電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

星新一

星新一『宇宙のあいさつ』〔時事への皮肉と因果応報の物語たち〕

「宇宙のあいさつ」 地球老年期の始まり。 宇宙人。スムーズすぎる侵略には思いがけない罠がある、という星新一的アイロニーの典型的な作品でありながら、展開には意外性がある。オチを敢えて子供に語らせることで皮肉を強調している。人類はどうなるんだろ…

星新一『ボンボンと悪夢』〔恐喝と強盗と宇宙人〕

「椅子」 母への郷愁は呪い。 呪いのアイテムにしては平凡な見た目だけど作用はかなりキツイものがある。こんなに短い話なのに終盤に至るまで「二人とも母を幼くして失っていた」という前振りが頭から抜け落ちていた。 「雪の夜」 二階で永劫の時を過ごすム…

星新一『悪魔のいる天国』〔大人のための寝かしつけ物語〕

「合理主義者」 理論は現実を超越する。 前提の設定がやや珍しいけど展開もオチもシンプル。ある意味星新一作品で一二を争うほど純粋な人なのかもしれない。理論に外れたものを全否定するという意味では典型的な理系(への偏見)を描いている。 「調査」 知…

星新一『ようこそ地球さん』〔ズレの物語/よそ者たち〕

「デラックスな拳銃」 無用な多機能拳銃保有のチンケな男。 デラックス。強盗(?)。本来の用途とは無関係な機能をこれでもかと付けた携帯可能な道具、ということでスマートフォンを予見したといえなくもないけど、これはそういうことを気にするべき作品で…

星新一『ボッコちゃん』〔ファンタジー/SF強めの初期傑作選〕

「悪魔」 金貨と氷上と悪魔。 悪魔。お手本のようなショートショート。前振り、展開、オチ(そしてツボが湖の底にし沈んでいた理由≒初期設定の原因の提示)が完璧にそろっていて、しかも簡潔。巻頭を飾るにふさわしい作品。ちなみに、福本信行『賭博堕天録カ…

NHK『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』[色とりどりの作品を押さえた良質なドラマ作品]

原作にかなり忠実なドラマ。15分という尺も、間延びはしないけどアレンジの幅が程よく残っていて絶妙。素晴らしい。気軽に観れる明るい作品、思想色が強く鬱々とした作品、意外なオチがついた作品、雰囲気を楽しむ作品と、星新一*1の作品の中でも色とりどり…