電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2022年8月)

夏への扉 -キミのいる未来へ-(2021年、日本、監督:三木孝浩、118分)

 原作を予習して視聴。

 思ったよりずっと面白かった。若干期待値が低かったからというのもあるけど、十分満足できる。特に冒頭で世界観(現実の世界とは違うパラレルワールド的な世界)をきっちり説明できているのはかなり良かったんじゃないかな。ただ、どういうわけか全体の雰囲気はなんとなく星新一……というかNHK星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』っぽかった。日本でSFを撮ろうとするとそうなりがちなのかもしれない。もしくはPETEのせいか。

 璃子(リッキィ)との描写を増やしたのも良かった。原作だとやや唐突感があったしいくらなんでもその年齢差はなあ、というのもあったから本筋に影響しない範囲で変更したのは好判断だと思う。白石(ベル)の三十年後の場面も最低限度嫌悪感が少なくなるようになっている。ただ、メロドラマの部分はやや過剰で陳腐だった。あと、どうでもいいところだけどピートが思っていたより太かった。もうちょっと痩せ型で俊敏な猫のイメージだったのはたぶんおれだけじゃないはず。

《印象的なシーン》飲み物を持って宗一郎の部屋を訪れる佐藤太郎

 

 

ポーカーナイト 監禁脱出(2014年、アメリカ/カナダ、監督:グレッグ・フランシス、105分)

 先輩警官が教訓と知恵を語る談話会、という設定はとても魅力的。諸々の前振りもキチンと効いている。なぜあんな状況になったのか、いとも簡単に人が死ぬのにどうして彼らは殺されないのか、なぜ彼はあの人に嫌われているのか、どうしてポーカーナイトに呼ばれるようになったのか……犯人、先輩警官、主人公の回想にキチンと意味が持たされている。回想シーンが多くて混乱するけれど、それぞれの演出に特色(犯人:悪趣味ポップ、先輩:主人公が追体験する)があって面白い。

 ただ、その魅力的な設定をちゃんと生かしきれてないのが諸サイトでの低評価につながっているのだと思う。ちょっと言い訳っぽいエピローグが入ってたけど、やっぱりポーカーナイトで得られた教訓をもっと巧く活用できる展開にしたほうが良かったと思う。あと殺人鬼の創意工夫のパターンが少ないのがなあ……。

 本当になんとなくだけど、一本の映画じゃなくてテレビドラマの形式のほうが向いていたんじゃないかな。

《印象的なシーン》犯人の行動原理が明らかにされるシーン。

 

 

蜂女の恐怖(1960年、アメリカ、監督:ロジャー・コーマン、73分)

 短くてサクッと観れるけど、絶妙に展開が遅いしメインの蜂女は終盤にちょっとしか出てこないのも不満。ほぼほぼ『昆虫怪獣の襲来』への感想と同じになる。ただ画面が変わり映えしないという意味では『蜂女の恐怖』がやや劣る。こうやって昔の特撮(?)ホラー/アクションを観ると『ゴジラ』『SF巨大生物の島』は本当に良く出来た映画だったとつくづく思う。もちろん、予算の制約もあるから単純に比較できるわけじゃないのだろうけど……ただ、蜂女の造形は本当に素晴らしいと思う。絶妙に気持ちが悪くてワクワクする。

 あと字幕に変な誤字があるのが気になる。繁体字っぽい単語が紛れ込んだりしていたけど中国語からの重訳なわけないから、たぶん簡単な翻訳ソフトで機械的に翻訳しただけなんだろう。

《印象的なシーン》茫然自失で道路に飛び出す博士。

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デッド寿司(2013年、日本、監督:井口昇、92分)

 あなたの期待に沿う下劣下品な楽しい映画。

 良い意味でも悪い意味でも昔の漫画みたいでいちいち突っ込んでいたら*1視聴時間倍になると思う。開始二分でおかしな設定が飛び出し、その後の展開も繰り出される設定もギミックもセリフも展開もすべての知能指数が低い。もちろん、このタイトルとジャケットで高尚な作品が出てくるほうが詐欺なのだから大正解なわけだけど、同監督『片腕マシンガール』と同じくアクションシーンは妙にレベルが高くちゃんとしている*2。ただあっちのほうが一貫して真剣に作られていたのに対して今作はパロディ色が強く品のないシーンも多い。

 眠れない夜に観るのが良いと思う。すべてがどうでもよくなってぐっすり眠れるはずだ。

《印象的なシーン》「マグロに生まれ変わったぞ!」

 

 

健太郎さん(2019年、日本、監督:高木駿輝、35分)

 なんなんだろう……わかるようなわからないような映画だった。設定は割と好きだし健太郎さんの行動原理も深堀出来そうな気もする。あと健太郎さん役の人はすごい。顔も声も完璧だった。

《印象的なシーン》咽び泣く健太郎さん。

健太郎さん

健太郎さん

  • 西川浩幸
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高飛車女とモテない君(2021年、日本、監督:今野雅夫、13分)

 青年誌の読み切り漫画のような物語。二人のなんともいえない空気感が微笑ましい。潔く十分程度で終わるところも好印象。唐突なラストシーンを含めて言葉で説明しろと言われると困るけどなんとなくは理解できる。そんな映画。

《印象的なシーン》最後の一撃。

 

*1:こいつら妙にキスにこだわるけど純情なのか下劣なのかよくわからない……なに大真面目に寿司の解説してんだ……「側近が何を言うか」?……最後のイクラの軍艦、エイミーかよ。などなど

*2:一部引きで撮ったシーンでは当たってないのがあからさまだったり、得物を使ったアクションは動きがややぎこちなかったりと粗もある。