電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2022年10月)

メメント(2000年、アメリカ、監督:クリストファー・ノーラン、113分)

 めっちゃ面白かった。見てなかったことを後悔した、というレベルで面白かった。こんな感覚は久しぶりだ。描写の順序が順列ではないうえに時系列が二本あるせいで一度観ただけではちゃんと理解するのが難しいけど、上映順序と作中時間の時系列さえ整理できれば、精巧に作り上げられたシークエンスの複合体が作中時系列のちょうど中間、縄の結び目で二本の時間が合致し全ての謎が氷解する、あの素晴らしい瞬間に脊髄から頭頂に痺れるような喜びが登ってくる至福の時を味わえる。ちなみにこのサイトの図説が一番わかりやすかった。情報を整理するのに最適なので一週目が終わったらぜひ。

 メインアイディアの「ある一定以上記憶を保持できない」というのはミュッチャー・ミューラーのスタンドの元ネタ、ということで知っていたけど時系列の工夫については知らなかったから、そういう方面ではものすごく楽しめた。信頼できない語り手に代表される「主観の不確かさ」は大好きな題材の一つなんだけど、これほど完璧に仕上げられた作品には出会ったことがない。自分が何をやっているのか曖昧な状況での不安感を共有するのに最適の構成。もっとも、序盤のレナードのセリフに代表されるように、この映画で信用できないのは主人公だけではないのだけど。

 一週目はテディとナタリーの好感度がコロコロと入れ替わり、二週目は二人のセリフがどれほど意味深だったかがわかった。三週目ではどんな発見ができるのだろう。

《印象的なシーン》「さてと……俺なにしてんだ」

 

 

コラテラル・ダメージ(2002年、アメリカ、監督:アンドリュー・デイヴィス、108分)

 おっ……おお、もう……おっおお、おおおお、おお?うーん、まあ、そんな感じだよねえ……おっ、おお!おおおお!……おお……。って映画。もっと単純明快爽快アクション映画を期待していた(DVDのジャケット裏の紹介文がいかにもそういう感じだった)から暗い展開にちょっと面食らったけど、決して悪い映画ではない。爽快感は薄いけれどアクションは豊富だし戦い方に工夫もあり、にやりと笑みがこぼれる小粋な台詞もないわけではない。自国/敵国のどちらも過剰に持ち上げも貶めたりもしないところも好印象。終盤の展開も意表を突かれる。

 ただ、黒幕の動きがちょっと不自然というか、どこからどこまでが計算で、どのあたりからその計画を仕込んでいたのかがちょっとよくわからないのは残念。やっぱりあの男は最初から最後まで事実上の操り人形だったのかなあ。

《印象的なシーン》車の底に張り付いたゴーディーが死体と目を合わせる場面。

 

 

パニック・フライト(2005年、アメリカ、監督:ウェス・クレイヴン、85分)

 単純明快。善玉と悪玉が明確でストーリーもわかりやすく、観ていてストレスがない。原題と邦題がぜんぜん違うけど個人的にはこっちのほうが内容を表していて良いと思う。時間も丁度いい長さ。個人的には終盤にもう一波乱あると思っていたからちょっと拍子抜けしたのも事実だけど、終わってみればそんなものはないほうが雑然としなくてよかったはず。良くも悪くも予想と期待を裏切らない。

 悪役とはいえちょっと……というセリフが序盤にあるけど終盤に意趣返しに使うのは流石。飛行機内での出来事にもきちんと前振りが存在していて唐突感はないし、作中描写内での納得感はある。ただ、あの老婦人は意味深だったけど、特別な役割を担っていなかったのには拍子抜けした。あと、悪役はあれやられても走って動き回れるなんて大したもんだなあ……。

《印象的なシーン》空港での追跡と逃亡。

 

 

ミッション:インポッシブル(1996年、アメリカ、監督:ブライアン・デ・パルマ、110分)

 任務と裏切りと組織と個人と復讐と復帰。長く続いているシリーズの一作目だけあってスピーディーな展開と胸躍るアクションは純粋に楽しく約二時間があっという間に過ぎていった。冒頭からたくさん人間が出てくるからちょっと混乱したけど、最終的に四人くらいを把握すれば話にはついていける。ただ、登場人物がいまどこにいて何をしているのかイマイチ把握できないことがあった。けど、まあ、大筋だけでも追うことができれば十分ではあるかなあ。理解はアクションシーンで少しずつ追いついてくる。

 メインテーマはいわずもがなの素晴らしさだけど、あえて無音を貫く場面もあり、過不足ない最良のバランスだった。

 原案のテレビ版から改変されたところが多いらしく、テレビ版のファンからは不評らしい。原作改悪なんて言葉があるけど、基本的には日本特有の問題だと思ってたから意外だった。特にテレビシリーズに出ていた重要人物をわざわざ殺さなくても良かったんじゃなかなあ、とファンでもないのに考えてしまう。

《印象的なシーン》IMF本部金庫室への潜入。

 

 

靴屋と彼女のセオリー(2017年、日本、監督:河村永徳、25分)

全体的にやや過剰。けど、まあ、コメディだからなあ。ちょっと大げさだったけど演技力にかけているわけではないし、なにより台詞が聞き取りやすかったのは良し。短い時間の中で起承転結もあるのは良いけど、最後の手術のいかがわしさが最後のオチに活かされていないのはちょっと残念だった。

《印象的なシーン》「東京オリンピックまで帰ってくるな!」

 

 

Two Balloons(2017年、アメリカ、監督:マーク・C・スミス、9分)

 癒される。キッズ向けのラベルが張ってあるけど、むしろ大人のほうが好きなんじゃないかなと思う。自活可能な飛行船/船舶は子供の頃に思い描いた秘密基地の究極体そのもので、いくつになってもワクワクしてしまう。

《印象的なシーン》ノートを切り取って花を作る場面。