電羊倉庫

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最近見た存在しない映画(2024年5月)

劇場版GRANBLUE FANTASY The Animation: Relink(2025年、日本、監督:伊田唯子、118分)

 公式の謳い文句である「王道ファンタジー」に違わず筋立てはかなりオーソドックスで予想を裏切ない。人によっては物足りないと感じるかもしれないけど個人的にはこれくらいのほうが清々しくて好き。やや省略している部分もあるとはいえ原作ゲームにおけるメインストーリーが完全に完結するところまで描き切ってくれたのは掛け値なしに素晴らしい。

 本作で何より目を惹くのは美術のすばらしさだ。キャラクターのデザインが原作よりも(なぜか)デフォルメを効かせているのに対して背景美術や装飾品等はむしろゲームよりもディティールに凝っていて目が眩む。CGの使い方もうまく違和感がない。アンラ・マンユがでかくて本当にこわい。

 ただ、これは各所で言われていることだけどガランツァとマギラフリラが丸ごとオミットされているのはちょっと……かなり人気のあるキャラなんだし多少ストーリーを改変してでも登場させるべきだったと思うなあ。あとフェイトエピソードをいくつか拾ってくれたのは嬉しかったけど、そこに尺を使うなら……と思ってしまう。

《印象的なシーン》突如始まる怪獣大戦争

 

 
Ruina~廃都の物語~(2025年、日本/中国、監督:秣場秋彦/劉炟幸、109分)

 商業リメイク版ゲームのリリースに併せて公開された劇場版アニメ。生まれは男の賢者の弟子でビジュアルは選択画面右から二番目のものに近く、既刊の小説版とは違う世界線という設定らしい。

 淡い色彩で描かれる世界観はとても魅力的で、物語もテンポよく進んでいく。ただ「町の外」「妖精の塔」「小人の塔」がダイジェスト処理されていること、キレハ、フラン、メロダークはかなり出番が少なかったのが残念だった。ただ、その辺を削っただけあって(?)原作で言うところの個別ルートである「忘却界」はファンタジー世界で描かれるSF的展開として忘れがたいものがある。

 良くできた劇場版アニメでおれはかなり好きなんだけど「アクションが薄味で退屈」とか「説明が多すぎる」という評も見かけた。たしかに本作はどちらかというとアドベンチャー寄りでアクションはそれほど多彩とはいえない。その割に予告が「ファンタジーアクション大作」みたいな感じだったから、そこを不満に思われるのも仕方ないのかもしれない。

 原作からオミットした要素も多いからぜひ第二弾でべつの生まれ(個人的には罪人の遺児を見てみたい)の設定で作品を作ってほしい。

《印象的なシーン》初対面のシーフォンに敗れるリベリオン

 

 

エターナル・リーグ・オブ・ネフィア(2009年、アメリカ、監督:ノア・キャットン、101分)

 本筋は冒険ファンタジーとしてはそれなりに正道を征くもの(少数派の種族が戦争による破綻を回避するため王都を目指す)だけど、そこに主人公はそれほど関わらないのが本作の特徴。というよりラーネイレ一行と主人公一行の両軸で物語が進むと説明した方がしっくりくる。中盤以降、主人公はレシマスの洞窟からほとんど出てこないしね。そう考えるとラーネイレは第二の主人公ともいえる存在で、くせ者揃い(特にロミアス)の中ではかなり良識的なキャラクターになっている。

 生死観がかなり独特。どのくらいのことをされると死ぬ(というより復活せずこの世を永久に去る)のか判然としないけれど、平然と乱暴狼藉を働きながら同じ空間で真顔で王命を受ける主人公をみてるとなんだかどうでもよくなってくる。

 完成試写会ではこの独特の設定が受け入れられずに多くの人が途中で席を立ったり意識を失ったりしたらしい。最初は評判もあまり芳しくなかったらしいけど、徐々に口コミが広がって知る人ぞ知るカルト映画となった作品。

 ちなみに続編は鋭意製作中で、まだ公開日の目途はたっていないけど製作中止に放っていないみたいだから気長に待ち続けたい。

《印象的なシーン》「本当に食べてしまったのか?」

 

 

冠を持つ神の手(2018年、日本、監督:加茂夏輝、98分)

 かなり特殊な設定のファンタジー作品が原作なだけに実写映画になると聞いて不安だったけど、個人的にはけっこう良く出来ていたと思う。邦画特有の予算の制約(と役者の制約)があってか背景美術が全般的に洋風から和風に変更されていて、予告が公開された時点では非難の嵐だったけど内容はゲームのシナリオをほどよく取り入れて一つの物語に纏め上げている。

 原作ゲームでは主人公のテキストがほとんど存在しないから想像の余地が大きく、映画化するにあたって具体的なキャラ付けするとどうしても賛否が分かれてしまう。個人的にはビジュアルは良かったけど性格はちょっと想定と違っていて残念だったけど、十数分くらいで慣れてしまった。初見のプレイヤーがとりがちな選択肢を選びつつ、かなり尖ったエンディングへとたどり着く。魔術の存在を含めて世界観の説明はやや不足しているけど、映画単体でちゃんと完結しているのはもっと評価されてほしい。

 ちなみに元々は小劇場で舞台化されていたものが実写映画にスライドしてきたらしい。たしかに突き詰めれば城内で完結させられるし、基本的には人間ドラマの愛憎劇だから向いているのか。そっちもサブスクで配信されているみたいだから見てみようと思っている。

《印象的なシーン》神殿に現れる、彼。

 

 

哀しさ(2041年、日本、監督:真崎有智夫、5分)

 うーん、まあ……このくらいの尺で描くならこれくらいかなあ、というのが正直なところ。ストーリーはそこそこだけど役者の演技が良さに救われる。

《印象的なシーン》「あ」