電羊倉庫

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最近見た映画(2023年4月)

ノイズ(2022年、日本、監督:廣木隆一、128分)

 何かの記憶違いかもしれないけど物凄く明るいCMを観た記憶があって「がんばればがんばるほど不条理に死体が増えていく。一体どうすんのこれ!」みたいなコメディサスペンスなのかなと思って観始めた。もちろんシリアスなサスペンス映画*1なのはすぐにわかった。

 殺人事件を捜査する側(警察や探偵)ではなく罪を犯した側視点で描く作品は多分珍しくはないんだろうけどミステリ系にほとんど触れてこなかったおれにはちょっと新鮮だった。切実さと焦燥感が過不足なく、それゆえ適度に感情移入できて終盤はそれなりに胸が苦しくなる。それに対して刑事側の二人はちょっと紋切型すぎて……うーん……。あと、詳しくは書かないけどラストの下りはいらないんじゃないかな。そんなに良く出来た展開ではないと思う。

 filmarksでは「タイトルは『ノイズ』じゃなくて『瘡蓋』のほうが適切だった」と言っている人がいたけど、たしかにそうかも。もしくはもっとノイズ(雑音)を効果的に使ってくれた方がグッときたかもなあ。ちょっと違うけど、過失で人を殺してしまい、それを正統化するために徐々におかしくなっていくという意味では『DEATH NOTE』の夜神月を思い出す。もちろん役者込みで。

《印象的なシーン》真一郎のメッセージムービー。

 

 

ラクル・ニール!(2016年、イギリス、監督:テリー・ジョーンズ、85分)

 サイモン・ペッグが好きなので視聴。ジャケットから受けるであろうイメージそのままの映画で気軽で軽薄でささやかな進歩もある楽しいコメディ作品。発動条件が判明するまでのハラハラ(「校長の丸焼きが食べたい」等)や願いに対する融通の利かなさも工夫があって良し。まあ、たしかに「崇拝」を言葉通りに受け取ればそうなるわな。最後の最後で効いていないと思っていた願いが実は十二分に効力を発揮していたことがわかるのも良い。ハツカネズミやイルカほどじゃないけどやっぱり賢いんだね。

 最後の手のひら返し……はちょっと言い過ぎだけどえらくすんなり主人公を受け入れたことに違和感を覚えているひともいたけど、あれはやっぱり「意思を無視して操られる」ことを実際に体験して「願いによって操られていた」かどうかを判断できたからなんじゃないかな。

《印象的なシーン》軽快に動き出す犬の糞。

 

 

ハード・コア(2018年、日本、監督:山下敦弘、124分)

 あちらは洋画でアクション。こちらは邦画でコメディ。

 正直、序盤の三十分でちょっと辟易していたけど、ロボオを発掘(?)してからグッと面白くなった。コメディ味も強めにドタバタ活劇的な展開も楽しく、さらに弟の左京が再登場してからは深みも増した。まったく違うタイプの三人から五人くらいが一つの目的のために協力するという展開はオーソドックスだけど燃えるものがある。

 こういう作品でオーパーツ的なものがすべてを解決してしまっても機械仕掛けの神っぽくてダメだけど、かといってまったく寄与しなくても「じゃあなんのために出てきたんだ」となるから難しそう。その辺は割とうまく処理されていたと思う。個人的には「完」の後のシーンはちょっと蛇足感はあるけど、辟易とした序盤三十分の悪戦苦闘に意味を持たせられていてとても良かったと思う。

《印象的なシーン》アタッシュケースを持って二人を訪ねる左京。

 

 

悪夢のエレベーター(2009年、日本、監督:堀部圭亮、105分)

 思ってたのと違うと思ってたら思っていたやつだと思っていたら思っていたやつと違った。けど、面白かった。

 前半と後半でがらりと作風が変わる。というか前半も前半で一部と二部に分かれていて作中三度は雰囲気が一変するという珍しい作品。かなり良く出来ていて、おれが油断して観ていたというのもあるけど、終盤の展開には驚かされた。重大なネタバレになるから直接は書けないけど、前半はあの映画、後半はあの映画っぽいなあ、と思っている。

 最序盤のモノローグと終盤のモノローグが対応しているけど、それを解決しても逆転ホームランにはならない気がする。いや、そういうことじゃなくて救える命があって自分にはまだそのチャンスが残っているということなのか。

 こんなブログ書いておいてなんだけど、いまから視聴するなら前情報や先入観を持たずにタイトルとジャケットのイメージだけで観てほしい。

《印象的なシーン》ラストの気づき。

 

 

I Just Wanted to See You ~誰かに見られている気がする~(2020年、日本、監督:マイケル・ウィリアムズ、15分)

 うーん……破綻している、とまでは言わないけどその設定でその展開はちょっとなあ。題材がオーソドックスなのはいいけど、味付けがちょっと薄すぎるような気がする。何か一工夫あったらなあ……。役者の雰囲気はけっこう好き。

《印象的なシーン》デイビットが残した絶妙な日本語の手紙。

 

 

滲み(2023年、日本、監督:加藤也大、12分)

 雰囲気は好き。かなり好き。どういう話か説明しろと言われると困るけどなんとなくは理解できる。宮崎夏次系っぽい……わけじゃなくて、宮崎夏次系系統の絵柄の読み切り漫画っぽいというか、なんというかそういう感じの映画。

《印象的なシーン》足音。

 

*1:町長の演技がブラックコメディっぽいところはあった。