電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

案内所

ポルノグラフィティ

《〇〇選》

「風景描写」10選

「心情描写」10選

「離別の歌詞」10選

「比喩表現」10選

「嘘と本当」10選

「悲観と陰鬱」10選

《もっと評価されるべき》

「俺たちのセレブレーション」

「Love,too Death,too」

「青春花道」

《歌詞解釈》

「ハネウマライダー」というポルノグラフィティを唄った曲

「メビウス(仮)」の可能性〔ぬいぐるみ、ネオメロドラマティック、老いた人〕

「ネオメロドラマティック」という寄り添い方

《ライブ感想》

「続・ポルノグラフィティ」感想〔おったまげて我が目を疑い震えた〕

「暁」感想[何度も終わりが来て時間感覚がバグった。そして温故知新な新曲]

《アルバム感想》

12thアルバム『暁』感想

《そのほか》

ポルノグラフィティのちょっとしたデータ集

ポルノグラフィティの色彩

 

 

音楽系

タイトル縛りのプレイリスト

King Gnu、Official髭男dism、ハルカトミユキ[ブロガー経由で聴き始めたアーティスト]

 

 

映像作品

《最近見た存在する映画》

―2021年―

(ベスト5:「ミッドサマー 」「閃光のハサウェイ」「一分間タイムマシン」「バスターの壊れた心」「残酷で異常」)

09月(残酷で異常/狂った一頁/幻夢戦記レダ/ゴジラ/サイコ/ゴーストバスターズ)

10月(ミッドサマー/ジェーンドゥーの解剖/俺たちホームズ&ワトソン/片腕マシンガール)

11月(閃光のハサウェイ/SF巨大生物の島/カフカ「変身」/ヘンゼル&グレーテル/一分間タイムマシン/とっくんでカンペキ)

12月(ソウ/バスターの壊れた心/昆虫怪獣の襲来/項羽と劉邦 鴻門の会/あたおかあさん/ヤツアシ)

―2022年―

(ベスト5:「スキャナーズ」「ヘレディタリー」「孤独なふりした世界で」「メメント」「ドロステのはてで僕ら」)

1月(コマンドー/カルト/道化死てるぜ!/銀河ヒッチハイクガイド)

2月(マーズ・アタック!/ヘレディタリー/透明人間/ディアボロス/良いビジネス)

4月(プラットフォーム/ビンゴ/名探偵コナン 時計じかけの摩天楼/スマイル/Run Baby Run)

5月(曲がれ!スプーン/トップガン/ゾンビーバー/地下に潜む怪人)

6月(ハードコア/イミテーション・ゲーム/プロジェクトA/玩具修理者/Shutdown)

7月(ウィッカーマン/スキャナーズ/ゲーム/デッドコースター/縛られた)

8月(夏への扉/ポーカーナイト/蜂女の恐怖/デッド寿司/健太郎さん/高飛車女とモテない君)

9月(ガンズ・アキンボ/孤独なふりした世界で/ショウタイム/ストーカー/ジャックは一体何をした?/ANIMA)

10月(メメント/コラテラル・ダメージ/パニック・フライト/ミッション:インポッシブル/靴屋と彼女のセオリー/Two Balloons)

11月(キャメラを止めるな!/トレマーズ/ドロステのはてで僕ら/ルール/DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン/16.03)

12月(ファイト・クラブ/一度も撃ってません/必殺!恐竜神父/デストイレ/ドッペルゲンガー/Lost Senses)

 

《最近見た存在しない映画》

―2021年―

(ベスト5:「ビーイング」「劇場版ヒストリエ 完結篇」「脱走と追跡のサンバ」「劉邦項羽」「アゲハ蝶とそのほかの物語」)

10月(ビーイング/ボッコちゃん/劇場版ヒストリエ 完結篇/文字を喰う人)

11月(脱走と追跡のサンバ/プリティ・マギー・マネーアイズ/劉邦と項羽/ニッポンの農業の夜明けの始まり/暗がり)

12月(アゲハ蝶とそのほかの物語/ショート・ストーリーズ/エコに行こう!/三国志な一日/生涯)

―2022年―

(ベスト5:「ゴースト&レディ」「スペースキャットvsアースキャット」「ご機嫌直しまであと何単位?」「蟲の恋」「組織は文字でいっぱい!」)

1月(乙嫁語り/色彩、豊かな日常/夢野久作の「冗談に殺す」/時は貨幣なり)

2月(ゴーレム ハンドレッド・パワー/珈琲ハウスへようこそ/白猫姫/歩道橋の上から見た光景)

4月(美亜へ贈る真珠/フラッシュ・ムービー/ちょっとだけUターン/旅に出よう)

5月(李陵/従者の物語/アイアン・ドリーム/スケッチ)

6月(命のネジを巻く旅人サバロ/熱いぜ辺ちゃん!/天使のわけまえ/瞳の奥をのぞかせて/花束と空模様の理由)

7月(そばかすのフィギュア/クラッピー・オータム/流浪の民/夢みる頃を過ぎても/ご機嫌直しまであと何単位?)

8月(ゴースト&レディ/死ね、マエストロ、死ね/嘔吐した宇宙飛行士/蟲の恋/ネコと時の流れ)

9月(コンフェッション/シリウス・ゼロ/悪霊少女/組織は文字でいっぱい!/なき声)

10月(スペースキャットvsアースキャット/戦いの華/スーパーウルトラメガバトルドッチボールマッチ/ウオッチ・メイカー/宝石の値打ち)

11月(ネオ・デビルマン/永遠の森/頼むからゼニを使ってくれ!/猫語の教科書/魔法と科学)

12月(リボーンの棋士/シンパスティック・ドリーム/すべての種類のイエスたち/天下無敵宇宙大将軍コーケイ/眼は語る)

《映画》

『トゥルーマン・ショー』[トゥルーマンと恋人と毒親とおれたち]

《ドラマ》

『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』[色とりどりの作品を押さえた良質なドラマ作品]

『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』[ゾッとする、意味深長な、笑みが零れる、どこか安心する、呵々大笑な……オチのついた物語たち]

『この動画は再生できません』[モキュメンタリー的ヒト怖と緩い空気のコントの融合]

 

 

書籍の感想/雑記

《国内SF作家》

山野浩一

『山野浩一傑作選Ⅰ/Ⅱ』[不確かさ、漠然とした不安、そしてやっぱり文章がかっこいい]

『いかに終わるか: 山野浩一発掘小説集』[単なる落ち葉拾いに終わらない作品群。傑作につながるモチーフ、不条理そのもの等]

梶尾真治

『美亜へ贈る真珠[新版]』[ほろ苦い恋物語にSFのエッセンス]

《海外SF作家》

フィリップ・K・ディック

―長編―

『宇宙の眼』[ぼくがかんがえたさいこうのせかい=他人には地獄]

―短編集―

『アジャストメント』[生涯のテーマからさらっと笑えるコメディまで]

『トータル・リコール』[娯楽色が強くすっきり楽しく読める短編集]

『変数人間』[ショートショート、超能力、時代]

『変種第二号』[戦争と人造物+サスペンス=不安]

『小さな黒い箱』[変色した社会問題と神について]

『人間以前』[ファンタジーと子供たち。そして最良と最悪の発露]

―そのほか―

SFといえばフィリップ・K・ディック

ロジャー・ゼラズニイ

『地獄のハイウェイ』[単純明快な娯楽作品。やっぱりロードノベルが好き]

〈アルフレッド・べスター〉

『破壊された男』[めくるめく展開とハイテンポな文章がたまらない]

『イヴのいないアダム』[キレる名作短編とオムニバス式中編]

ハーラン・エリスン

『死の鳥』[エリスンのベスト短編集]

『世界の中心で愛を叫んだけもの』[暴力の嵐、愛情の渦、薬物の雷]

ロバート・A・ハインライン

『夏への扉』[ちょっとアレなところはあるけど楽しい小説]

《アンソロジー

浅倉久志編『世界ユーモアSF傑作選』〔会話よりもシチュエーションで笑いをとるタイプが多い〕

《文芸》

O・ヘンリ『O・ヘンリ短編集(一~三)』〔世界で愛される名作。いろいろな短編があって素晴らしいけどちょっと訳語が古めかしい〕

J.L.ボルヘス『伝奇集』[短編小説/短編集の良さを再確認できた]

湊かなえ『往復書簡』[徐々に明かされる情報とオチの謎解きが気持ち良い短編集]

湊かなえ『往復書簡』[詳細感想版]

夢野久作『少女地獄』[ぷうんと匂い立つ血の香りと破滅への想い]

《ノンフィクション》

〈競馬〉

『名馬を読む』[中国史書で言えば本紀。生涯戦績、繁殖成績、社会現象、特異な事績など]

『名馬を読む2』[世家、列伝など。周縁事情、馬の関係性、時代、個性]

『名馬を読む3』[バラエティ豊かな名馬たちと最新の顕彰馬キタサンブラック]

〈歴史〉

『古代中国の日常生活』[小説仕立てで追体験する日々の営み]

《雑記》

夢野久作はサイエンス・フィクションの夢を見るか?

漢の歴史と正当性の感覚

印象的な小説のタイトル650選

 

 

漫画の感想/雑記

岩明均の描く女性と「自分ではない者を良く描く」ということ

キミは熱血ギャグ漫画家、島本和彦を知っているか?

 

 

嘘八百を書き連ねた創作文章

思い出:フリーにはたらく

思い出:手帳

生きていくためにとっても大切な薬物の話

 

 

そのほか雑記

星新一はアル中を救う

学習:意味が分かるようになった瞬間

好きの言語化と嫌いの理由

読書感想文と方程式

はじめての遊戯王

完全初心者がマスターデュエルでプラチナtier1に上がった感想

野球のニュース見て漫画読み返してなんか落ち込んだ話

ポルノグラフィティ18thライブサーキット「暁」感想[何度も終わりが来て時間感覚がバグった。そして温故知新な新曲]

 ハイ・ヴォルテージ。

 熊本公演に現地参加、武道館公演に配信で参加。配信は演奏開始五分前くらいから配信が始まって事前アナウンス*1も聞ける。悪霊に絡めた注意事項は楽しいけど、悪霊を喜ばせたいのか退治したいのかよくわからなくて少し笑った。

 配信は今回も字幕付き。もちろん、歌詞はほとんど覚えているけど細かい表現を見ながら鑑賞できるのは嬉しい。

 岡野昭仁さん*2の精強な歌声と新藤晴一さん*3のギターの技巧を堪能した三時間だった。

 

M1. 悪霊少女

 いやあ、やっぱりこの曲ですよね。事前アナウンスやステージの雰囲気から予想通りだったという人も多かったみたい。おれも冒頭かラスト一曲かどちらかかなと思っていた。一発目ということで〈逃れられない〉の10秒間ロングトーンも完璧。両論あるかもしれないけど、やっぱりアップテンポから始まるほうがテンション上がって楽しい。曲の短さも相まってロケットスタートの印象。

 ただ現地では例によって耳が慣れていないからか十全に味わえたとはいえない。ここから数曲そんな感じだっただけにやっぱり最終公演だけでも配信してくれるのは本当にありがたい。

 

M2. バトロワ・ゲームズ

 短い曲が連続で来るのは予想外。なんとなく「悪霊少女」と日替わり交代で演奏されるのかなと思っていた。冒頭で表示されるプレステのロゴのパロディが洒落ている。爆発するような〈バトロワ・ゲームズ〉は圧巻の一言。

 

M3.カメレオン・レンズ 

 ここでやや落ち着いた曲が来るのはちょっと意外だった。特に前二曲が短めだったこともあって、これが一曲目だったかのような錯覚すら覚える。近年のライブで演奏される機会が多いだけに安定感は抜群。

 

M4.ジョバイロ (熊本)
M4.ネオメロドラマティック(武道館)

 現地の「ジョバイロ」はポルノラテン曲の中でもかなり好きなほうで何度聴いても飽きない心地よさがある。比較的よく演奏されるだけに特別感はなかったけど、実直に楽しめた。歓声をあげながら踊れないのが残念でならない。

 そして配信は「ネオメロドラマティック」。えっ、マジで? ついこの間こんなの書いて、またライブで聴きたいけど東京ドームでやってたし無理かなあ……と思っていたところでこれ。もしかしておれの思考読んでる? 怖っ……頭にアルミホイル巻かなきゃ……。アップテンポなリズムで畳みかけられる言葉のシャワーは昭仁の滑舌とこの上なく相性が良くて現地で堪能できた人は幸せだったはず。ある意味「マシンガントーク」よりマシンガントークしている。

 
M5.Stand for one's wish (熊本)
M5.プリズム(武道館)

 現地参加時はこのあたりから耳が慣れて(もしくは音響が改善して?)聴きやすくなった。「稀・ポルノグラフィティ」から一曲くるかなとは思っていたからある意味予想通り。英語の発音が現代昭仁(?)になっていたことを覚えている。

 武道館は「プリズム」。うぎぎ……わしゃあ「プリズム」をいつ生で聴けるのか楽しみにしておったんじゃ……。というわけで武道館に行けた人を本気で羨んだけど、Twitterで同じこと言っている人はけっこういた。ただ、やっぱりライブでやってくれたのは嬉しい。

 
M6.サボテン (熊本)
M6.愛が呼ぶほうへ(武道館)

 現地では「サボテン」で、こういう初期のバラード系統の曲を大事にしてくれるのはファンとしてはとてもありがたい。

 配信では「愛が呼ぶほうへ」。こちらも昔からファンに愛されている名曲で擬人化の手法の一つの極致。じっくりと楽しめる。

 

M7.ナンバー 

 音源版をライブで聴けるのはやっぱり嬉しい。ライブでは後奏のギターがより前面に出ていたのが印象に残る。賛否あったVISUAL ALBUMの映像も「旅」を強調する方向で効果的に使われていたと思う。

 

M8.クラウド 

 ライブで初披露ということでとてもオーソドックスに演奏されていた。薄明りのライトが明け方の晴れ空を思わせる。もしくは寂れた繁華街の淡い光か。どちらにしてもバックの映像は回想でステージ(で歌われている曲)と時系列にズレがあるという演出で、ラストで両者が一致するという構成……というのは穿った観方なのかも。

 

M9.ジルダ 

 こちらも初披露。序盤でロケットスタートを切って、このあたりから中長距離の走り方に切り替えてきたというイメージ。落ち着いて楽しめる。もちろん〈cheers〉の迫力は健在だしラストのフェイクも圧巻。

 

M10.うたかた 

 最高かよ。昭仁が作詞した楽曲で五指に入るくらい好きで「愛と青春の日々」以来演奏されていなかったのも知っていたから昭仁のMCでとび上がりそうになった。〈燦々と浴びてみようか〉の長く伸ばすアレンジに心をねじ切られる。原曲より「終わり」が強調されて、原曲よりもスローなのにどこか力強さがあって、儚さよりも哀しみを強く感じさせられる。歌詞の変更はないけど「サボテン」と「サボテン Sonority」の関係性に近い気がする。個人的には原曲の中華感がすごく好きだから、いつかそちらも演奏してほしい。

 

M11.瞬く星の下で 

 弾き語りスタイルからバンドメンバーが参加する流れはベタかもしれないけどやっぱり良い。落ち着いた弾き語りから一転して吹っ切れたかのように奮い立たせる歌詞を熱唱する構成、そして〈世界がわずかに輝く〉の終わりとともに流れ落ちていく星の演出や二番から窓枠越しに星空を見るというバックスクリーンの映像からは物語性を感じ取れる。

 

M12.Zombies are standing out 

 わたしは、いきる、しかばね、です。

 

M13.メビウス 

 字幕の恩恵の大きい曲で普段歌詞カードを見ない人には衝撃だったんじゃないかなと思う。〈こういうこと?〉の力強い緩急と、その直後の水中での衝撃のような鈍く重い音に躰が痺れる。後者は、もしかして殴打の暗喩だったりしないかな。

 

interlude

 バイオリン(?)が終わったあたりで一瞬、「一雫」が始まるのかと思った。音楽のことなんかぜんぜんわからないけどライブで演奏されるインスト曲は大好きで、今回もこういうパートがあって嬉しかった。「Mission of the Far East」のように表情の移り変わりがあって、なんとなくミュージカル用に作った曲なんじゃないかなと思っていたりする。

 

M14.証言 

 いったんここでライブが終わっている。決して悪い意味じゃなくて、「証言」にはそれくらいのパワーがある。曲との調和という意味では数ある晴一の歌詞の中でも有数の完成度を誇るだけに字幕の恩恵が大きい。前回の「Fade away」と同じくテーマ的に難しいかもしれないけど定期的に演奏してほしい曲の一つ。

 

M15.アゲハ蝶 

 ここからクラップゾーン。間奏では「ララララー」の合唱の代わりにいろいろなリズムでクラップする時間があったけど想像よりずっと楽しかった。コロナ禍が過ぎ去ってしまえばいつの日か、というのはファン共通の想いだと思う。

 

interlude~ファンキー・タイム~

 一公演で二回もインスト曲を聴けてしかもソロパートまであるとはなんてお得な(?)ライブなんだ! 壇上のヴォルテージがあがっていくにつれておれたちの期待も高まっていく。

 

M16.ミュージック・アワー 

 このアレンジめっちゃ好き。前回の「ミステーロ」もかなり好きだったけど、それを軽く上回るくらい好き。こんなにライブ版のアレンジを気に入ったのは初めてかもしれない。現地では飛び上がる挙動のせいでアキレス腱が切れるんじゃないかというくらいテンションが上がった。アゲアゲ。

 

M17.VS 

 現地でこの曲が流れた瞬間「えっ、MCもなしに本編最後の曲に行くの!?」と思ってしまった。それくらい「神VS神」でのプレイは強烈だったのだけど、今回もそれくらいのパワーがあった。本日二度目の終わり。

 

M18.テーマソング 

 おれたちに近い視点での励ましの歌は終盤を迎えて疲れつつある体と心にしみわたる。〈ほら 振り向けば夕日があって 燃えるような熱い赤〉をおれたちが歌える日はいつになるんだろう。

 

M19.暁 

 本編最後を告げるMC直前の重低音が全身を震わせる。膝をつく昭仁のパフォーマンスがあまりにも美しい。終盤でもこの声量。咽喉の筋肉はすべてを解決する。もっと血管浮かせて歌い続けてくれ……。アウトロで補強されたギターが強烈な余韻を残す。本日三度目の終わり。

 

En1.OLD VILLAGER

 新曲!やったぜ‼

 ふるくて新しい曲、というのが第一印象。全体的に初期らしさ、それも『ロマンチスト・エゴイスト』から『雲をも摑む民』くらい雰囲気があるけれどサビは最近っぽさがある。それも、言葉のチョイスに関して、誤解を恐れずに書くならKing Gnuのような新進気鋭のアーティストのニュアンスがある気がする。アルバム『暁』の感想異系交配アウトブリードのことを書いたけど、この曲もそれが絶妙なバランスで成り立っていると思う。もちろん近年楽曲でいえば「暁」の直系でもあるし「2012spark」の血も入っている。過去と今、もしくは内と外。

 攻撃的な楽曲で歌詞も皮肉的だけど説教っぽさが薄いのは、どこか視点が内向きだからかもしれない。ギターソロも好き。もっと掻き鳴らしておれの頭を破壊してくれ。

新しい景色が見たい「そう願うなら自分を変えろ」
というパターンでしょ?

 ここ、最高に晴一で大好き。

 

En2.Century Lovers 

 多幸感がすごい。熊本公演では「Fu-Fu!」がなかなか揃わずにみんなで悪戦苦闘した記憶があるけど、流石に武道館のチケットを勝ち取った猛者たちは一味違うらしく一発でそろっていた。現地には予算の都合でボイスストラップを購入せずに行ったんだけど割と本気で後悔した。おれはただ手を上げ続けるしかなかった。

 

En3.ジレンマ 

 近年復権したアンコールラストの定番曲。ソロパートはそれぞれ、玉田さんはまさかの素手でプレイ、山口さんは殴打するようなプレイ、tasukuさんは「今宵、月が見えずとも」、皆川さんは「サウダージ」のサビを演奏、そして全てを纏め上げるようにギターを搔き鳴らす晴一、そしてラスト一曲なのに有り余る体力すべてを発散するかのように動き回る昭仁と色合い豊かに最後まで楽しませてくれる。

 

――――

 こうやってリストアップするとわかりやすくアルバム曲を演奏するパートが設けられていている。アルバム曲では「You are my Queen」だけ*4が演奏されなかったけど、今後のライブで演奏される機会があるのかちょっと楽しみ。近年ツアーでは定番となっていた「ハネウマライダー」と「オー!リバル」がどちらも演奏されないという珍しいツアーだった。もちろんタオルを振り回したり恍惚の表情でイントロを弾く晴一を観たい気持ちもあるけど、定番を外して尚盛り上がれるのも嬉しい。特に「ハネウマライダー」は終盤に演奏されることが多かったから終わりを察してしまうところもあったし……。「Zombies are standing out」がこの二曲と並ぶ定番になってほしい、というのはラバッパーの総意だと思う。あとインタールードの二曲はどちらもすげえ好きなんだけど何かしらのCD媒体に収録してくれないかなあ……。

 病禍で声が出せなかったのはやっぱり残念ではあったけど、そのぶんクラップが多い公演だった。「アゲハ蝶」から始まるクラップパートでは目が血走ったチンパンジーのおもちゃみたいに手をたたき続けた。たぶん顔も同じ感じになっていたと思う。ちなみに熊本公演はW杯で日本が負けた直後だったからMCは何とも言えない雰囲気になっていた。昭仁が理論的な解説をしていたけど、おれの斜め前にいた同年代くらいの男性がしきりに頷いていたからたぶん正しいのだと思う。

 あと、これは講演の内容とは直接関係あるわけじゃないけど事前に注文してたシャツが発送が遅れて公演の二日後に到着したのには笑った。普段着にしなさいというメッセージかな。それとロゴの「暁」が「NEW」を組み合わせて作られていることに今更気づいた。

 感想はこれくらいにして「OLD VILLAGER」の皮肉に発破をかけられに日本武道館へ戻ります。

 

 

*1:サトシさんによるとディズニーのパロディらしい。演技と声質は神谷明さんっぽい気がするけど、自信はない。

*2:以下敬称略

*3:以下敬称略

*4:シングルを含めるなら「フラワー」「ブレス」も演奏されていない。

tvk『この動画は再生できません』[モキュメンタリー的ヒト怖と緩い空気のコントの融合]

 全四話で一話が25分程度と手軽に観れるホラーコメディドラマ。前半が投稿された動画を丸々流し、後半でかが屋の二人が演じるオカルトの専門家二人が動画を分析するという構成。それぞれ、女子高生のTikTok、ストリーマーの生配信動画(Twitch?)、カップルの投稿動画、YouTubeに投稿されたPR動画と動画の種類もバラエティに富んでいる。全体を通して前半の投稿パートはやや退屈なところもある。その辺で好悪が分かれるかもしれないけど後半のパートが少しでも面白いと思えたならぜひ視聴を続けてほしい。

 第一話は殺害時の力の入っていない演技にちょっと脱力するけど、本音を吐露し合うシーンの妙なリアルさは一見の価値があるし、後半のパートには重要な伏線が張られていて気が抜けない。第二話はこのドラマの中で一番現実的でブログを書いている身として(いや特定しようとする人なんていないだろうけど……)ちょっと気を付けようと思わされた。第三話は全体の雰囲気が最も薄気味悪く、投稿動画のパートの完成度が高い。第四話は前半の投稿動画パートがかなりオーソドックスというか、やや薄味なのは否めないけど、それだけに後半の解説パートでは凝ったことをしている。

 ベストは第二話「消えた配信者」。なんだったら二話から観始めてもいいくらいだと思っている。良く出来ているし演技にも危うげがなく、思いっきりパロディが入っていてクスリと笑える。あと流れてくるコメントが妙にリアルなのも好き。

 いくつか細かい所を。三話の最後のビデオレターは二人が去ってからも撮り続けられていたけど誰が撮ってるだろう。協力者は複数いたってことかな。四話の背景の机にはエナジードリンクの空き缶が山盛りになっている。あと一話で赤線を引いたはずなのに四話で引かれていないことが提示されている。物理的な干渉はできないということかな。けどだったら食事は……?短いドラマだしもう何度か通して観てみればまた発見があるかもしれない。

 基本的にはそれぞれ一話で完結しているけど、最終話には四話すべてをつなぎ合わせた大オチが用意されている。明かされる大オチには意表を突かれるし、ホラー味とコント味が絶妙に絡み合っていて何とも言えない後味になっている。続編つくってくれないかなあ……最後のあれは、まあ、ほら例えば田口翔太郎『不死身のパイセン』みたいに何事もなかったかのようにギャグ的な処理ですませることだって……。

 

 

各話リスト

一話.死者から来た呪いの動画
二話.消えた配信者
三話.事故物件
四話.呪われた社内ビデオ

ポルノグラフィティ「ネオメロドラマティック」という寄り添い方

 うおおイントロ最高!テンション上がるぜ!ライブで盛り上がる最高の一曲!!歌詞も小気味よくてスッと頭に入ってくる。歌詞は……歌詞……うん?……「ボイルした時計」の……「皮をむく」?……んん?……えっ、なに?どういうこと?時計に皮はないだろ……。

 まるでシュールレアリスムの絵画のような情景が聴き手の心を捩じ上げる名曲「ネオメロドラマティック」は、作詞した当の本人である新藤晴一さん*1が「自分でもあまり意味がわからない」という趣旨のことを言っていた(書いていた?)*2くらいの代物で、難解というかハッキリと意味を撮りにくいことで知られている。ここでもちょっと書いたけどそもそも意味の解釈をすること自体が野暮かもしれない。けれど、まあ、考えがまとまったので書いてみた。

 結論から先に書くと「ネオメロドラマティック」は「異端であることを矯正しないで寄り添う優しさ」の歌詞だ。

君はボイルした 時計の皮むきに
ただ夢中になっている

君は砕かれ コンクリートになった
岩のために祈った

 どちらもシュールというか写実的な描写ではない。もちろん解釈にも諸説あって通説はみられない。「時計の皮むき」の方はニュートンのエピソードが元ネタだという説もあるけれど真偽のほどは不明。ただ一つたしかなのは、どちらも無意味な行為であるということだ。茹で上がった時計の皮(?)を剝き上げても壊れた時計が手に入るだけで何も起きない*3し、灼熱に晒され塗り固められるという残虐な仕打ちを受けても、生命体ではない岩に祈りを捧げても岩は救われたりしない。まるで無意味なことに夢中になり、そして真剣になる。無意味なことに夢中になることからは「無垢」を、無意味な祈りをささげることからは「純真」の印象を受ける。けれど、それは理知的とはいえない。この広い世界では「無垢」や「純真」は「愚か」の類義語でもある。そして、そんな〈君〉はその性質ゆえに都合よく利用されているらしいことも読み取れる。

君の「愛して」が 僕に「助けて」と
確かに聞こえた

 この曲の歌詞に優しさがあるのは誰でも理解できると思う。〈行こうか逃げようか 君が望むままに〉〈最後まで付きあおう~ここには僕らしかいないみたい〉と寄り添う優しさがある。全体を通して〈君〉は泣きそうであったり助けを求めていたりと強く前向きに生きているとは言い難い。そんな〈君〉に寄り添う優しさがある。特異な描写に気を取られがちだけど、こういうところはかなりわかりやすい。

 けれど「助けてあげる」や「守ってあげる」とは言わない。「逃げろ」とも「立ち向かえ」とも言わない。それは〈君〉が決めることだ。そして〈君〉が〈行こうか逃げようか〉どんな道へ進もうとも〈最後まで付き合おう僕が果てるまで〉と決意する。とても献身的で、そして強い優しさでもある。

 まとめると「ネオメロドラマティック」は、はたから見れば見当はずれなことをしてしまうような、どこかズレた優しさを持つ(おそらくは)他人からいいように使われてしまうような人を、正常とか常識とかそういう方向へ矯正するのではなく、ただ寄り添い支えることを決意した強い優しさの歌詞*4だ。使用された絵の具があまりに違いすぎるだけで、本質的には「ブレス」に近いんじゃないかなと思う。

 

 

 ちなみに20周年記念東京ドーム公演の音源もある。

 スペシャルゲストのFIRE HORNSが加わったパワフルな演奏は至高の一言。軽い憂鬱なら一撃で消し飛ばしてくれる。単品から購入できるので興味がある人はぜひ聴いてほしい。

*1:以下敬称略。

*2:情報源が思い出せない。間違っていたら申し訳ない。

*3:一応未成年の読者も想定しているから詳しくは書かないけど見返りのない性的な行為の暗喩、という説をかなり昔に見たことがある。どちらにしてもリターンのない無意味な行為に夢中になっている。

*4:そしてそんな優しさが上手くいかなくて最悪の結末を迎えてしまったのが「メビウス」で、ほかアーティストを挙げるならYOASOBI「夜に駆ける」なのだと思う。

最近見た存在しない映画(2022年12月)

リボーンの棋士(2024年、日本、監督:及川肇、128分)

 役者も演技巧者揃いでビジュアルの再現もかなりレベルが高い。ビジュアル面では特に土屋は完璧に近い役者を連れてきていた。エピソード自体はやや端折られていたけど川井役の役者の演技力はもっと絶賛されてしかるべき。対局シーンも原作の良さを損なわない緩急の効いたもので、将棋に詳しくなくても楽しめるはず。事実、おれも駒の動かし方くらいしかわからないけど十二分に楽しめた。

 映画は師弟対決となる伊達戦で終わってしまう*1けど、原作はもう少しだけ続きがある。原作は(断言はできないけど)たぶん打ち切りに近い終わり方をしてしまったけど、本作も好評を博しているみたいだし、ぜひ原作漫画も続きを連載してほしい。純粋な続編出なくても、例えば木城ゆきと銃夢 LastOrder』みたいにパラレルとして作ってくれも……と思っているファンはおれだけではないはず。

《印象的なシーン》伊達の鬼気迫る表情。

 

 

シンパスティック・ドリーム(1981年、イギリス、監督:マーシャム・マルタン、97分)

 やや変わり種の超能力バトルコメディ映画というべき作品。先進的なモンスターのデザインは素晴らしいものがあるし、風変わりなコンセプトをキッチリまとめていて、とても好感の持てる映画。もちろん、特にモンスターのデザインは、いま観るとやや古臭いけれど当時はかなり画期的だったはず。序盤と終盤で意味が変わる「夢」と「現実」の対比が素晴らしく、まさに「夢は神聖」だったわけだけど、希望の持てるラストにもキッチリコメディを絡めているのは流石の一言。

 夢の中の物語、ということでメタフィクションっぽい演出が入っているけど同じ役者が別の端役で登場するなどの遊び心もあるらしい。映画を観てから原作を読んだけど、思っていたよりアレンジが加えられていて驚いた。特に感動した「夢」と「現実」の対比はほとんど映画のオリジナルだったのはちょっと残念というか、なんとなくがっかりしてしまった。

《印象的なシーン》みどりの砂の中に沈んでいくタクシー。

 

 

すべての種類のイエスたち(2015年、日本、監督:好井奈採玲、104分)

 スーパー救世主大戦。

 最初に断っておくとティプトリー「すべての種類のイエス」とは全く関係がない。タイトルに使われている名称は作中では一度も使用されていないけど、まあ、どう考えても救世主のあの人なわけで……。キリスト教が比較的浸透していない日本ならではの作品だろうけど、いつかどこかで問題にならないか心配になる。いや、全般的に好意的に描かれているけど、そういう問題ではないだろうからなあ……。

 基本的にはコメディタッチで穏当に物語が進むけど、所々教義的に拙そうな描写あってヒヤヒヤさせられた。大きな流れはあるけどそれほど重要でもなく、騒動はそこそこにフワッと収束する。散漫といわれればその通りなんだけど、なんとなく含みがあるような気がする。

 文字通りたくさんの「イエス」が登場するのだけど、個人的には安彦良和『イエス』、中村光聖☆おにいさん』、光瀬龍/萩尾望都百億の昼と千億の夜』の「イエス」たちが出てきたのが嬉しかった。

《印象的なシーン》イエスたちの最期。

 

 

天下無敵宇宙大将軍コーケイ(1982年、日本、監督:川添芳雄、99分)

 80年代のロボットアニメの王道を征く作品で宇宙代将軍コーケイが皇帝菩薩ショーエンと死闘を繰り広げる痛快アクション娯楽ロボットアニメ。ちなみに、タイトルに無敵がついているけどちょくちょく負けているところも時代がでていて微笑ましい。あわや全滅か、というところまで何度追い込まれてもそのたびに息を吹き返して最後は至高の位に到達するというサクセスストーリーは小気味よくて、実際当時の人々にもウケが良かったらしい。

 単純明快で楽しいアニメだけどちょっとどうかなという描写も多い。ほとんどはギャグテイストになっているけど、例えば上司のコゥカンへの反乱を含む無数の反逆行為、一般市民を含む籠城者への兵糧攻め、等々やっていることは悪役でしかない。まあ、そもそもSF味で胡麻化されているけど世界観がかなり末世というのもあるんだろうけど。コーケイに限らず降参したやつらをことのついでくらいの感じで毒殺しているわけだし……。

 ラストは小さな惑星で皇帝の座に君臨し「はなはだしき物語の始まりである!」と宣言して終わるけど、コーケイのもとへ向かっていると思しき艦艇が一瞬映っているのが不穏。たぶん「刀が突き刺さった船の床」も何かを暗示しているんだろうなあ。

《印象的なシーン》ショーエンに威圧される勝利者コーケイ。

 

 

眼は語る(2019年、日本、監督:真崎有智夫、5分)

 直接的な描写は一切ないのに状況を理解させてくれる。ジャンルはホラーだけど怖い、というよりは気持ちが悪いタイプ。たぶん、食べてたんだと思うけど、だとすると最後のあれはどうやってたんだろう。

《印象的なシーン》「本当に食べてしまいたいほどきれいだ」

*1:原作終盤の土屋の成長を描き切れていない弊害が出ている。

最近見た映画(2022年12月)

ファイト・クラブ(1999年、アメリカ、監督:デヴィッド・フィンチャー、139分)

 有名作なので視聴。とあるゲーム作品経由で仕掛けのことは知っていたけど物語の筋や落着がどうなるのかは知らなかった。基本的な設定(「ファイト・クラブ」という組織やタイラーというキャラクター)や演出(メタフィクション的な語り掛け等)はすごく好き。ただ、種明かしのカタルシスがやや物足りなかった。あと、これは製作陣も自覚的だったみたいだけど、「ファイト・クラブ」の理念はどう考えてもマチズモだよなあ……。

 自助グループは『ヘレディタリー』にも登場したけど、こういう集会っていまでも一般的なのかね。映像的な工夫は素晴らしくて、こういうタイプの小説を映像化するうえで最良の方法だったと思う。不眠症と犯罪というテーマは『タクシー・ドライバー』と共通するけど求めていたものは逆だった。『タクシー・ドライバー』はもっと大きな流れを期待していて、『ファイト・クラブ』はもっとミクロな視点の物語を期待していた。そういう意味ではちょっと拍子抜けというかしっくりこなかった。

 結局なんだかいい感じの雰囲気で終わったけど、なんかそれもちょっと納得いかないというか……。あと、Wikipediaに「人が一人しか死なないのに暴力的と判断され……」みたいな記述があるけど、いや死人は少ないけどこの映画の暴力性はそういう問題じゃないでしょ。

《印象的なシーン》カメラに向かってタイラーの映画館での仕事を説明する主人公。

 

 

一度も撃ってません(2020年、日本、監督:阪本順治、100分)

 タイトルに惹かれて視聴。最初は「うーん……まあ、雰囲気は好きだけどなあ」と視聴を若干後悔したけど、終わってみればけっこう面白かった。キャラクターには好感が持てるし、舞台や小道具の雰囲気も素晴らしい。ただ、ラストにもう一段オチというか、彼の本業についての成長があれば良かったと思う。心情描写が足りねえよと言われていたのを、今回の経験を糧に素晴らしい作品を作り上げて、それをあの新人編集に見せるところで終わり、とか。

 これはレビューサイトでも言われていたけど、タイトルでオチが分かってしまうのはちょっとどうかなあ。あとコメディとして純粋に笑えるシーンがあまり多くなかったのも残念。呵々と笑えるコメディ作品というよりは穏やかな気持ちで観る映画だった。

 全体の雰囲気や登場人物の年齢からしてメインターゲット層はもっと上の世代なのだろうけど、それにしては過度に説教っぽくはなくて気楽に観ることができる。

《印象的なシーン》居酒屋での市川、今西、福原の会話。

 

 

必殺!恐竜神父(2021年、アメリカ、監督:ブレンダン・スティアー、70分)

 細かい所に突っ込みを入れているうちになぜか頭がスッキリしてくる映画。

 年末に頭を使う映画を観たくなかったので視聴。それにしてもこいつらよく笑うなあ。血が止まらないって、いや止まってるだろ。挿入歌つきの濡れ場で関係ないやつらが混じってたけど、術で居場所を探知していたってこと? というかあいつらいつのまに竜の戦士の存在を認めてたんだ? 組織のトップは中国、構成員に韓国、忍者は日本と極東アジア欲張り三点セットはちょっと笑った。

 ただ序盤に低予算であることをメタっぽく自虐的に描写してるけど、うーん……ちょっと違うベクトルだけど『カメラを止めるな!』はそういう方向でも秀逸な作品だったんだなあと思う。……と思っていたけど、本作はそういう映画のパロディみたいな側面もあるらしい。勉強不足(?)でした。

 総じて爆笑はしないしアクションも高レベルではないけど、クスっと笑える作品ではあるから気楽に観るのが吉。

《印象的なシーン》通告:今日潜水課(裸?)取済

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デストイレ(2018年、アメリカ、監督:エヴァン・ジェイコブス、54分)

 年の瀬にトイレが詰まってキレそうになったので視聴。なーにがデストイレじゃ。こっちはトイレがデスじゃい。本当に低予算で映画を撮るとこうなるんだなあ。2018年でもこんなにも低品質な映画を作れるのはある意味感動的でもある。もちろん、高品質を望んでいたわけじゃないけど、これは流石になあ……。たかだか五十分の映画で眠くなったのは初めて。

 良かったところ。「トイレが俺を笑う」ってセリフはちょっとディックっぽくて好き。黒電話しか登場しなかったりとベトナム戦争帰還兵という設定は守っていて好感が持てる。こういう映画にしては字幕の翻訳がちゃんとしているのも良し。

 悪かったところ。キリがないから一部。そんなにネットリ歯磨きのシーンを映さないでくれよ……。ベトナム戦争のシーンは実際の記録映画みたいだけど、そんな真面目な映像をあんな使い方しないでくれよ……。便器の底にカメラ(スマホ)が入っているの映しちゃだめでしょ。

 こんなのでもプロの作品として流通できるのだから「どんな出来だろうが完成させることが何より重要」という学びを得ることもできる。ある意味勇気をもらえる作品。

《印象的なシーン》忘れがたいグラデーションで奏でられる呻くような笑い声

 

 

ドッペルゲンガー(2017年、日本、監督:曽根剛、3分)

 どこかCM的な雰囲気のある作品。明快なオチもないしメッセージ性も(作中で強調しているほど)高くはないけど、役者のビジュアルと味のあるナレーションだけでも十分楽しめた。五分にも満たない短さが良い方向に作用しているからだろう。あと監督が日本人というのには驚いた。

《印象的なシーン》「空の蒼い色」のどこか淀んだ空色。

 

 

Lost Senses(2013年、ドイツ、監督:Marcin Wasilewski、6分)

 アニメーションは良く出来ていて言葉が分からなくても視覚で楽しめる。ただ、哀しい。もっとコメディ的な展開を期待していただけにちょっと面食らった。作風的にもうちょっと救いを暗示させるようなラストでも良かったんじゃないかなあ。

《印象的なシーン》砕けた破片から眼を探す場面。

フジテレビ『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』[ゾッとする、意味深長な、笑みが零れる、どこか安心する、呵々大笑な……オチのついた物語たち]

 世にも奇妙な物語シリーズはレギュラー放送していたころは割とちゃんと見ていたけど、季節に一回くらいになってからは観たり観なかったりというレベルのたいしたファンではないから偉そうなことはいえないけど、やっぱりこの『SMAPの特別編』が頭一つ抜けていると思う。五作品はどれも役者良し脚本良し演出良しと素晴らしい完成度で、なにより全作品オチがキチンと意味を持っているのはもっと高く評価されてもよいはず。全体的にどこか薄暗さがあるけど、シリアス一辺倒というわけではなくて「BLACK ROOM」「オトナ受験」とコメディ作品もある。もちろん、この二作品もブラックユーモア的で華やかに明るいわけではない。

 一作目の「エキストラ」は『トゥルーマン・ショー』を役者側から描いたような作品。当時の(そして現在の)日本社会の構造を題材にしているけれど、過剰な説教臭さはなくて不条理劇として楽しむことができる。「13番目の客」は共産主義社会(というより理想の管理社会)を題材にしているのかと思っていたけど、いま観ると、俗世との切り離し方や修行の考え方から出家から還俗を題材にしているように思える。「BLACK ROOM」は最高のコント作品。どこか恐ろし気な雰囲気で進みつつ実は……という構成で、翌年放映された「マンホール」とは真逆の作品ともいえる。「僕は旅をする」は家族の関係性や役者の使い方で若干混乱させられるけど、小難しいことを考えずに起きたことだけを理解できれば存外シンプルな作品と気づける。「オトナ受験」は、もしかしたらジェンダー的な方面で議論が起きるかもしれないけど、状況を考えればもっと気楽に捉えるべき作品のはず。そういう意味で、最高のオチがついた作品。久しぶりに腹の底から笑った。

 ベストは難しいけど「BLACK ROOM」かなあ。マジで完璧なコント作品と思う。コメディなのに二週目のほうが素直に笑えるという珍しい作品でもある。どこか不穏な雰囲気を出しつつ会話で笑いを誘い、終盤でその“不穏な雰囲気”自体完全な前振りとして機能する怒涛の展開で想像もしない方角でオチがつく。壮大(?)な割に描写範囲はミニマムと一工夫加えれば舞台演劇にもできるんじゃないかとさえ思えてしまう。

 ラストのストーリーテラーのセリフが、いまとなってはなんだか悲しい。

 過去作の一部はFODで配信されていて、本作はDVDになってそれなりに流通しているけど、世にも奇妙なシリーズは著作権の問題等でソフト化されていないものも多い。個人的には2002年の春の特別編秋の特別編が(思い出補正を含めて)大好きだから観返したいんだけどなあ。どうにかならないかなあ……。

 

 

作品リスト

エキストラ(脚本:中村樹基、演出:星護、出演:香取慎吾
13番目の客(脚本:深谷仁一/落合正幸、演出:落合正幸、出演:草彅剛)
BLACK ROOM(脚本/演出:石井克人、出演:木村拓哉
僕は旅をする(脚本/演出:佐藤嗣麻子、出演:稲垣吾郎
オトナ受験(脚本:大野敏哉、演出:河毛俊作 、出演:中居正広

夢野久作『少女地獄』[ぷうんと匂い立つ血の香りと破滅への想い]

 夢野久作といえば『ドグラ・マグラ』のイメージが強いと思うけど、どちらかというと短編作家という印象が強い。長編や中編も書いているけど、それよりも短くスパっと終わる作品の方が夢野久作の良さが出ていると個人的には思っている。そんなに構成にこだわるタイプではないし、なにより濃厚な描写能力や得意の書簡形式は短編の方が活きる。いくつか短編集があって現在でも比較的入手しやすいけど、大部分の作品を青空文庫で読むことができる。

 この短編集には濃厚な血の匂いと破滅願望がある。

 思い返せばこの本が夢野久作を好きになるきっかけだった。『ドグラ・マグラ』を三分の一くらい(例の「キチガイ地獄外道祭文」とかがある作中作パート)を読み飛ばしながらどうにか読み終えたときの夢野久作への好感度はそれほど高くはなかった。もちろん面白かったし戸惑い面食らう感覚には痺れた。ただ、やっぱり中盤の資料群は説明過剰で娯楽性に欠けるし、どこか達成感や疲労感のほうが強かったのも事実だった*1。代表作を読み終えたついでに……くらいの気持ちで読み始めたけど、『ドグラ・マグラ』よりずっと面白いと昂奮したことを覚えている。

 改めて読み返して、特に印象的なのはやっぱり「少女地獄」の「何でも無い」で、姫草ユリ子というキャラクター、情報を間接的に得るという虚構性、饒舌な一人称形式の文章、と夢野久作の魅力が詰まっている。解説で「遺言状の日付が月初めであることから、姫草の自殺は虚言である可能性もある」と指摘されていて、それが救いなのかはともかく、改めて感心した。「少女地獄」の他二作も良かったけど、やっぱり「何でも無い」が白眉の一品。「童貞」は夢野久作では比較的珍しい三人称形式で作らていて、描写の濃さが印象的。暑さ、無力、血液、呼吸、そして女性。五感に訴える切実な描写は他作と比較しても勝るとも劣らない。「けむりを吐かぬ煙突」と「女坑主」は記憶の中で話すの筋をごちゃまぜにしていた。どちらも主人公である青年が破滅(?)するわけだけど、生死という意味では逆の展開だった。

 ベストはもちろん「少女地獄」より「何でも無い」。夢野久作のフィクションに対するスタンスが、冷たい現実との対比として滲み出ている。主人公が何を理解していて何を誤解しているのか作者がコントロールできていない個所もあったけど、それさえどこか解釈の余地のように感じられるのも作品の魅力だ。そして、ペンネームの由来を含めて夢野久作らしい・・・・・・・作品でもある。

 

 

収録作一覧

「少女地獄」
〈何でも無い〉
〈殺人リレー〉
〈火星の女〉
「童貞」
「けむりを吐かぬ煙突」
「女坑主」

*1:ドグラ・マグラ』への好感度は読み返すたびに上がっていった。やっぱり大筋を把握してから読むというのが良かったのだと思う。