作品のお手本。冒頭にいつもの解説も入っているし博士の発明品シリーズにもきっちり説明が入るから、コナンシリーズをよく知らなくても楽しく観ることができると思う。

 あと本筋とはあまり関係ないけど、昼行灯な印象のある小五郎が正義感や倫理観が安定している大人として描かれているところも好き。

《印象的なシーン》扉越しに会話する蘭と新一。

 

 

スマイル(2017年、イタリア、監督:Tullio Imperatore、5分)

 睡眠前の不安と発想、そして起床後の解消がテーマ。描かれていることはとても普遍的なことで、けれど、切り取りようによってはこんなにドラマティックに描ける……っていう意味でも、やっぱり歌詞のような映像作品だった。あと、吹き替えしかないのかって思ったら原語がナレーションだけ日本語らしい。どういう意図かはわからないけどちょっと面白い。

《印象的なシーン》朝、メモを見て笑う老人。

Smile

Smile

  • Giordano Bassetti
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Run Baby Run(2020年、フランス(?)、監督:Stephane Sann、3分)

 シチュエーションホラーは好きだし、逃走のシーンには工夫もあるけど……。ただでさえ機械翻訳丸出しすぎる上にオチの部分が一瞬しか映らずしかも見切れていてわかりにくい。いや、こんなマイナーなショートムービーにいちいち金をかけられないのだろうし、観れるようにしてくれているだけありがたいのだろうけど、それにしてもなあ。

《印象的なシーン》突然灯るヘッドライト。

Run Baby Run

Run Baby Run

  • Sarah Gray
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*1:登場人物の少なさや名前ですぐに黒幕が誰かわかるようになっている