電羊倉庫

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平野清美編訳『チェコSF短編小説集』[とおい国からのSF]

チェコSF短編小説集』

 チェコ産のSF小説オリジナルアンソロジー第一弾。書店で一目惚れして購入。チェコの人名に馴染みがないせいでキャラクターを把握するのが少し難しかったけど、それはそれで新鮮ではあった。やや古めの作品が多く収録さているだけにSF観に時代を感じるところもある。

 以下、気に入った作品の簡単な感想。「オーストラリアの税関」はいかにもSFらしいショートショート。たしかにサイボーグって検疫とかテロ対策的な問題が起きそうだよなあ。「大洪水」ショートショート。皮肉が効いていて良い。裏目に出た発明」はある種のディストピアだけど、なにがディストピアなのか理解できない人も多いんじゃないかな。そういう意味を含めてユートピアディストピアの典型的な作品。「オオカミ男」はちょっと復讐の過程が簡潔すぎるのが不満だけど序盤とラストでシチュエーションが対応しているのが良い。「来訪者」は気の利いたショートショート。最後の一言が良いねえ。クレー射撃にみたてた月飛行」の試みはよくわかっていないし、ケネディやその周辺の事情にそれほど思い入れもなければSF的な要素にグッときたりもしなかったのに、なんだかとても良かった。P256では笑ってしまった。ブラッドベリの影」はタイトルを含めて印象深い。ブラッドベリの根っこにあるノスタルジーってこういうことなのかもしれない。「終わりよければすべてよし」は台本形式(戯曲?)の作品でディストピア的な冷酷さを被害者側が発揮しているのが面白い。

 ベストはやっぱり「ブラッドベリの影」かなあ。本家ブラッドベリを好きなことを含めて、一番記憶に残っている。

収録作一覧

ヤロスラフ・ハシェク
「オーストラリアの税関」
ヤン・バルダ
「再教育された人々」
カレル・チャペック
「大洪水」
ヨゼフ・ネスヴァドバ
裏目に出た発明」
ルドヴィーク・ソウチェク
「デセプション・米の化け物」
ヤロスラフ・ヴァイス
「オオカミ男」
ラジスラフ・クビツ
「来訪者」
エヴァ・ハウゼロヴァ―
「わがアゴニーにて」
パヴェル・コサチーク
クレー射撃にみたてた月飛行」
フランチシェク・ノヴォトニー
ブラッドベリの影」
オンドジェイ・ネフ
「終わりよければすべてよし」

 

チェコSF短篇小説集2』

 チェコSFの第二弾。まさか第二弾を読めるなんて思っていなかったから書店で見つけたときにはビックリした。全体的にかなりレベルが高い作品集で、個人的な好みを含めて打率もかなり高い。

 以下、気に入った作品の簡単な感想。「口径七・六二ミリの白杖は『邪眼は月輪に飛ぶ』を(逆だけど)思い出す。アクション作品としてレベルが高いうえにオチのショッキングな映像や心情の変化の描写も秀逸。すばらしい。「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」は偉大な発明(?)がきわめてミクロな個人的事情に使われて終わってしまうという王道を描いたショートショート寄りの作品。最後にやってきたあいつはやっぱり未来人的な存在だったのかな。「新星」星新一筒井康隆のいいところを融合したような作風で加速する上品なドタバタがたまらない。穏当なラストが印象深い。「発明家」はかなりオーソドックスで優しい物語。こういうのもやっぱりほしいよね。「歌えなかったクロウタドリも古典的なオチで大変なことになっているのに笑みが零れてしまう。「バーサーの本をお買い求めください」はやられた。おれがやりたかったことがやられている。「肩肘だけの六か月」は中編くらいの長さがあるけど、それに見合ったキャラクター描写があるし、SF要素の濃度も適度なものですんなり読める。

 ベストは「肩肘だけの六か月」と迷うけどやっぱり「新星」かな。心なしか訳文も生き生きとしている気さえする。

収録作一覧

オンドジェイ・ネフ
「口径七・六二ミリの白杖
ヨゼフ・ペツィノフスキー
「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」
イヴァン・クミーネク
「微罪と罰
ジー・ウォーカー・プロハースカ
「……および次元喪失の刑に処す」
ヤン・フラヴィチカ
「あの頃、どう時間が誘うことになるか」
エドゥアルト・マルチン
「新星」
ズデニェク・ヴォルニー
「落第した遠征隊」
ズデニェク・ロゼンバウム
「発明家」
ペトル・ハヌシュ
「歌えなかったクロウタドリ
ヤロスラフ・イラン
「バーサーの本をお買い求めください」
ジー・オルシャンスキー
「エイヴォンの白鳥座
スタニスラフ・シュヴァホウチェク
「原始人」
ヤロスラフ・ヴァイス
「肩肘だけの六か月」