電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た存在しない映画(2022年11月)

ネオ・デビルマン(2018年、日本、監督:湯間博激、136分)

 同じくネットフリックスオリジナルの「DEVILMAN crybaby」と同時配信されていた作品をなぜいまごろかというと「DEVILMAN crybaby」でダメージを受けすぎて手を出せなかったからで、だいぶ遅くなってしまったけど、ひとまず視聴できた。原作がアンソロジーなこともあって、本作も総勢10名の監督によるアンソロジー的な構成になっている。各作品のつながりはないけど、飛鳥了/不動明/牧村美樹だけはキャスト(アニメならCV)が共通しているのは、やっぱりパラレルワールドを強調する意図があるのかな。

 個人的に印象的だったのはやっぱり岩明均先生と安彦良和先生のパート。前者は実写、後者はアニメでシリアス/ギャグと正反対だけどコンパクトに纏まっていて完成度は高い。ほかにも実写なら高寺彰彦先生のパートは重苦しい雰囲気もさることながら屋上の決戦は圧巻の一言で、アニメなら三山のぼる先生のパートが作画のレベルの高さもさることながら下級デーモンのデザインがあまりにも素晴らしい。全体を通して、できれば安彦パートは本人に監督してほしかった、ということだけが唯一の不満かな。

 かなり悪い意味で有名な実写版と「DEVILMAN crybaby」はどちらも永井豪先生の『デビルマン』を原作にした映像作品だけど、本作はその二作ともテレビアニメ版とも違った持ち味がある。もちろん、作家の独自性が色濃く出ているから好みは分かれるかもしれないけど、各種媒体の『デビルマン』になにかしら触れたことがある人なら騙されたと思って観てみほしい。絶対に損はしない。

《印象的なシーン》「やめんか、ヨシオ」

 

 

永遠の森―博物館惑星―(2001年、日本、監督:菅江健、104分)

 いやあ、いつか観たいと思っていたからDVD/BDで復刻してくれた本当に嬉しいですわ。個人的には映像化するならアニメかなと思っていたけど、実写でも十分鑑賞するに値する良作に仕上がっている。もちろんSF的なギミックはちょっと厳しものがあって原作よりかなり縮小しているけど、それでも2001年の映画にしてはかなり頑張っているし、役者もいくらか日本人に置き換えたキャラクターがいるけど、多様な人種を可能な限り再現している。もちろん、各所で批判されているようにネネはどうにかして原作通りにやってほしかったなあ。ただ、マシューを日本人にしたのは、まあいいんじゃないかな、なんとなくだけど。

 エピソードについては比較的小道具を準備しやすい「天井の調べ聞きうる者」と「この子はだあれ」を中心にしつつタイトルにもなっている「永遠の森」そして、当然クライマックスの「ラヴ・ソング」につなげている。もちろん、削ったエピソードに含まれた各種前振りはキッチリ拾っている。SF的なギミックをかなり絞ってきただけにメインの二エピソードではかなり映像に凝っている。素晴らしい。

 原作には二冊分の続編があるけど、映画化はちょっと難しいんだろうなあ。いまに至るまで続編は作られていないし、制作のうわさも聞かない。ぜひやってほしいけどなあ。

《印象的なシーン》永遠の森の輪舞曲。

 

 

頼むからゼニを使ってくれ!(2014年、日本、監督:作道四郎、60分)

 貝殻や布など(物品貨幣)から銭を使った買い物(鋳造貨幣)に移行するようあの手この手を使って民衆を導く映画。やっていることは大まじめな経済政策なのにお上が必死に嘆願して下々の者どもが居丈高にふるまっているのが可笑しくて仕方ない。時代劇の体裁をとっているけどほとんどファンタジー。基本的な時代設定は日本の飛鳥時代のようだけど、主人公のお殿様はどう考えても江戸時代の将軍がモチーフだったり、なぜか日本語ペラペラの黒人が出てきたりとハチャメチャ。特に通りすがりのスーツの男(どう考えても現代人の学者)が突然ケインズ論を滔々と語り颯爽と去っていくシーンは爆笑した。ただ、コント味が強すぎて受け入れられない人もいるかもしれない。

 後半が駆け足が過ぎて尻切れトンボに終わってしまっているのは至極残念。調べたらいろいろ事情があったみたいだけど、せっかく良い題材を見つけたんだから、もうちょっと長い尺で作り直してくれてもいいと思うんだけどなあ。

《印象的なシーン》殿様が泣きながら「秤量貨幣カレンシー・バイ・ウェイト!」と連呼するシーン。

 

 

猫語の教科書(1970年、アメリカ、監督:ツィツァ*1、70分)

 史上初、猫が脚本監督を務めた異色中の異色作。お猫様に撮っていただいた映画ということで全世界の猫の下僕の皆さんがこぞって映画館に押し掛けたことでたいそう興行収入も良かったらしい。

 肝心の内容の方は……まあ、そこそこ。人間のスタッフは監督の指示を忠実に守っているらしく会話の途中でただただ空を撮ってたり、数分だけなぞの場面が挿入されてたり、役者が突然なぞの言葉を発したりするところもある。けれど、全体として作品として破綻しているというわけではなく、一応ちゃんとはしている。

 個人的には冒頭のナレーションが特に印象的。グッと引き込まれるし、これから起きることについても多少のことは許せる気持ちになれる。

《印象的なシーン》猫が獣医には従順であるよう説くシーン。

 

 

魔法と科学(2024年、日本、監督:真崎有智夫、10分)

 薄暗い雰囲気ではあるけど、昭和の中期ぐらいの雰囲気をよく再現しているし話の筋もシンプルでオチもそれなりのものがついている。「彼ら」がどういう存在だったかについての匂わせも、どちらともとれるように作られている。少なくとも観ても損はしない作品。

《印象的なシーン》仮面のような老婆の笑み。

*1:ヒトの助監督としてレイ・サースがクレジットされていているがポール・ギャリコの変名であるという噂がある。