電羊倉庫

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最近見た映画(2022年11月)

キャメラを止めるな!(2022年、フランス、監督:ミシェル・アザナビシウス、112分)

 フランスの人もいろいろ大変なんだろうなあ。

 ああ、いつもの「全く無関係の作品をあたかも関連作品かのように錯誤させてとりあえず興行収入を稼ぐタイプのあくどい邦題」か……と思ったら『カメラを止めるな!』のリメイクとは、恐れ入りました(?)。

 基本的な展開は原作とほぼ同じ。ちょくちょく違うところがあるけど大筋に影響があるものではなくて、だったら無くても良かったんじゃないかと思わなくもないけど、まあその辺はお国柄とかいろいろあるだろうからなあ。個人的には日本人プロデューサーとの「原作に忠実にやるか/やらないか」のやりとりが好き。どちらかというと邦画でそういうことよく聞くけど、やっぱり海外でもそういう論争があるんだろうなあ。そういえば(アメリカの話だけど)『ミッション:インポッシブル』もそれなりに揉めて大変だったって言ってたっけ。

 本邦での評判はイマイチよくないけど、個人的には十分面白かったし決して損をするような映画ではないと思う。ただ、お偉方たちにもうちょっとカタルシスというか「まあ、そこそこ出来てたし良かったじゃん」的な明るい空気がほしかった。あと原作にもあった「エンドロールでのメイキング」も観てみたかった。

《印象的なシーン》資本主義とアイデンティティを語りながらゾンビから逃げるシーン。

 

 

トレマーズ(1990年、アメリカ、監督:ロン・アンダーウッド、96分)

 やっぱりこういうバディものは大好き。怪物の造形はおぞましく、できることとできないことが明確にされていて逃走も闘争にも工夫があり、物語の筋も単純明快で結末も爽やか、とB級パニック映画の良い所が凝縮された作品。おれはこういうタイプの映画に詳しいわけじゃないけど、B級映画やカルト映画を敬遠するような人でもちゃんと楽しめる娯楽作品だと思う。

 土の中を移動する怪物という設定は一つの発明だよなあ。本作を「陸の『ジョーンズ』だ」と評している人がいたけど言いえて妙だと思う。恐怖感を煽れるし移動の描写を省けるしで一石二鳥、しかも怪物の長所でもあり短所ともなる。よくできているよなあ、本当に。

 ちなみにえらくたくさん続編ができているようだけど、さすがにそこまで追いかけなくてもいいかなあ。まあ、元の設定が秀逸だから多少ぶれて作っても面白くなるのだろうけど。

《印象的なシーン》「頑張れよ、石頭」「任せとけって、青二才」

 

 

ドロステのはてで僕ら(2020年、日本、監督:山口淳太、70分)

 めっちゃ良かった。ちょっとスロースタート気味だけど短く纏まっているし、ストーリーに絡む各要素がキチンと前振りされていて唐突感はほとんどない。起承転結すべてにおいてお手本のような時間SF作品。ただ、全体的に緩い空気で物語が進み設定の確認が多くてクドイところはあるから苦手な人はいるかもしれないけど、登場人物に不快感がないから慣れてしまえばきっと楽しめるはず。時間の短さも相まって観ても後悔しない良作SF映画に仕上がっている。

 エンドロールでメイキングが流れるけど、タイムスケジュールをウォッチで測って管理してた。すげえ、ちゃんと二分を守ってたのか。ワンカットっぽいけど、ところどころわかりにくいように画面を切っているのは上手い。事態の発端をふんわり誤魔化しているのは『サマータイムマシン・ブルース』っぽいところもある。

 偉そうな言い方になるけど、邦画は超大作よりもこういうコンパクトにまとまったアイディア重視の作品が欲しいなあ、と思う。

《印象的なシーン》事態の落着後の二人の会話。

 

 

ルール(1998年代、アメリカ、監督:ジェイミー・ブランクス、99分)

 煽り運転は、やめようね。

 都市伝説を再現する殺人鬼が現れる、という発想は純粋に面白い上に殺し方の工夫にもつながっているのは素晴らしい。ただ、当然と言えば当然だけど日本ではあまり馴染みのない都市伝説もいくつかあっていまいちピンとこないところもあった。逆に言うと日本にも伝わっているようなのもいくつかある。「電気をつけなくて良かったな」という伝言が残されるやつは類似の都市伝説が日本にもあるはず。

 全体的に知能指数が低い。こういうタイプの映画はメインキャラが大学生なことが多いけど、ビックリするほど馬鹿っぽくて本当に大学生なのか疑わしくなる。まあ、感情移入しすぎないためにそう作っているんだろうけど。犯人候補が複数いて終盤まで確定できないのは緊迫感にもつながっていて良い。ただ真犯人は頑丈すぎて笑う。サイボーグかな?

 あと、邦題は「都市伝説」を絡めたほうが良かったんじゃないかな。邦題からもうちょっと真面目なタイプの映画と思ってたから面食らったところもあるんだよなあ。

《印象的なシーン》冒頭のガソリンスタンドのシーン。

 

 

DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン(1983年、日本、監督:庵野秀明、26分)

 島本和彦アオイホノオ』と安野モヨコ『監督不行き届き』で存在は知っていたけど観たことがなかったので視聴。すごいな、これ。特撮には詳しくないけど学生が作った自主製作映画にしては破格の出来だと思う。感想サイトで言われている通り、そりゃあプロの作品と比較するとチープ(戦闘機が明らかに紙製など)だけど、建物の破壊や怪獣の造形、ウルトラマンの動きへの拘りなどもっと評価されてしかるべきだと思う。というか監督の名前で期待値をあげすぎた人が低評価のレビューを書いてるんじゃないかなと思う。

《印象的なシーン》ハヤカワ隊員がウルトラマンに変身するシーン。

 

 

16.03(2016年、ポーランド(?)、監督:ナタリア・シウィカ、16分)

 古典的な筋だけど前振りも一応ちゃんとしているし、大きな破綻もなくちゃんとしている。短いしサクッと見れて良いと思う。ただアマゾンレビューで苦言を呈されていたけどカメラマンの存在が消し切れていないから、ミスなのか前振りなのかが分かりにくくなっているのは確かにちょっとなあ……。

《印象的なシーン》最初のトラックの衝突。

16.03

16.03

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