電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

案内所

ポルノグラフィティ

《〇〇選》

「風景描写」10選

「心情描写」10選

「離別の歌詞」10選

「比喩表現」10選

「嘘と本当」10選

「悲観と陰鬱」10選

《もっと評価されるべき》

「俺たちのセレブレーション」

「Love,too Death,too」

「青春花道」

《歌詞解釈》

「ハネウマライダー」というポルノグラフィティを唄った曲

「メビウス(仮)」の可能性〔ぬいぐるみ、ネオメロドラマティック、老いた人〕

「ネオメロドラマティック」という寄り添い方

《ライブ感想》

「続・ポルノグラフィティ」感想〔おったまげて我が目を疑い震えた〕

「暁」感想[何度も終わりが来て時間感覚がバグった。そして温故知新な新曲]

「PG wasn't built in a day」の簡単な感想

《アルバム感想》

ポルノグラフィティ

10thアルバム『RHINOCEROS』感想

11thアルバム『BUTTERFLY EFFECT』感想

12thアルバム『暁』感想

岡野昭仁

1stアルバム『Walkin' with a song』感想

《そのほか》

ポルノグラフィティのちょっとしたデータ集

ポルノグラフィティの色彩

 

 

音楽系

《アルバム感想》

King Gnu全アルバムの(簡単な)感想

《そのほか》

タイトル縛りのプレイリスト

死ぬまでにお琴を習いたい

King Gnu、Official髭男dism、ハルカトミユキ[ブロガー経由で聴き始めたアーティスト]

 

 

映像作品

《最近見た存在する映画》

―2021年―

(ベスト5:「ミッドサマー 」「閃光のハサウェイ」「一分間タイムマシン」「バスターの壊れた心」「残酷で異常」)

09月(残酷で異常/狂った一頁/幻夢戦記レダ/ゴジラ/サイコ/ゴーストバスターズ)

10月(ミッドサマー/ジェーンドゥーの解剖/俺たちホームズ&ワトソン/片腕マシンガール)

11月(閃光のハサウェイ/SF巨大生物の島/カフカ「変身」/ヘンゼル&グレーテル/一分間タイムマシン/とっくんでカンペキ)

12月(ソウ/バスターの壊れた心/昆虫怪獣の襲来/項羽と劉邦 鴻門の会/あたおかあさん/ヤツアシ)

―2022年―

(ベスト5:「スキャナーズ」「ヘレディタリー」「孤独なふりした世界で」「メメント」「ドロステのはてで僕ら」)

1月(コマンドー/カルト/道化死てるぜ!/銀河ヒッチハイクガイド)

2月(マーズ・アタック!/ヘレディタリー/透明人間/ディアボロス/良いビジネス)

4月(プラットフォーム/ビンゴ/名探偵コナン 時計じかけの摩天楼/スマイル/Run Baby Run)

5月(曲がれ!スプーン/トップガン/ゾンビーバー/地下に潜む怪人)

6月(ハードコア/イミテーション・ゲーム/プロジェクトA/玩具修理者/Shutdown)

7月(ウィッカーマン/スキャナーズ/ゲーム/デッドコースター/縛られた)

8月(夏への扉/ポーカーナイト/蜂女の恐怖/デッド寿司/健太郎さん/高飛車女とモテない君)

9月(ガンズ・アキンボ/孤独なふりした世界で/ショウタイム/ストーカー/ジャックは一体何をした?/ANIMA)

10月(メメント/コラテラル・ダメージ/パニック・フライト/ミッション:インポッシブル/靴屋と彼女のセオリー/Two Balloons)

11月(キャメラを止めるな!/トレマーズ/ドロステのはてで僕ら/ルール/DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン/16.03)

12月(ファイト・クラブ/一度も撃ってません/必殺!恐竜神父/デストイレ/ドッペルゲンガー/Lost Senses)

―2023年―

(ベスト5:「ユージュアル・サスペクツ」「トップガン マーヴェリック」「騙し絵の牙」「ゴーン・ガール」「MONDAYS」)

1月(ユージュアル・サスペクツ/凍った湖/タッカーとデイル/ヒルコ/チャンスの神様/それからのこと、これからのこと)

2月(賢者の石/秘密の部屋/アズカバンの囚人/炎のゴブレット/不死鳥の騎士団/謎のプリンス/死の秘宝 PART1/死の秘宝 PART2)

3月(トップガン マーヴェリック/ゲット・アウト/スリー・フロム・ヘル/ファウスト/お雛様のヘアカット/おるすばんの味。)

4月(ノイズ/ミラクル・ニール!/ハード・コア/悪夢のエレベーター/I Just Wanted to See You/滲み)

5月(真・三國無双/かっこいいスキヤキ/アフリカン・カンフー・ナチス/とっととくたばれ/Letter to you/逢魔時の人々)

6月(名探偵ピカチュウ/隣のヒットマン/ブラック・レイン/マンディブル/ひとまずすすめ/ひとまずすすんだ、そのあとに)

7月(八つ墓村/プラネット・オブ・ロボット/Mr.&Mrs. スミス/パーム・スプリングス/ラ・ジュテ/モーレツ怪獣大決戦)

8月(騙し絵の牙/死体語り/ゲームの時間/N号棟/二人でお茶を/そこにいた男)

9月(地獄の黙示録/ゴーン・ガール/バブルへGO!! /僕らのミライへ逆回転/真夜中モラトリアム/ワールドオブザ体育館)

10月(明日への地図を探して/ロブスター/ビバリウム /PicNic/毒/白鳥)

11月(MONDAYS/ウィッチサマー/セミマゲドン /もしも昨日が選べたら/奇才ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語/ネズミ捕りの男)

12月(コマンドーニンジャ/18歳の"やっちまえ"リスト/デス・レース /クレイジー・キラー/サマーゴースト/フランケンシュタインの怪物の怪物)

―2024年―

1月(きさらぎ駅/ザ・シスト/アドレノクロム/ヴィーガンズ・ハム/マレヒト/狐狸)

2月(ベイビー・ドライバー/ゴーストライダー/バーン・アフター・リーディング/ファイナル・ガールズ/予定は未定/失恋科)

3月(ドグラ・マグラ/21ジャンプストリート/フォードvsフェラーリ/地球、最後の男/パパにとってママは?/黄金色の情景)

4月(ロンドンゾンビ紀行/22ジャンプストリート/Saltburn/アミューズメント・パーク/寫眞館/陽なたのアオシグレ)

《最近見た存在しない映画》

―2021年―

(ベスト5:「ビーイング」「劇場版ヒストリエ 完結篇」「脱走と追跡のサンバ」「劉邦項羽」「アゲハ蝶とそのほかの物語」)

10月(ビーイング/ボッコちゃん/劇場版ヒストリエ 完結篇/文字を喰う人)

11月(脱走と追跡のサンバ/プリティ・マギー・マネーアイズ/劉邦と項羽/ニッポンの農業の夜明けの始まり/暗がり)

12月(アゲハ蝶とそのほかの物語/ショート・ストーリーズ/エコに行こう!/三国志な一日/生涯)

―2022年―

(ベスト5:「ゴースト&レディ」「スペースキャットvsアースキャット」「ご機嫌直しまであと何単位?」「蟲の恋」「組織は文字でいっぱい!」)

1月(乙嫁語り/色彩、豊かな日常/夢野久作の「冗談に殺す」/時は貨幣なり)

2月(ゴーレム ハンドレッド・パワー/珈琲ハウスへようこそ/白猫姫/歩道橋の上から見た光景)

4月(美亜へ贈る真珠/フラッシュ・ムービー/ちょっとだけUターン/旅に出よう)

5月(李陵/従者の物語/アイアン・ドリーム/スケッチ)

6月(命のネジを巻く旅人サバロ/熱いぜ辺ちゃん!/天使のわけまえ/瞳の奥をのぞかせて/花束と空模様の理由)

7月(そばかすのフィギュア/クラッピー・オータム/流浪の民/夢みる頃を過ぎても/ご機嫌直しまであと何単位?)

8月(ゴースト&レディ/死ね、マエストロ、死ね/嘔吐した宇宙飛行士/蟲の恋/ネコと時の流れ)

9月(コンフェッション/シリウス・ゼロ/悪霊少女/組織は文字でいっぱい!/なき声)

10月(スペースキャットvsアースキャット/戦いの華/スーパーウルトラメガバトルドッチボールマッチ/ウオッチ・メイカー/宝石の値打ち)

11月(ネオ・デビルマン/永遠の森/頼むからゼニを使ってくれ!/猫語の教科書/魔法と科学)

12月(リボーンの棋士/シンパスティック・ドリーム/すべての種類のイエスたち/天下無敵宇宙大将軍コーケイ/眼は語る)

―2023年―

(ベスト5:「天使のハンマー」「鄭七世」「閣」「時が乱れ過ぎている!」「害虫駆除」)

1月(空色/空間/空論/空虚/そらのはてへ)

2月(天使のハンマー/ファスト・ミュージック/もう勘弁してくれ!/スター・マウス/贈り物の意味)

3月(花と機械とゲシタルト/閨/ステンレス・スチール・リーチ/もう一度あなたと生きたいから、一緒に死にましょう/宇宙船生物号)

4月(裏バイト:逃亡禁止 劇場版/プロット・プロップ・プロンプト/鬨/鄭七世/未明の友)

5月(AWAY/閣/異星人対策完全マニュアル/ミュージック/走る)

6月(ソーシャル・エンジニアリング/スピニング/闢/落下/ガソリンスタンドでの一幕)

7月(早乙女さんにはもうデスゲームしかない/テアトルからの逃避/時が乱れ過ぎている!/閲/白い糸)

8月(午後の大進撃/俄雨/タイムマシンのハウツー/閭/一夜限りの友情)

9月(世界の果てまで何マイル?/閃/この夏、あなたのために華を/文字化けして読みにくいけど頑張って/雪景色)

10月(7.62ミリ/首/闌/グッド・デイ/世界は喜びで満ちている!)

11月(地球に磔にされた男/有名悪女になったので好きに生きたいと思います/閥/おとなしい凶器/小説工場)

12月(と、ある日の二人/闘/メビウス/偉大なる夢/害虫駆除)

―2024年―

1月(ドリブレッドをおくれ/カラー・プレリュード/輝くものは全て宝石/残響で踊る人/氷の礫が融けゆくように)

2月(ザ・リーチ/海鳴り/農場を守れ!/チドと危険に遊ぼう/竜が乗った女から生まれた男)

3月(解放区/シンデレラ・グレイ/異端なスター/Low Love/ディッジュディリ・トゥーリィ)

4月(泥男の恐怖/変身人間ちえ/アリストテレスの誤解/自動車大戦争/見える?)

《映画》

『トゥルーマン・ショー』[トゥルーマンと恋人と毒親とおれたち]

《ドラマ》

『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』[色とりどりの作品を押さえた良質なドラマ作品]

『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』[ゾッとする、意味深長な、笑みが零れる、どこか安心する、呵々大笑な……オチのついた物語たち]

『この動画は再生できません』[モキュメンタリー的ヒト怖と緩い空気のコントの融合]

『この動画は再生できません2』[ミステリ要素強めのホラーコメディ。ずっと眺めていたい緩さも健在]

《その他》

観たいのに入手困難な映画やドラマ

 

 

書籍の感想/雑記

《国内SF作家》

山野浩一

『山野浩一傑作選Ⅰ/Ⅱ』[不確かさ、漠然とした不安、そしてやっぱり文章がかっこいい]

『いかに終わるか: 山野浩一発掘小説集』[単なる落ち葉拾いに終わらない作品群。傑作につながるモチーフ、不条理そのもの等]

『花と機械とゲシタルト』[権威に対する多様な見方の物語。10年後にまた感想書きたい]

梶尾真治

『美亜へ贈る真珠[新版]』[ほろ苦い恋物語にSFのエッセンス]

星新一

―単作―

「白い服の男」[普遍性という最高の美点]

ショートショート集―

『ボッコちゃん』〔ファンタジー/SF強めの初期傑作選〕

『ようこそ地球さん』〔ズレの物語/よそ者たち〕

〈そのほか〉

杉山俊彦 『競馬の終わり』〔競馬とSFが楽しめる暗く楽しい問題作〕

 

《海外SF作家》

フィリップ・K・ディック

―長編―

『宇宙の眼』[ぼくがかんがえたさいこうのせかい=他人には地獄]

『最後から二番目の真実』〔情報の虚実を扱った薄暗いけど明るいラストの作品〕

『去年を待ちながら〔新訳版〕』〔ディック詰め合わせの良作〕

『フロリクス8から来た友人』〔主人公がだいぶ不愉快だけどそれなりに面白い物語〕

『ヴァリス〔新訳版〕』〔理解できたし面白いけど……やっぱり残念〕

『市に虎声あらん』〔なんだかよかった。好きかもしれない〕

―短編集―

ディック短編傑作選

『アジャストメント』[生涯のテーマからさらっと笑えるコメディまで]

『トータル・リコール』[娯楽色が強くすっきり楽しく読める短編集]

『変数人間』[ショートショート、超能力、時代]

『変種第二号』[戦争と人造物+サスペンス=不安]

『小さな黒い箱』[変色した社会問題と神について]

『人間以前』[ファンタジーと子供たち。そして最良と最悪の発露]

新潮文庫三部作

『悪夢機械』〔魘される悪夢から喩えとしての機械までバラエティに富む短編集〕

『模造記憶』〔有名作と隠れた傑作となんともいえない作品とここでしか読めない短編と〕

『永久戦争』〔機械による戦争、政争、存在しない戦争、星間戦争〕

―そのほか―

SFといえばフィリップ・K・ディック

ロジャー・ゼラズニイ

『地獄のハイウェイ』[単純明快な娯楽作品。やっぱりロードノベルが好き]

〈アルフレッド・べスター〉

『破壊された男』[めくるめく展開とハイテンポな文章がたまらない]

『イヴのいないアダム』[キレる名作短編とオムニバス式中編]

ハーラン・エリスン

『死の鳥』[エリスンのベスト短編集]

『世界の中心で愛を叫んだけもの』[暴力の嵐、愛情の渦、薬物の雷]

〈そのほか〉

『夏への扉』[ちょっとアレなところはあるけど楽しい小説]

『ストーカー』[古典的な冒険と現代的な発想の飛躍]

 

《アンソロジー

『世界ユーモアSF傑作選』〔会話よりもシチュエーションで笑いをとるタイプが多い〕

『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』[想像よりずっとバラエティパック]

『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』[短くキレのあるアンソロジー]

『博奕のアンソロジー』[多種多様な競技。審判としての博奕]

『Yuming Tribute Stories』〔青春の終わり。もう取り戻せない日々の痛み〕

《文芸》

O・ヘンリ『O・ヘンリ短編集(一~三)』〔世界で愛される名作。いろいろな短編があって素晴らしいけどちょっと訳語が古めかしい〕

ロアルド・ダール『キス・キス』[意地悪いよなあ……]

ロアルド・ダール『あなたに似た人』〔暗がりの奇妙な味〕

J.L.ボルヘス『伝奇集』[短編小説/短編集の良さを再確認できた]

湊かなえ『往復書簡』[徐々に明かされる情報とオチの謎解きが気持ち良い短編集]

湊かなえ『往復書簡』[詳細感想版]

夢野久作『少女地獄』[ぷうんと匂い立つ血の香りと破滅への想い]

《ノンフィクション》

〈競馬〉

『名馬を読む』[中国史書で言えば本紀。生涯戦績、繁殖成績、社会現象、特異な事績など]

『名馬を読む2』[世家、列伝など。周縁事情、馬の関係性、時代、個性]

『名馬を読む3』[バラエティ豊かな名馬たちと最新の顕彰馬キタサンブラック]

『名馬を読む4』[栄誉の二レース、年に一度の栄光、忘れられない勝ち方、砂塵の競走]

〈歴史〉

『古代中国の日常生活』[小説仕立てで追体験する日々の営み]

『中国傑物伝』〔文明の擁護者、過小評価された男、バランサー、晩節を全うした者たち〕

《雑記》

夢野久作はサイエンス・フィクションの夢を見るか?

漢の歴史と正当性の感覚

印象的な小説のタイトル650選

 

 

漫画の感想/雑記

岩明均の描く女性と「自分ではない者を良く描く」ということ

キミは熱血ギャグ漫画家、島本和彦を知っているか?

 

 

嘘八百を書き連ねた創作文章

思い出:フリーにはたらく

思い出:手帳

思い出:「急に寒いやん」

生きていくためにとっても大切な薬物の話

さいきんよくみる変なゆめ

 

 

そのほか雑記

星新一はアル中を救う

学習:意味が分かるようになった瞬間

好きの言語化と嫌いの理由

読書感想文と方程式

はじめての遊戯王

完全初心者がマスターデュエルでプラチナtier1に上がった感想

野球のニュース見て漫画読み返してなんか落ち込んだ話

防犯の論理/倫理を知りたい

諡号と追号と名前の不思議

どうでもいいから読書が好き、だけど学ぶこともあるよね

NHK『ユーミンストーリーズ』〔観るユーミン。上品で優しく厳しい物語〕

 短編アンソロジーYuming Tribute Stories』から三作品を原作にしたオムニバスドラマ。各作品、15分×4話で実質一時間ドラマという構成。原作小説を読んで原曲を聴きなす、という完璧な予習を経て視聴。

 思ったより原作から変えているところが多いな、というのが第一印象。特に「青春のリグレット」は構成からキャラクター設定までかなり変えられている。ただ、それがマイナスの方向に作用しているわけではなくて、目的を持った改変だし話の筋にキチンと貢献している。物語の筋自体はあまり変わっていないから途中経過やキャラクター性の変化が小説/ドラマの後味にどう作用しているか比較してみると面白いと思う。

 ちょっと検索してみたら「ドラマだけ見ている」か「原作だけ読んでみた」という人が一定数いたけど、かなりもったいないと思う。小説とドラマどちらが先でもかまわないけど、せっかくだから両方体験してほしい。同じ曲から生まれた別媒体の物語を味わえるなんてそうそうない体験なのだろうし。

 以下、各篇の簡単な感想。

 

 

青春のリグレット

 ドラマ化された作品の中でも最も原作からの変更点が多い。原作の方が乾いていて支配的なバケモノなのに対してドラマ版はまだ理解できる人物造形になっている。心情描写を地の文として表現できる小説の方が主人公のパーソナリティをより濃厚に描けるというのもあるだろうけど、比較するとドラマ版の菓子はインパクトが薄く感じてしまう。
 取り返しのつかない痛烈な後悔リグレットは原作の方に軍配が上がる。意趣返し(旅行状況の対比、春と冬という季節感)はドラマの方がより巧く構成している。ドラマのほうがややリアル寄りになってる印象。ドラマの結末にはどこか「報い」としての事態の破綻を感じるけど、原作はどちらかというと成長(変化≒平凡化)と後悔。

 かなり希望が持てるようなラストになっている。個人的にはある程度ハッピーエンドの方が好みだからドラマ版の方が好きだけど、映像的な強烈さや「後悔」という主題の取り扱い方はやっぱり原作の方が上手いと思う。まあ、けど原作の終わり方では「青春のリグレット」は流せないわな。

 

「冬の終わり」

 原作を変えている、というより原作をより肉付けしているというのが第一印象。あくまでおれの印象ではだけど原作はスラプスティックコメディ寄りで、そんなに社会問題をピックアップしてない。不倫やいじめ問題もドラマの追加要素。ほんとうになんとなくだけど原作アンソロジー収録の江國香織「夕涼み」と松任谷由実「ガールフレンズ」の要素が混ざっているようなイメージ。

 ドラマ版では早々に仙川の家庭の事情が明かされるけど、原作ではラストで明かされてそれ自体がオチとして機能するから、構成としてそこが変えられていたのは、やっぱり物語をやや社会派な文脈にもっていくためだったんじゃないかなと思っている。あと、仙川は内心はかなり明るい(というよりストレスに強い?)印象があったから、ドラマ版のようにまっとうにストレスを抱えているのは個人的には意外な解釈だった。想像の中で役満を張っているのは、ある種の現実逃避の象徴なのかもしれない。

 

「春よ、来い」

 原作からキャラクターを取り巻く状況が変更されていて、それに伴って事態を解決するラストが大きく変えられている。オチから逆算して作られたんじゃないかな。おれは原作のラストシーンがかなり好きだから、それが変えられているのは正直けっこう不満だけど、原作のことをいったん忘れて虚心に観ればヴィジュアル的にも物語的にもかなりグッとくる良いシーンなのは間違いない。邂逅と願いのラストシーンについて自然なのはこっちだけど、ドラマチックなのは原作。

 日記を見た時のガラスが砕けるような音が印象に残っている。またトイレの個室で罵声を浴びせられるシーンで声と言葉が幼稚なのに対してドアを叩く音が徐々に強く響くようになり言葉よりも大きく聴こえるのはいじめの攻撃性の描写としてとても怖く、よくできている。ママに呼びかける海のシーンが美しい。あと、どうでもいいことだけど佳菜子カップルも左ハンドルなのは撮影の都合だったりするのかな。

『Yuming Tribute Stories』〔青春の終わり。もう取り戻せない日々の痛み〕

 松任谷由実さん*1の楽曲をトリビュートした短編小説アンソロジー。純文学に疎いおれでも知っているような有名作家陣がユーミンの名曲たちを活字として再構成している。題材になった楽曲に各作家の個性がそれぞれのやり方で乗せられていて興味深い。トリビュートの方法はおおよそ二種類に分けられる。曲調の雰囲気を重視した作品と、歌詞の内容を反映した作品。前者の代表選手が「Destiny」で、後者は「青春のリグレット」かな。ちゃんと読んだことあるのは川上弘美先生だけ*2だったけど、全作品読みやすくてすらすら読破できた。

 そもそもおれは純文学系の作品をあまり読まなくて(直近で読んだのはディック『市に虎声あらん』くらい)、だからこそ却って新鮮で楽しめたというところはある。ただこれは短編ですっぱり完結するから、という但し書きがつく。長編でも楽しめるかと問われると……あんまり自信はない。純文学の長編なんてほとんど読んだことないけど、あんまり嵌まらないないような気がしている。

 全体的に「青春の終わり」が描かれている傾向がある。あと、キャラクターの年齢層や付随して描かれる社会問題でメインターゲット層が分かりやすい。ちゃんとユーミンの楽曲が好きな層にリーチするような作りになっている。

 以下、各短編の簡単な感想。

 

 

小池真理子「あの日にかえりたい」

 一番好きな作品。ヒトミの自殺はある種の中二病の破綻で、ハルコとの仲たがいを含めて青春の魔法が解けた哀しさが最も色濃い。下の名前に「さん」付けが時代を感じる。一連の学生運動に関する描写は「いちご白書をもう一度」を連想させる。P46-47の置手紙と情景の描写が印象深い。

 

桐野夏生「Destiny」

 収録作で最も短い作品。挿入される「まじ」や「くっちゃべる」等の異化作用(?)がなんとなく印象深い。歌詞よりも曲調を反映した作品という印象。歌詞の要素を探してみるなら、本作は「Destiny」そのものではなく「Destiny」の始まりを傍から眺めていた人、ということじゃないかな。P76-77の親子関係と不安についての描写が好き。

 

江國香織「夕涼み」

 不穏。幸せな生活の後背に蠢く不安と幸せの終焉。深読みすればするほど、どうしようもなく虚しく辛い事態を見出すことになる。恭二の行動(と見えにくい異常な執着)は変化球のDVともいえる行為で、なにより何の相談もせず即行動に移すのが言い様がないほど気持ちが悪い。男のおれでもゾッとする。そして、少なくとも表面上は魅力的で頼りがいがありそうなのがこれからの展開を予感させてあまりにも哀しい。

 

綿矢りさ青春のリグレット

 人間になってしまった怪物。どうしようもない痛烈な後悔。取り返しがつかない行動。愛情に関する二律背反な感情はある種の幼さであって、その破綻は青春の終わりでもある。現在―過去―現在という構成上、菓子がどんな結末を迎えるのかは分かりきっているのに、過去の菓子への苛立ちというか「なんだこの女」感がどうしても拭えない。収録作のなかで原曲の歌詞を最も反映している。P124の終盤の会話が微笑ましくて却って哀しくなる。

 

柚木麻子「冬の終わり」

 他人の心の裡なんてわからないもんすね。仙川ってしか呼ばれないから下の名前失念していてラストの視点変更の意味がよくわからなくて、慌てて読み直した。悪口になるけど、若い女の子の描写がオタクの描くそれみたい。いや、おれは読みやすくて良いんだけど……。たぶん収録作の中で最も明るい。全体的な女性同士の友情は「ガールフレンド」を思い出させる。

 

川上弘美「春よ、来い」

 すこしふしぎな物語。設定と雰囲気がどこか星新一を連想させる。収録作のなかで最も長く、ユーミントリビュートのトリにふさわしいシーンもある。最も優しい物語。P218の内乱罪に関する法学ジョークにはちょっと笑った。

*1:以下敬称略。

*2:といっても高校生くらいのころに一作だけ(たしか『溺レる』だったと思う)だからちゃんと読んだといえるかは疑問が残るけど……。

最近見た存在しない映画(2024年4月)

泥男の恐怖(1951年、アメリカ、監督:M・V・メルト、78分)

 スタージョンの短編「それ」を原作にした映画で、この年代特有のゆっくりとした展開と鋭いBGM、画面全体の薄気味の悪さ、そして原作にもある生理的な気持ち悪さを増幅させたヴィジュアルがホラー映画としての役割を存分に果たしている。人の相似形としての「それ」の造形もどこか(いや、時系列から言えば逆なんだけど……)ヘドラを思い出させるおどろおどろしさでたまらない。

 原作にあった視点の変化はほとんど反映されていなくて、一貫してコリーの視点で物語は進む。個人的には兄弟の関係性がかなり険悪に描かれているのは不満。そりゃあ、ホラー的には多少ギスギスしていたほうが都合がいいのだろうけど、あの兄弟と、そして母子の関係性はスタージョン特有の「複数人で一単位」みたいなものだからオミットしないでほしかったなあ……。

 ラストはかなりハッピーエンド風に改変されているて、当時はあまり評判が良くなかったらしい。陳腐な改変と言われれば、たしかにそうなんだけど、おれは割と好き。個人的にはキンボーが無事だったのは良かった。まあ、オルトンは助からないけど、さすがにモンスターホラー映画で犠牲者ゼロはちょっと……だから仕方ないか。

《印象的なシーン》叫び声をあげるベイブ。

 

 

変身人間ちえ(1959年、日本、監督:本田四郎、89分)

 東宝の変身人間シリーズに連なる作品。ただ、本作はSFというよりはファンタジーで特撮的な派手さもかなり抑えめ。少女が化け物に変身してしまうという設定は後年の特撮ヒーロー系の作品に類似している。そういう意味では異端で、シリーズには含めないとする評論家もいるらしい。ただ、そういう評論家も映画の内容自体は絶賛している人が多く、一見の価値があるのは間違いない。

 主人公とヒロインが抱える問題を、その周囲の人間たちと衝突/協力しながら徐々に解決していく。ヒトの二面性……というか表層からは見えない多面性が一つのテーマ。変身とその解除方法はラブコメ要素として作用している。設定自体はやや奇を衒っているようだけどストーリー自体はオーソドックス。役者陣のビジュアルがかなり良くて、それだけに変身した泥曰のビジュアルの異質さが際立つ。良く出来た良い映画。かなり好き。

 シンプルなシナリオとはいえ、やや寸足らずというか、かなり消化不良のまま幕を閉じるのは不満ではある。もう少し尺をって終盤付近を肉付けしてくれてもよかったんじゃないかな。まあ大人の都合がいろいろあるんだろうけど……。あと個人的には八乙女のことをもう少し掘り下げてほしかった。良いキャラしてると思うんだけどなあ。

《印象的なシーン》「こいつ やばいな」

 

 

アリストテレスの誤解(1957年、イギリス、監督:スーミ・オレル、112分)

 タイトルはアリストテレスが提唱した貨幣の起源についての誤解。貨幣の起源はアリストテレスが説いた「物々交換を円滑にするための媒体」ではなく「債務関係を明確にするための社会的な技術」であったらしい。概念としての数値、とかそんなニュアンスかな。劇中でもそんな感じで説明され、それは「人間に関する各種数字の多寡がその人の生活や究極的には生命そのものを決定する」という作品設定に反映されている。

 膂力や走力といった純身体能力から情報処理能力や記憶力といった知的な能力、アルコールやカフェインの処理能力、変わったところでは速記や滑舌といったあらゆる能力それぞれに固有の単位が割り振られ、さらにそれが交換可能であることがこの作品の肝になっているわけだけど、この辺の詳細な設定を提示するのがやや遅くて唐突感があるのが難点といえば難点。展開は山あり谷ありで楽しく、ラストも前振りをちゃんと回収したすっきりしたもの。良い映画です。

 正直、途中で頭がこんがらがってなにをやっているのかよくわからなくなったけど、まあ基本的な設定だけ抑えていれば雰囲気を楽しむことはできる。これをこの年代で発送してまがりなりにも作品としてまとめているのは本当にすごいと思う。

《印象的なシーン》身長と体重を交換したいと駄々をこねる男。

 

 

自動車大戦争(1953年、アメリカ、監督:ビリー・ルース、100分)

 意思を持った自動車たちがただひたすら互いを壊し合う、ただそれだけの映画。画面がごちゃごちゃしていてほとんど無意味にゆらゆら揺れる上に薄暗くて何が起きているか分かりにくい。もちろんそうじゃない場面もあるにはあるけど、割合的には少数で観ずらいことには変わりない。リアリティを追究した結果、と監督がインタビューで語っていたらしいけど、リアリティとユーザビリティだったら後者を優先すべきだと思う。そういう意味では不満の残る映画だった。特に本作娯楽映画なんだし。

 けれどヤバい映画だった。すごい。CG技術がそれほど発展していないこの時代にこんんな大乱闘を撮れたのは技術的にも資金的にも人命的にもそうとうなものが投入されていたはず。前述の観ずらさについて「技術的な拙さを隠すための小細工」と言っている人がいたけど、明度をあげても鑑賞に堪える凄まじさだった。

 車好きの人のレビューを読んでみたけど賛否がきっぱり分かれていたのが面白かった。大意で括ると賛の人は「単純に自動車がたくさん出てきて楽しい」で否の人は「好きな自動車が無意味に破壊されるのが哀しい」といったものだった。おれは特に車が好きというわけではないから単純にアクション映画として楽しんだ。

《印象的なシーン》爆発炎上する複数の高級車。

 

 

見える?(1950年、国、監督:真崎有智夫、10分)

 ショートホラー映画。悪い作品ではないけど、昨今の自主製作映画やテレビドラマの和製ホラーはレベルが高く、それと比べると見劣りするのも否めないけれど、個人的には割と好きな作品。ややSFっぽい幽霊の解釈がラストとかみ合っている。

《印象的なシーン》佐々木の真顔。

最近見た映画(2024年4月)

ロンドンゾンビ紀行(2012年、イギリス、監督:マティアス・ハーネー、88分)

 単純明快娯楽ゾンビコメディ映画。原題は直訳すると「ロンドンっ子vsゾンビども」みたいな感じらしいけど、どんな捻りでこんな邦題になったんだろう……原題を尊重した方がラストのセリフが際立つ気もするけどキャッチ―さが足りないという判断なのかもしれない。

 分かりやすく嫌な奴から死んでいく。あの三人はストレス要因でしかなくて、立て籠りという停滞パートが終わったらが用済みだから一気に退場させるという効率の良さが潔い。基本的にはコメディに終始して恋愛要素だったりアクション要素だったりはあまりない。個人的には素早く動くタイプのゾンビはあまり好きではなくて、だからこの映画みたいに鈍いけれど別の要素でハラハラを演出するのは新鮮で面白かった。

 じいちゃんが頼もしすぎて笑う。というかじいちゃんに限らず老人たちが当然のようにゾンビをぶん殴って撃退し、挙句の果てに銃器をぶっ放す。それだけでかなり楽しい。明るく楽しく死人も(割と)少ない良きコメディゾンビ映画で、おれはこういうのが観たかったんだ。上記の通りコメディに終始しているけど、社会問題(貧困や高齢化など)を反映している、と取れなくもない。

 一番笑ったのはやっぱりスローな逃走劇。動けないやつが動けないやつを追いかける。少なくとも片方は命がかかっていて、逃走先で待つ人々もごく真剣にやっているからこそ笑いを誘われる。

《印象的なシーン》「流石だ、我が孫よ。こいつは私の十八番だぞ」

 

 

22ジャンプストリート(2014年、アメリカ、監督:フィル・ロード/クリストファー・ミラー、112分)

 続編だけど、前作のラストは無視するのか……と思ったらちゃんと大学に行くのね。序盤の署長のお話に始まり随所に埋め込まれたメタっぽいネタが笑いを誘う。教会でのポリコレジョークや刑務所のあの人のエピソードは正直ちょっと大丈夫かなと思ったけど、総体的には笑える楽しいコメディ映画だった。

 服用してしまったお薬の有効活用して潜入、辛辣なアメフトの実況、遭遇してしまった署長、等々個人的には前作よりも笑えるシーンが多かった。高校生よりも大学生のほうが攻略困難で、規模も大きくなっていて飽きずに楽しめる。盗聴してる側が変わってて立場も割と逆になっている等前作と対比をとっているところもある。ブロマンス的な描写はシリアスだけどそれだけに可笑しくてしかたない。

 パロディ満載の次回予告。存在しない(しえない)予告なわけだけど、23、24くらいまでは「おっ、作る予定だったものを羅列しているのかな」と思っていたけど、そこからパロディととんでもないスケールになったところで真意に気づけた。永遠に学生をやらせれてくれ。まったく関係ないけどちょっと『ダンガンロンパⅤ3』を思い出した。

《印象的なシーン》ガールファイトのタイマン。

 

 

Saltburn(2023年、アメリカ、監督:エメラルド・フェネル、127分)

 うそつき。

 このなんとも言えない雰囲気とネットでの評判に惹かれて視聴。いうほどサスペンスかなあ……と油断していたら思っていたよりずっとサイコサスペンスだった。ただ、予想不能とかそういう仕掛けのある物語ではない。話の筋はわかりやすいけど、そっからだったのかって、驚きはあった。随処に埋め込まれた綺麗な気持ち悪いシーンが忘れがたい。

 金持ち特有の卑しさ傲慢さ、異物感、嘘、破綻。地響きのよう弦楽器が不穏さを際立たせる。そして、それだけ持つ者の異常さを描写したうえで、彼らが本質的には脆弱であることを指摘して話の構造をひっくり返す。たしかに金持ちではない人々……同級生、執事、寄宿者、使用人たち……のほうが懐疑的な目を向けていたし、金持ちたちはあまりにもあっさりと退場させられたのもそういうことなのだろう。病床のシーンで心臓止まるかと思った。

 なんとなく仮装パーティーの衣装は暗喩っぽいけど、どうだろう。劇中に名前出てきたけど、本当にハリポタみたいなところで飯食うんだ。本当に英語で「KARAOKE」っていうのか……。

《印象的なシーン》バスユニットの残り湯を啜るシーン。

Saltburn

Saltburn

  • バリー・キオガン
Amazon

 

 

アミューズメント・パーク(1973年、アメリカ、監督:ジョージ・A・ロメロ、53分)

 おれでも聞いたことがある著名な監督、ゾンビもので名高いロメロの初期作品。社会問題を取り扱ったメッセージ性の高い作品で基本的に嫌なことしか起きない。冒頭とラストでの語り手によるナレーションで「老人に優しくしましょう」というものだけど……正直なところありがちで目新しさはなかった。メッセージ性の高い作品はあまり好みではないのだけど、時間が短いことと不安を煽るホラー演出のおかげで観続けることができた。

 時の流れの残酷さを入場してすぐに「所持品が価値がない」という形で突き付けられる。行動の制限と無関心といった老人の生きずらさは拝金主義にもつながる。ようやくたどり着いた「高齢者歓迎」の看板、フリークショーと名を打った出し物の悪意にはゾッとさせられる。嘲笑や暴力と映りこむ死神。冒頭とラストのつながりによって、これが単なる一個人の体験ではなく永遠に続いていく社会問題であることが提示される。

 以下、現実の嫌な話。

 上手だとは思う。身もつまされる。辛い映画だけど、じゃあどうするかと問われると……ラストで提示される「制度を利用しましょう。ボランティアとして老人と関わりましょう」というのはあまりにも……嫌な言い方になるけど、それで解決するのならこんな映画はできていない。それに10-20代の若者たちだって無限にリソースをもっているわけじゃない。なのに、そんな「若者がその気になればどうにかなる問題」みたいな言い方をされても……。

 もちろん、これはだいぶ昔の映画だし現実問題を本気でどうにかしようという意図で作られたわけでもないと思う。老人の辛さをホラー的な演出で描き「ちょっとだけ他人に(老人に)親切にしようかな」と思ってもらおう、というのが制作の意図なのだろう。だから、あまり難しく深く考えすぎずに、ストレートに受け取って良い方向にむければ、それでいいのだと思う。

《印象的なシーン》人が消えた遊園地。

 

 

寫眞館(2013年、日本、監督:なかむらたかし、17分)

 とても良かった。鉛筆書きのような質感、無言劇であること、そして誰もが予想できる通りに誠実に物語が進行する。奇を衒わず、時代設定上どうしても発生するいろいろ考えさせるような要素を(おそらく敢えて)省いていることがこれ以上ないほど良い方向に作用している。最初の数回は七五三だったのかな。

《印象的なシーン》初めて笑顔で撮った写真。

 

 

陽なたのアオシグレ(2013年、日本、監督:石田祐康、18分)

 暖かな画風の物語。個人的に本作に限らず「泣き虫」という設定があまり好きではないけど、このくらいの年齢設定でやってくれると微笑ましい。予想外にアクション的な要素があったのが嬉しい。

《印象的なシーン》白鳥に乗って電車を追いかけるシーン。

フィリップ・K・ディック『市に虎声あらん』〔なんだかよかった。好きかもしれない〕

 ディックの普通小説。SF/ファンタジー的な現象はまったく起きない主流文学小説で、事実上の処女作というべき作品らしい。正直、あんまり好みじゃないかなと思いながら読み進めていた。なにより肩ひじ張った文章にうんざりしていたけど、だいたい40ページくらいで(わりとだけど)やめてくれて助かった。二章終盤から三章にかけて風景描写が地に足のついた感じになっている。うんざりしたけど、これまでのディックの小説で感じたことがない文章の巧さというのものを感じることができた。解説に書かれている通り、凝った訳文はディックの若書きの自信にうまく対応しているのだろう。凝った部分はかなり凝っているけど、砕けた表現はちゃんと砕けている。

 面白い……かな。歴史やSF/ファンタジーを筆頭に最低でも何かしらの犯罪行為のような非日常的な出来事がほとんど起きない小説をあまり読まないで生きてきたから、感覚を上手く言語化できない。最初は文体で嫌気がさしたけど、それを乗り越えた(脳が慣れた?)ら楽しく読めて途中で引っかかることもなかった。一体どうするんだろう、どう落着するんだろう、というわくわくもそれなりにあり結末もそれなりに惹かれるものがある。ラストはディックにありがちな急展開の破綻っぽく見えるけど、ちゃんと紙幅をとって描写しているだけに展開として破綻しているわけではない。大きく減点されないけれど大きく加点もされない。白眉の秀作とはいえないけど、それなりに好きかなあとは思える。なんだかよかった。好きかもしれない。というのが現時点での正直な感想。

 シンプルな章題は主人公の精神状態の変遷を表していて、それは一日の時間の流れと、そして主人公に限らず男の一生そのものの流れでもある。宗教はそれなりに大きな要素となっているけど、決して主人公自体を救ってくれるものではなく、終着点となるわけでもない。およそ理性的とはいえないながら、まがりなりにも行動を起こしているのが特異的というのも解説の通り。

 ただ、こいつ息子のことあっさり諦めるよなあ。そこだけはさすがにひっかかった。息子を失い疲労困憊しつつもずっと抱いていいた夢である放浪を実現するという意味では「超能力世界」を思い出した。失ったはずの息子が戻ってくることは共通していているけど、願望充足の度合いは本作の方が控えめで、それだけにラストにはどうしようもない物悲しさがある。

 それにしてもこのシスコン、なんかすごいな。一人称に張り付いた描写が心酔している状態を効果的に描かれている。ちゃんと気持ち悪い。けど、姉を迎えに行くの最初は嫌がってなかったっけ?

 雑誌のレイシズムに落胆しつつP62での日本人嫌悪や随所で顔をのぞかせる黒人、ユダヤ人への偏見が妙にリアルというか、妻への攻撃的な態度と併せて主人公を憐憫から遠ざけている。

 家庭不和、マチズモ嫌悪のくせに妙に高圧的な男、新しい女、裏切り、失望、躁鬱的で気分が変わりやすく一貫性のない男……と良くも悪くもディック。宗教や人物配置を含めて本当、原点なんだなあ。

 最後にいくつか。P149からP160までベックハイムの演説が続く。いやあ、長いっすね。P156の「心に想い描いてみせよ。聖書時代の~」ここはたしかになるほど。P243「スチュアート・ハドリーは、二人の子を~」ここの現実に対する認識はディック作品の基底となっている気がする。P308-309の音楽描写、なんかドラッグでトリップしたみたいだ。P335からP336の流れ、なんか好き。P341のウィスキーの描写が印象的。P446ここのセリフ、良い。P554「ハドリーは穴に打ち込まれた~」は珍しく克明なゴア描写がある。

横断歩道上で彼女と車に対いあい、一瞬、彼は棒立ちになった。 顔面に暗く醜い緞帳が下りてくる。その自閉の硬い殻に、彼女はにわかに不安を覚えた。彼の瞳に翳がさし、遠ざかって、自我のない被膜に覆われてしまう。個人の意識下から忍びよる盲目の内面。まるで スチュアート・ハドリーが消尽し、何かおぞましいものが憑依ってきて、彼の眼窩を通して仮面の裏から、じっと彼女を窃視しているかのようだ。慄然として彼女は身を引いた。(P437)

 ここ純粋にテキストとして好き。

章題

「朝」
「昼」
「宵」
「夜」

江面弘也『名馬を読む4』[栄誉の二レース、年に一度の栄光、忘れられない勝ち方、砂塵の競走]

 活字で読む名馬たちの物語。一冊を通したコンセプトがあるわけではなく、どの名馬/名レースも同じ紙幅で描かれていることから、全体の感覚としては二作目に近い。また「はじめに」にある通り一章は『名馬を読む』というより『名伯楽と名手を読む』といった感じの内容になっている。簡潔で明瞭というシリーズの良さも十分に発揮されている。また章内である程度年代をばらけさせているのもバランスがとれていて良かった。知っていた馬、知らなかった馬、最近知った馬。

 一章で印象的だったのはワンアンドオンリーVSイスラボニータ。前話のラストを受けて橋口師を中心とした語り口になっており、その人柄について述べつつ彼が定年直前に栄冠を手にし、そしてライバルのイスラボニータに騎乗して惜敗した蛯名騎手がダービーを勝たぬまま引退して調教師となり、最後の二行につながる。とても綺麗な構成で調教師と騎手の関係とその変遷を描いた文章のなかで一番好きかもしれない。

 二章はエアグルーヴ。近年の名牝に慣れすぎていてエアグルーヴがいかに規格外の馬だったか失念しそうになるから、定期的にこの文章は読みかえしたい。レースぶりもさることながら容姿の描写も印象深く、繁殖成績についての伊藤師の(良い意味での)見立て違いが最後にさらりと述べられているのもお洒落。医学/調教技術が整った現代に生まれていたらどんな競走馬になっていたんだろうなあ……と思わずにはいられない。

 三章はタップダンスシチー。微笑ましくも胸が熱くなる。主戦騎手がこんなに率直に「乗りたくなかった」と言えるのも、佐藤騎手の人柄とタップダンスシチーの個性、そして両者をとりまく人間関係が良好だったからこそなのだと思う。全体を通した「漫才コンビのような関係性」に例える表現がすごく良い。才能はあるけど人間性にやや問題があるボケ担当とそれを上手く御しながら決してなれ合いはしないツッコミ担当。古き良き男の友情、でもある。

 四章はヴァーミリアン。挫折、状況、怪我、と数多のアクシデントに見舞われ、決して平坦とはいえない競走生涯はGⅠを九勝もした名馬にしてはあまりに泥臭くて、だからこそ魅力的だった。六歳で最盛期を迎えGⅠを二勝もしているのに、どうしてもドバイワールドカップでの敗戦やカネヒキリに先着できなかったことのほうが頭に残ってしまう。実力はたしかなのに思うようにいかず、どこか華に欠ける印象すらある。そこに妙なリアリティ(??)があって、どこか歴史上の人物……一見敗戦が多いように思えるけれど冷静に見てみると名将以外の何者でもない、という人物に重なる。

 五章はアーモンドアイ。もう、なによりこのジャパンカップは本書で唯一リアルタイムで観ていたレースで、もうキセキの大逃げやラストの混戦を含めて面白すぎていまでもたまに思い出したかのように観返したりしている。個人的にコントレイルを応援していたから残念ではあったけど、もうあれは仕方ないと思えるくらい強かった。繁殖成績、どうなるんだろう。夢が膨らむなあ。

 最後のいくつか細かいところを。P97にエアグルーヴ秋華賞の敗因として有名なパドックでのフラッシュについて若干の疑問が投げかけられている。よく耳にする話だし理屈としても正しそうだったから通説として疑わなかったんだけど、実際は(というか理論的には)どうなんだろう。まあ、敗因が単一のものであることのほうが珍しいのだから原因の一つだったかも、くらいの認識で良いのかもしれない。P137で花田清輝「勝った者がみな貰う」という評論があったけど、これが法月綸太郎「負けた馬がみな貰う」の元ネタ*1だと思うんだけど、どうなんだろう。P173でエイシンヒカリ芦毛相手の種付けを嫌がると書かれているけど、そんな視覚的な好みもありえるのか……とちょっとびっくりした。ヴァーミリアンを優先したから個別では書かなかったけどマルシュロレーヌの記事もいいなあ。チームプレイとしての競馬がこれ以上ないほど魅力的に描かれている。

収録内容

《第一章 ダービー 勝った馬、負けた一番人気》

「キーストンVSダイコーター
カツトップエースVSサンエイソロン
アイネスフウジンVSメジロライアン
フサイチコンコルドVSダンスインザダーク
ワンアンドオンリーVSイスラボニータ
「ロジャーバローズVSサートゥルナーリア」

《第二章 年度代表馬の栄光》

キタノカチドキ
サクラローレルマヤノトップガン
エアグルーヴ
ゼンノロブロイ
アドマイヤムーン
「モーリス」

《第三章 ぶっちぎりの快感》

ダイナナホウシュウ
テスコガビー
サッカーボーイ
タップダンスシチー
エイシンヒカリ

《第四章 砂の王者は世界を目指す》
ライブリマウント
アグネスデジタル
ヴァーミリアン
「トラセンド」
「マルシュロレーヌ」

《第五章 ジャパンカップ・メモリーズ》
メアジードーツ
「ハーフアイスト」
シングスピール
スクリーンヒーロー
「アーモンドアイ」

*1:もしくはグレアム・グリーン『負けた者がみな貰う』かも

最近見た存在しない映画(2024年3月)

解放区(2025年、日本、監督:今井八朔、109分)

 最初の数分を除いて一貫して夜の景色で構成された映画。やや画面が暗くて見ずらいところはあるけど、それだけにファンファーレや花火で彩られる画面の華やかさが際立っている。ほぼ一貫して夜という意味で逆『ミッドサマー』と評していた人もいてちょっと笑ってしまった。夜の国という設定でロードムービーということで個人的にはがぁさん『だいらんど』を思い出す。

 三人の青年たち(〈ヘッドフォン〉〈怖がり〉〈サラサラ〉)の友情と成長を基軸としつつ〈女王〉を筆頭とした四人の魅力的なサブキャラクターの物語も描かれている。もちろん、本筋は主人公三人だからサブキャラクターたちの掘り下げは少ないのだけど、その少ない描写時間でこれだけ濃厚なキャラとストーリーを描けていることはもっと高く評価されてほしい。

 個人的にはやっぱり〈月飼い〉が頭一つ抜けて魅力的だった。彼が恋人との別れを語るシーンは決定的な言葉はないけれど、おそらくは死別であったことを描きつつ〈女王〉がその恋人であるかのように匂わせているところがとても良い。すごく好きな設定。彼と〈古老〉と〈アビ〉が酒を酌み交わすシーンはクライマックスの序曲としては完璧だったと思う。

 ラストで〈サラサラ〉が〈女王〉から黄金の冠を戴くことで場面が転換して、この映画が夢であった(夢オチ)かのような描写があり、それを非難している人も結構いた。気持ちは分かるけど、彼らが夜の国で受け取ったものが部屋の中に残っていること、そしてそもそも三人がいる部屋自体がどこか現実離れしていることから、そんな単純なオチでもないと思うんだけどなあ……。

《印象的なシーン》「朝が嫌い」とつぶやく〈月飼い〉の恋人。

 

 

シンデレラ・グレイ(2026年、日本、監督:中藤正男、128分)

 童話『シンデレラ』に題をとりながら現代日本を舞台に多感な一人の少女を描いている。あまり好みのストーリーではなかったけど、繊細な心情描写は素晴らしく、過不足ない物語の起伏、濃すぎず薄すぎないキャラクターたちには惹きつけられる。カラフルな街並みと対比的なモノクロームな主人公の色彩感に頭がくらくらする。

 愛されたいと切に願いながら、優しくされると苛立ってしまう。正直、そんな複雑なこと言わないでくれ! と思ってしまうけど思春期(の終わり)の描写としては手放しで賞賛したいものがある。個人的には直近で読んでいた『Yuming Tribute Stories』の綿矢りさ青春のリグレット」を思い出した。峻烈な後悔。もう取り戻しようがないあの人。

 魔法≒魔女が存在しない『シンデレラ』と評している人がいたけど、個人的にはちょっと違うような気がしている。この映画における魔法は変身のアイテムなんかじゃなくて、傷つくことを恐れずにもう一歩だけ踏み出して能動的に行動することだった。そして落久保は本質的に憶病でそれが言えずに王子様を失ってしまった。魔法が存在しないというより魔女の誘いを蹴ってしまったシンデレラというほうが正しいと思う。

 刺さる人には生涯にわたって消えない傷痕を作る素晴らしい映画。

《印象的なシーン》心の声に感応してすべてが消え去る一瞬の描写。

シンデレラグレイ

シンデレラグレイ

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

異端なスター(2020年、日本、監督:加藤積治、107分)

 好きだけど嫌いだけど好き。

 功成り名遂げたロックスターの回想という形式をとっていて、どんな事件があっても彼らは最終的には白髪の老人になっても仲良く暮らしていることを前提にできるから、ある意味では安心して観られる映画。おれはけっこう波乱万丈だなあと思って観ていたけど、バンド経験者が「こんなのは修羅場のうちに入らん」みたいなことをブログに書いていた。まあ、ヒトは「自分の方が苦労している」と主張したがちな生き物だからその辺は差し引いてみたほうがいいと思うけど。言葉のリズムが耳心地良くて、テンポに溺れて台詞を聞き逃してしまいそうになる。すごい脚本のセンス。

 前半と後半で対比が取れる構造になっている。始まりのライブと終わりのライブは光と闇/成功と失敗で対比をとりたくなるけど、あれは決意の差が如実に表れたライブで客の完成はそれほど重要な要素ではなかったのだから、あれは未熟と成熟で対比を作っているのだと思っている。あのライブで回想が終了し現在に戻ってくるのだから、演出の意図としてはおれの解釈が正しいと思うんだけど、あんまり同じ意見を見かけなくて自信が揺らいでいる。

 賑やかで明るい雰囲気はあるけど、ストーリー自体はかなり重めで、先述の回想の構成でなかったら途中で観るのをやめていたかもしれない。浴びせられる暴言が妙にリアルで心が削られ、静まり返った会場と浴びせられる冷たい視線に体温を奪われる。そして、だからこそ彼らがラストシーンで唄う歌が心にしみる。明日への活力になる。

《印象的なシーン》会場で災害呼ばわりされても輝く笑顔を見せて演奏を続ける場面。

異端なスター

異端なスター

  • provided courtesy of iTunes

 

 

Low Love(2021年、日本、監督:佐々木雄倫、98分)

 気だるく虚しい恋模様を描いた映画。どうしようもなく煮詰まった二人の関係がふわふわと浮き上がってしまいそうなくらい軽く描かれている。すごい。自殺を思わせる描写は、ともすれば道化のようで映画館では笑い声(もちろん忍び笑いだろうけど)が聴こえたらしい。それも複数の会場で。そして、その笑いがどれほど残酷なものだったかを後半の展開で突き付けられる。すげえ。もうここまでくると感心してしまう。

 事態の行方は芳しくないのに、それでも二人だけの愛の世界にどっぷりと耽溺してしまう二人の姿は痛々しく、そして多くの人が予感する通りに破滅していく。胸が抉られるのにどこか爽快感があるのはどういうことなんだろう。不思議だ。

 ヴィンチと称する部屋で二人が密会するシーンはすべて定点カメラで撮られているのだけど、これが内と外の時間の流れの変化を明確にしてくれている。191がヴィンチの召使として立ち振る舞うときにシルクハット、ニット帽、スニーカーと演じる役割を変えるのだけど、その人数の増減は想いの消滅を暗示しているようだった。打ち捨てられだれもいなくなった部屋はうすら寒くて、あまりにも物悲しい。

《印象的なシーン》「痛み分け、ですね」

ロウラヴ

ロウラヴ

  • provided courtesy of iTunes

 

 

ディッジュディリ・トゥーリィ(2026年、日本、監督:今井八朔、5分)

 台詞のない映画でどちらかというとMVに近い。前半部で掻き鳴らされるギターの音が忘れがたい印象を残す。激しい前半部と穏やかながら起伏のある後半部でかなり印象が変わるけれど、短編映画にしては珍しいんじゃないかな。

《印象的なシーン》ギターを担いで街を疾走する男。