電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2022年6月)

ハードコア(2016年、ロシア/アメリカ、監督:イリヤ・ナイシュラー、96分)

 すごい。アイディアもそれを実現する技術力も、そして嘘をきちんと覆い隠す創意工夫も、非の打ち所がない。序盤からかなり飛ばした展開が続くけど、キチンと抜くところは抜いて緩急がついているし、アクションの種類も豊富でゴアシーンも良く出来ている。アクション映画としてもっともっとたかく評価されてしかるべき映画だと思う。

 感想サイトではストーリーが酷評されていたりもしたけど、そこまで酷くはないと思う。ある人物がどうして無事だったのか、ジミーが序盤で驚いていた理由とか、それなりに前振りも効いているし、無茶苦茶なオチというわけではない。……まあ、意味深な回想シーンを挿入する割に主人公がどういう過程でああなったのかとかはあまり明かされなかったり、後半三国無双みたいになってたけどそんなに戦闘能力高かったっけ?とか、遠隔操作できる高性能義体が存在するならあんな大げさなサイボーグいらないんじゃ……とか疑問というか粗はそれなりにあったのは否定できない。アクション描写やビターなエンドを含めて(偏見かもしれないけど)海外産のゲームのようだった。

 全体的にフィクション係数は高めだけど、それを最序盤にきちんと提示してくれるのは親切。ストーリーは良く出来た付録くらいの気持ちで純粋にアクションを楽しむには良い映画じゃないかな。

《印象的なシーン》ジミーのワンマンショー。

 

 

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年、アメリカ、監督:モルテン・ティルドゥム、114分)

 ベネディクト・カンバーバッチが主演ということで視聴。BBC制作『SHERLOCK』でも人づきあいが苦手な天才を演じていたけど、型に嵌った演技にはなっていなくて挙動や仕草、それに間の取り方に人物像が滲み出ていて素晴らしかった。自信の有無ってキャラクター造形に重要なのかもなあ。

 暗号解読がメインで、この辺は歴史的な事実に基づいているからどうなるかは知っていたんだけど、どうやってどんな過程で、というのは知らなかった。もちろん映画的な脚色は入っているだろうけど、大まかには史実に基づいているらしい。カタルシスもあり、現実の非情さも描かれている。そして、マイノリティ迫害の問題も丁寧に取り扱っている。過度に説教っぽくはないけど、視聴後に当時の、そして現在も続く問題に関心が向くようになっていて、とてもバランスが良い。

 ただ、時系列が三つ(大過去―過去―現在)あってちょっと混乱するところがあった。大過去(幼少期)はともかく、過去と現在は外見がそれほど違わないから一瞬混乱することもあった。もちろん、すぐに理解できるようにはなっていて視聴に支障をきたすほどではなかったけど。

《印象的なシーン》クロスワードパズルを解くことができないチューリング

 

 

プロジェクトA(1983年、イギリス領香港、監督:ジャッキー・チェン、105分)

 喧騒と格闘と友情。

 初代「マッドマックス」を観た時以来の感想だけど、よく死人がでなかったなあ。特にジャッキー・チェン。あの有名な時計台からの落下があるんだけど、一回目はどう考えても首から落ちている。いや、もちろん大方の演者はいまも存命なんだからこの映画で死者は出てないと知っているから安心して観れるけど、公開当時映画館で観てたら気が気じゃなかったかもしれない。

 映画史の文脈はわからないけど、いろいろなものから影響を受けて、そして後発の作品に影響を与えているらしい。個人的には日本の横スクロールアクションゲームが影響を受けている、というのを見かけてすごく納得できた。

 組織的間の反目と身分剝奪の屈辱、そして大きな共通の目的のための団結、と王道を押さえている。娯楽の教科書。ただ、中盤のフェイとのシーンはイマイチというか、そんなに必要なかったような気もする。まあ、あれがないと時計台の下りや路地の自転車チェイスもなくなるんだけど……。

 本編とはちょっと関係ないけど、本場の麻雀に河が存在しないって本当だったんだ。いや、だいぶ昔の映画だからいまもそうなのかは知らないけど。

《印象的なシーン》終盤の剣劇のシーン。

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玩具修理者(2002年、日本、監督:はくぶん、47分)

 大学時代に観たっきり棚の肥やしになっていたけど、なんとなく目に留まったので見直してみた。原作とはかなり違ったテイストで賛否あるみたいだけど、個人的にはけっこう好きだったりする。特にようぐそうとほうとふをCPFで撮ったのは大正解だと思う。美輪明宏さんの声もいい。キャラクターや展開が原作とかけ離れていることに目を瞑ればそれなりに良い映画といえるんじゃないかな。

 ただ、もう少しちゃんと不安を煽るような演出が欲しかった。あと、修理の場面をCG処理するのはちょっとなあ。まあ、原作の描写を再現するとなるとR18指定待ったなしだから仕方ないかもしれないけど、やっぱりホラー味はもっと欲しかったよなあ。

 もし原作に忠実な実写を撮るなら映画よりも三十分程度の単発テレビ番組のほうが向いている気がする。例えば「世にも奇妙な物語」とか……。

《印象的なシーン》子供の絵から実写へと移る捻じれる画面。

 

 

Shutdown(2003年、アメリ*1(?)、監督:Jean-Jacques Dumonceau、7分)

 うーん。いや、CGは年代を考えればあんなものだろうし、疑似密室の設定で緊迫感も出ていて良かったけど、音声が一切翻訳されていないから最後に二転した理由がよくわからなかった。まあ、難しい英語じゃないっぽかったからそのくらいちゃんと聞き取れといわれればそれまでだけど……。

《印象的なシーン》狭い通路を這って進むシーン。

Shutdown

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*1:どうしても公式情報を確認できなかった。製作会社がアメリカにらしくいからとりあえずアメリカということで