電羊倉庫

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tvk『この動画は再生できません』[モキュメンタリー的ヒト怖と緩い空気のコントの融合]

 全四話で一話が25分程度と手軽に観れるホラーコメディドラマ。前半が投稿された動画を丸々流し、後半でかが屋の二人が演じるオカルトの専門家二人が動画を分析するという構成。それぞれ、女子高生のTikTok、ストリーマーの生配信動画(Twitch?)、カップルの投稿動画、YouTubeに投稿されたPR動画と動画の種類もバラエティに富んでいる。全体を通して前半の投稿パートはやや退屈なところもある。その辺で好悪が分かれるかもしれないけど後半のパートが少しでも面白いと思えたならぜひ視聴を続けてほしい。

 第一話は殺害時の力の入っていない演技にちょっと脱力するけど、本音を吐露し合うシーンの妙なリアルさは一見の価値があるし、後半のパートには重要な伏線が張られていて気が抜けない。第二話はこのドラマの中で一番現実的でブログを書いている身として(いや特定しようとする人なんていないだろうけど……)ちょっと気を付けようと思わされた。第三話は全体の雰囲気が最も薄気味悪く、投稿動画のパートの完成度が高い。第四話は前半の投稿動画パートがかなりオーソドックスというか、やや薄味なのは否めないけど、それだけに後半の解説パートでは凝ったことをしている。

 ベストは第二話「消えた配信者」。なんだったら二話から観始めてもいいくらいだと思っている。良く出来ているし演技にも危うげがなく、思いっきりパロディが入っていてクスリと笑える。あと流れてくるコメントが妙にリアルなのも好き。

 いくつか細かい所を。三話の最後のビデオレターは二人が去ってからも撮り続けられていたけど誰が撮ってるだろう。協力者は複数いたってことかな。四話の背景の机にはエナジードリンクの空き缶が山盛りになっている。あと一話で赤線を引いたはずなのに四話で引かれていないことが提示されている。物理的な干渉はできないということかな。けどだったら食事は……?短いドラマだしもう何度か通して観てみればまた発見があるかもしれない。

 基本的にはそれぞれ一話で完結しているけど、最終話には四話すべてをつなぎ合わせた大オチが用意されている。明かされる大オチには意表を突かれるし、ホラー味とコント味が絶妙に絡み合っていて何とも言えない後味になっている。続編つくってくれないかなあ……最後のあれは、まあ、ほら例えば田口翔太郎『不死身のパイセン』みたいに何事もなかったかのようにギャグ的な処理ですませることだって……。

 

 

各話リスト

一話.死者から来た呪いの動画
二話.消えた配信者
三話.事故物件
四話.呪われた社内ビデオ