電羊倉庫

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最近見た映画(2023年5月)

映画 真・三國無双(2021年、香港/中国/日本、監督:ロイ・チョウ、118分)

 中国の『三国志演義』を基にした日本のゲーム『三國無双』シリーズを原作にした香港と中国と日本の合作映画がグルっと一周回って日本に翻訳輸入されてきたらしい。というか『三国無双』って中国でも人気があったのか。

 明るく楽しく元気になれる上質な娯楽映画。剣劇では『三國無双』らしく一対多で暴れまわったり英雄同士の戦いでは無意味に宙を飛びまくったりと、とても楽しい。ストーリーは黄巾の乱から反董卓連合までを描いているけど、明らかな巨悪(張角董卓)と対峙する英雄という構図がわかりやすく、味方側の主要人物もほとんど死なないこともあってこともあって哀しさはほとんどない。ただ、時期的に多少は仕方ないんだけど三国の英雄の中で孫堅がかなり小物っぽくなってるのは残念だった。

 ゲームをプレイしたのはだいぶ昔だからうろ覚えだけど、全体的なビジュアルの再現度が高く、関羽がゲームと同じ走り方していたりと、本家ゲームと同じモーションでアクションをしている場面がけっこうあって、『三國無双』シリーズへの愛情が感じられる。反董卓連合の本陣は秘密基地みたいでかなりカッコ良いけど、野暮を承知で言うとこの時代にそんな大きな仏像はなかった*1んじゃないかな。あと曹操役の人がイケメンで貂蝉役の人が美人なのも良かった。

 ぜひ続編を作ってほしい。これ以降の時代となるとそれなりに死人とか出てくるけど、せっかく『三國無双』を題材にしているのだから諸葛亮司馬懿もみてみたいなあ。

《印象的なシーン》劉備曹操の手合わせ。

 

 

かっこいいスキヤキ(2023年、日本、監修:上田誠、75分)

 分類としてはスペシャルドラマだけどAmazonプライムに映画として登録されていたから映画ということで。

 物々しい設定と厳つい容貌ででささいな日常の葛藤や右往左往を描いている。男一匹ただただ真剣に生きているのが一番面白い、という島本和彦作品にも通底するタイプのコメディ。グルメ色が薄いのがちょっと不満だったけど、これはおれが原作を未読で『孤独のグルメ』のような食事メインの作風を期待していたからで、作風が理解できてから(「花粉」くらいから)は普通に楽しめた。

 作品への感想からちょっと離れてしまうけど「夜港」の作中でタブレット端末での注文が「大嫌いだ。そこにいるんだから直接聞きに来い」と否定的に描かれていた。おれはタブレット端末での注文システムは人類四大発明の一つに数えられる*2くらい素晴らしい発想と思っていたから、創作物とはいえ、あれを嫌いになる人間がいるのか……と軽くカルチャーショックだった。

《印象的なシーン》「最後の晩餐」のオチ。

 

 

アフリカン・カンフー・ナチス(2021年、ガーナ/ドイツ/日本、監督:セバスチャン・スタイン/サミュエル・K・ンカンサ、84分)

 えぇ……大丈夫なの、これ。

 初っ端の設定からしてかなり危うくガーナアーリア人への変化に至ってはマジで大丈夫なのか心配になるけど、東条やヒトラーの描写を含めて一応皮肉として描いているといえなくもないから、まあ……。

 吹き替えはほとんどホットペッパーのCMのノリ。爆笑はしないけど、なんだかクスリと笑えてしまう。特殊効果はびっくりするほど安いけど、アクションはわりとちゃんとしてる。大会のシーンは奥行きが存在せずなんともいえない背景画面も相まって2D対戦型格闘ゲームっぽい。

 近現代史は詳しくないけどこの二人は性格的には水と油で、120%うまくいかないと思う。三人の達人に指南を受けるシーンがあるけど、これってもしかして往年のカンフー映画のパロディだったりするのかな。あとアカンテ役の人はカッコよかった。

《印象的なシーン》ポンコツのイタリアは除外された……。

 

 

とっととくたばれ(2018年、ロシア、監督:キリル・ソコロフ、100分)

 タイトルがごもっとすぎる。どんだけ死なないんだこいつ。

 リアリティがあるタイプじゃないけど、派手で外連味のあるアクションはわりと楽しい。ただ流血描写はかなり安っぽいし、音楽もちょっとなあ……なんかあってないような気がするし、演出とあわせて謎に大仰だけど、ブラックユーモアなのかなあ……と思ったけど、感想サイトによるとそういうことらしい。狙ってやっているのなら、そこにチャンネルを合わせられなかったおれが悪い。

 個人的にはあまり肌に合わなかったけど、二転三転する展開や密室でほぼ完結する閉塞感善悪が微妙な登場人物なんかは純粋の良い出来だと思う。ほぼ全員*3が悪いやつだけど、少しは同情すべきところがあって決して悪意の塊ではないところも個人的には好き。

《印象的なシーン》手錠の解説シーン。

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Letter to you 〜想いは時を越えて〜(2022年、日本、監督:石山泰人、16分)

 良い題材だしストーリーもオーソドックスだけどグッとくる。最後の字幕も、おれは大きな被害を受けたわけでもないけど、どこか救われた気持ちになれる。ただ、演技感が昔のCMっぽくいのはちょっと…あと、その特殊効果的なものは要らなかったと思う。

《印象的なシーン》ボトルメールを発見する優希。

 

 

逢魔時の人々(2022年、日本、監督:溝口稔、27分)

 関西弁のコント感が良い方向に作用してる。設定や展開に危うい所もあったけどキチンとフォローも入りちゃんと成立している。短い時間の中にファンタジー的な展開から理性的なツッコミ、前振りからそれを踏まえたオチまでしっかりつけられていて、とても良い作品だと思う。

《印象的なシーン》ゴーギャンの豪やったんか

*1:仏教は伝来していたけどそんなに流行っているわけではなかった。

*2:他は「都市」と「文字」と「自動食洗器」

*3:本当に何も悪くないのは一人だけ。