電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

思い出:となり街

今週のお題「となり街」 となり街にはゲームセンターがあった。 僕が幼少期に住んでいた街は県下ではそれなりの規模の市だったのだけど、どういうわけかゲームセンターがなかった。……と言われても若い人にはあまりわかってもらえないかな。いまはゲームセン…

吉村清子『劇場版 ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉』[別の調理法で味わうあの感動]

映画があまりにも面白かったので購入。実写/アニメ/漫画を問わずノベライズを読むのは久しぶり(たぶん『ハイ・ストリーマー』以来)で新鮮(?)だった。始まりと結末は原作と同じだけどそこに至る流れはけっこう違っていて、どちらかというと原作のほうが…

フィリップ・K・ディック『アルファ系衛星の氏族たち』[深刻で真剣なのにコミカル]

短編の「スパイはだれだ」を原型としたと思われる長編小説。ふんわり死にたがる主人公、精神的な病とそれに由来する閉鎖的な疑心暗鬼と陰謀、作家という職業、偽物として他人に成り代わる、妻とのトラブル、救いの手を差し伸べてくれる少女、不定形生物、星…

最近見た存在しない映画(2024年6月)

ミーアンの冒険(1986年、日本、監督:末弥秀子、79分) シンプルにまとまったファンタジー作品。窮屈な家から飛び出したお姫様が世間知らずに起因する見通しの甘さで四苦八苦しながらも謎の少年ウィスプと出会うことで徐々に事態が好転していき、やがて彼の…

最近見た映画(2024年6月)

コナン祭り第二弾。 このあたりから昔読んだ原作の範囲ではカバーできない新キャラがでてくる。SNS等で話題になっていたからなんとなくは知っていたけれど、主に赤井関連と安室関係の予習を兼ねて『緋色の不在証明』と『灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイ…

フィリップ・K・ディック『髑髏』[異文化と戦争]

収録作の一部は既読。ダーク・ファンタジー・コレクションの第十弾として刊行されているけれど、『人間狩り』よりもホラー色は薄めでファンタジー要素もそれほど多くない。ややマイナーな作品が多めに収録されていることを含めてディック拾遺集という印象が…

『告白 コンフェッション』感想

存在する映画になったので観てきました。 いい映画だった。まずはなにより主要キャラ二人がかなりはまり役で、個人的には作画:かわぐちかいじになる前のキャラデザ:福本信行でキャストしたような印象がある。浅井が……具体的な場面までは思い出せないけど………

劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』感想

劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』の感想。前半はネタバレなし、後半はネタバレあり。

最近見た存在しない映画(2024年5月)

劇場版GRANBLUE FANTASY The Animation: Relink(2025年、日本、監督:伊田唯子、118分) 公式の謳い文句である「王道ファンタジー」に違わず筋立てはかなりオーソドックスで予想を裏切ない。人によっては物足りないと感じるかもしれないけど個人的にはこれ…

最近見た映画(2024年5月)

コナン祭り第一弾。 原作の『名探偵コナン』は大学生の頃にロンドンに行った辺り(いま調べたら72巻だった)までは読んでいて、そのあとの展開はたまにテレビアニメを観たりX(当時はTwitter)で話題になっていたからなんとなくは知っていた。テレビアニメを…

フィリップ・K・ディック『人間狩り』[ホラーテイストなディック作品集]

収録作の半分弱が既読。ダーク・ファンタジー・コレクションの第一弾として刊行され、全体的にホラーや怪奇色の強い作品が収録されている。唯一ユーモラスといえるのは「よいカモ」くらいだけど、これもどちらかというとブラックユーモアであまり素直には笑…

NHK『ユーミンストーリーズ』〔観るユーミン。上品で優しく厳しい物語〕

短編アンソロジー『Yuming Tribute Stories』から三作品を原作にしたオムニバスドラマ。各作品、15分×4話で実質一時間ドラマという構成。原作小説を読んで原曲を聴きなす、という完璧な予習を経て視聴。 思ったより原作から変えているところが多いな、という…

『Yuming Tribute Stories』〔青春の終わり。もう取り戻せない日々の痛み〕

松任谷由実さん*1の楽曲をトリビュートした短編小説アンソロジー。純文学に疎いおれでも知っているような有名作家陣がユーミンの名曲たちを活字として再構成している。題材になった楽曲に各作家の個性がそれぞれのやり方で乗せられていて興味深い。トリビュ…

最近見た存在しない映画(2024年4月)

泥男の恐怖(1951年、アメリカ、監督:M・V・メルト、78分) スタージョンの短編「それ」を原作にした映画で、この年代特有のゆっくりとした展開と鋭いBGM、画面全体の薄気味の悪さ、そして原作にもある生理的な気持ち悪さを増幅させたヴィジュアルがホラー…

最近見た映画(2024年4月)

ロンドンゾンビ紀行(2012年、イギリス、監督:マティアス・ハーネー、88分) 単純明快娯楽ゾンビコメディ映画。原題は直訳すると「ロンドンっ子vsゾンビども」みたいな感じらしいけど、どんな捻りでこんな邦題になったんだろう……原題を尊重した方がラストの…

フィリップ・K・ディック『市に虎声あらん』〔なんだかよかった。好きかもしれない〕

ディックの普通小説。SF/ファンタジー的な現象はまったく起きない主流文学小説で、事実上の処女作というべき作品らしい。正直、あんまり好みじゃないかなと思いながら読み進めていた。なにより肩ひじ張った文章にうんざりしていたけど、だいたい40ページくら…

江面弘也『名馬を読む4』[栄誉の二レース、年に一度の栄光、忘れられない勝ち方、砂塵の競走]

活字で読む名馬たちの物語。一冊を通したコンセプトがあるわけではなく、どの名馬/名レースも同じ紙幅で描かれていることから、全体の感覚としては二作目に近い。また「はじめに」にある通り一章は『名馬を読む』というより『名伯楽と名手を読む』といった感…

最近見た存在しない映画(2024年3月)

解放区(2025年、日本、監督:今井八朔、109分) 最初の数分を除いて一貫して夜の景色で構成された映画。やや画面が暗くて見ずらいところはあるけど、それだけにファンファーレや花火で彩られる画面の華やかさが際立っている。ほぼ一貫して夜という意味で逆…

最近見た映画(2024年3月)

ドグラ・マグラ(1988年、日本、監督:松本俊夫、109分) 大学生くらいのころにレンタルで視聴済み。2020年にBDが出たんだけど(主に資金的な)諸事情があって躊躇していたのを今回思い切って購入した。 夢野久作的なおどろおどろしい雰囲気や現実ぐらぐら感…

ポルノグラフィティ19thライブサーキット「PG wasn't built in a day」の簡単な感想

福岡公演に参戦してきました。 すげえ近かった。うっひょひょひょ、やったやったやったたー! 人生でこれ以上ステージに近づくことはないと思う。肉眼で壇上の人々が見えて、生の声なんじゃないかと錯覚しそうなほど間近な声が、楽器が、床を這って伝わって…

フィリップ・K・ディック『ヴァリス〔新訳版〕』〔理解できたし面白いけど……やっぱり残念〕

思ったよりずっとわかる話だった。 旧訳で読んだときより物語の筋をちゃんと理解できたのは翻訳のおかげなのか年月がそうさせてくれたのか。新訳のほうが俗語をちゃんと俗っぽく翻訳してくれているみたいで、少なくとも本書については新訳のほうが正しいよう…

最近見た存在しない映画(2024年2月)

ザ・リーチ(1953年、アメリカ、監督:ジェフ・シャセット、70分) おどろおどろしい雰囲気と不条理な宇宙生物の襲来、その対策に関する人間関係のいざこざ科学技術に創意工夫、そしてもう一段のオチ……と古典的な怪獣映画。もちろん映像技術的には現代の映画…

最近見た映画(2024年2月)

ベイビー・ドライバー(2017年、イギリス/アメリカ、監督:エドガー・ライト、113分) すごい。冒頭一発目のカーチェイスだけで元が取れる。音楽とカーアクションは文句なく素晴らしいけれどストーリーは良くも悪くもオーソドックスで新鮮味はない。個人的に…

King Gnu全アルバムの(簡単な)感想

ここでも書いたけど聴き始めたのは世間で評判になっていたからというのと好きなブログで推されていたから、というだいぶニワカな理由からだった。とりあえず公式YouTubeにアップロードされているMV動画をいくつか聴いてみるか……と何気なく聴いたのが「傘」だ…

フィリップ・K・ディック『フロリクス8から来た友人』〔主人公がだいぶ不愉快だけどそれなりに面白い物語〕

マジで読むのやめようかと思った。というかディックじゃなかったらやめていた。一部登場人物が不愉快。以下、悪口の羅列。 デニーは人が見ている前では殴らないって、いやさっき思いっきり殴りかかってたでしょ。いや、なんだこいつ。マジで奥さんの方が正し…

最近見た存在しない映画(2024年1月)

ドリブレッドをおくれ(2010年、アメリカ、監督:クラレンス・メツガー、124分) ほんの少しの水ドリブレッドを巡る人々の葛藤を淡々と描いている。背後にある陰謀論的世界と、それに関わっているはずなのに事態の進行から疎外され続ける主人公のK・カフ(K.C…

最近見た映画(2024年1月)

きさらぎ駅(2022年、日本、監督:永江二朗、82分) ネットロアを基にした映画で、元ネタは一応は読んだことあったし元ネタを原案に大幅にアレンジした映画ということは知っていたけど、まさかここまでパニック映画風になっているとは……けど、登場人物を増や…

杉山俊彦 『競馬の終わり』〔競馬とSFが楽しめる暗く楽しい問題作〕

待望の競馬SF。序盤の短文の連続(緊迫感を出したいわけでもないのになぜ?)に面食らって、正直試し読みもしないで買ったことをちょっと後悔したけど、それ以降はそんなことなくて安心した。よく「問題作」という評を聞くけど、これは確かに問題作としか言…

tvk『この動画は再生できません2』[ミステリ要素強めのホラーコメディ。ずっと眺めていたい緩さも健在]

待望の続編。やったぜ。前作と同じく25分を四話と手軽に楽しめるホラーコメディ。基本的な設定および構成も前作を引き継いでいるけれど、一話の冒頭に前作の補足(と最終話への伏線)となる映像が挿入されている。また、謎を解明した後に第三者視点での種明…

フィリップ・K・ディック『永久戦争』〔機械による戦争、政争、存在しない戦争、星間戦争〕

収録作品はすべて既読。戦争を題材にしたコンセプトアルバムだけどせっかく「ジョンの世界」が収録されているのだから「変種第二号」もセットで収録してほしかった。そこはちょっと残念。収録作の感想は大森望編『ディック短編傑作選』シリーズで書いたので…