電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2025年5月)

ベイブ(1995年、アメリカ、監督:クリス・ヌーナン、92分)

 思っていたよりも王道な展開の映画だった。気弱で優しい主人公が新たな環境で辛い目に合うも、持ち前の優しさや意外な特技で徐々に周囲から認められ、最終的には大きな大会で結果を残す。特異な点は主人公が子豚で、動物たちが当然のように会話して意思疎通していることだ。

 子豚が主人公のコメディという前情報だけで見始めたから、まさか牧羊豚なんて方向に進むとは思っていなくて度肝を抜かれた。動物たちのやり取りはコミカルで楽しく、けれどベイブの出自からくる薄暗さはブラックユーモアとしても機能していてよくできている。中間にショートエピソードをいくつか挟んで牧羊犬コンテストに収束していくのも小気味が良い。楽しくて笑えてちょっと泣きそうになってしまう。古き良き映画だった。

 多種多様な動物が登場するけれど、SFXと実在の動物を織り交ぜて映像が創られていらしい。すげえ。おれには区別がつかなかったけれど、この辺はやっぱりやや画質が荒いことが良い方向に作用しているのかもしれない。

《印象的なシーン》門から飛び立つフェルディナント

 

 

アメリカン・サイコ(2000年、アメリカ、監督:メアリー・ハロン、102分)

 タイトルとジャケット画像が忘れがたい印象を残す本作はアメリカのバブル期におけるエリートたちを風刺したブラックユーモア作品らしいけど……どういうことだったんだろう。

 変な映画ではあると思う。エリートがアイデンティティを失って狂っていく、という大筋は理解できるけど、何が現実で何が妄想なのか判然としないし、残虐なシーンは気持ち悪くてコミカルで気色悪い。どういう映画だったのかと問われて上手く答えられる自信がない。面白かった気もするし、そうでもなかったような気もする。不思議な映画。

 作品のテーマでもあるから仕方ないのだけど、本当に登場人物の区別がつかなくて、誰がなにをしていてどこにいっていま生きているのか死んでいるのかよくわからなくなる。ストーリー自体はそれほど難しくないから大筋は理解できるけど細かい所はよくわからなくなる。謎の映画、というのが正直な感想。もちろん、終盤の観念的……というかこの表現が正しいのかはわからないけどフィリップ・K・ディック的な曖昧さもその一助となっている。

 作品の感想とはちょっとずれるけど、名刺を見せ合う(名刺の出来を比べ合う)シーンは『トリック劇場版』の名刺バトルの元ネタだったりするのかな。

《印象的なシーン》ベッドの上、鏡に映る自分の筋肉を見て悦に入るべイトマン

 

 

前田建設ファンタジー営業部(2020年、日本、監督:英勉、115分)

 男一匹、ただ真剣に生きているのが一番面白い。まあ、本作は男一匹というわけではないけれど、面白さの原理は同じものがあると思う。非現実的な、もしかしたら子供っぽいと非難されるかもしれないことを、立派な社会人が真剣になって検討していく。昔のアニメ特有の設定のブレさえも検討し、可能な限り原作に近づけるように一歩ずつ進んでいく様はフィクションを愛するおれたちへの最高の贈り物になっている。

 アニメファン映画でもあり同時にお仕事映画でもある。描写が正確なのかおれにはわからないけど地質や掘削機械、それにダム建設系の創意工夫が挿入され、そのあたりを追うだけでもなんだかワクワクしてくる。少なくともおれは、もし少年期に見ていたら建設業界を志したかも、と思えるくらいお仕事映画としてのクオリティも高い。

 好きなタイプのコミカルさだなあ……と思っていたら脚本のクレジットを見てなるほど。やっぱりヨーロッパ企画の作品は外れないなあ。

《印象的なシーン》土井が不破にプレゼンする場面。

 

 

アナと世界の終わり(2017年、イギリス、監督:ジョン・マクフェール、98分)

 これはまた露骨なパロディ邦題を付けたなあ……と思っていたら原題が『Anna and the Apocalypse』だから誠実な直訳だったとは、おみそれいたしました(?)。

 ゾンビ×ミュージカルという異色の映画。おれはミュージカル文化にあまり触れずに生きてきたから正直あまりしっくりこなかったけど、映画の出来自体はよかったと思う。たぶん。

 異色なコメディ映画だけど物語の筋はかなり王道で、聞きかじった意見だけどミュージカル要素もよくできているらしく、組み合わせが奇妙なだけにゾンビもミュージカルも真っ当に良いものを作っているのかもしれない。思っていたよりもブラックユーモアではなかったから個人的には拍子抜けしたけど、そういう映画だと分かっていればキチンと楽しめる良い映画だったと思う。

《印象的なシーン》世界の終わりを軽快にスキップで通り抜けていく場面。

 

 

HOME PARADOX(2020年、日本、監督:荻颯太郎、9分)

 セリフがほぼ存在しない映画で、役者の挙動や背景映像等で視聴者が物語を補完するタイプの映画。雰囲気がなんともいえず良くて、内容もループSFの中間をバッサリはぎ取って圧縮したような潔さがある。個人的にはけっこう好き。

《印象的なシーン》シームレスに戻ってくるエレベーター。

stg-dev.ktv-smart.jp

 

 

きえてたまるか(2019年、日本、監督:清水啓吾、29分)

 精巧な素人感。手作り感がものすごく良い方向に作用している。なんだかたまらなくなってくる。なんでもない大学生の青春の一頁なんだけど、なんというか存在しないノスタルジーを刺激されてしまう。役名の「早食い」ってなんだ……と思ってたら本当に早食いだったのにはちょっと笑ってしまった。

《印象的なシーン》二手の別れる四人。

filmarks.com