電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た存在しない映画(2022年9月)

告白―コンフェッション―(2000年、日本、監督:川本伸治、105分) まずはやっぱりビジュアルが素晴らしい。原作の作風が割と劇画寄りなことを加味しても浅井と石倉のどちらも原作のビジュアルを忠実に再現しているのはもっと評価されるべき。原作はほとんど…

最近見た映画(2022年9月)

ガンズ・アキンボ(2019年、イギリス・ニュージーランド、監督:ジェイソン・レイ・ハウデン、98分) 魔法の杖の代わりに金属の銃を握らされた生き残った男の子っぽいおじさんが、名前を言ってはいけないあの人みたいなスキンヘッドのおじさんに殺し合いYouT…

NHK『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』[色とりどりの作品を押さえた良質なドラマ作品]

原作にかなり忠実なドラマ。15分という尺も、間延びはしないけどアレンジの幅が程よく残っていて絶妙。素晴らしい。気軽に観れる明るい作品、思想色が強く鬱々とした作品、意外なオチがついた作品、雰囲気を楽しむ作品と、星新一*1の作品の中でも色とりどり…

漢の歴史と正当性の感覚

最近、渡邉義浩『漢帝国―400年の興亡』を読んだ。 漢帝国―400年の興亡 (中公新書) 作者:渡邉 義浩 中央公論新社 Amazon 歳をとってからのお勉強*1は「何だっけこれ」と「誰だっけこいつ」との闘いになる。おれも一応の義務教育と一通りの受験勉強を経験した…

フィリップ・K・ディック『変数人間』[ショートショート、超能力、時代]

「パーキー・パットの日々」(The Days of Perky Pat)翻訳:浅倉久志 偽物。真剣にお人形さん遊びをやっている大人たちは滑稽だけど切実さがある。何度読んでもルールがよくわからないけど、このゲームの本質は懐古にどっぷり浸り変化や進歩を徹底的に拒む…

最近見た存在しない映画(2022年8月)

黒博物館Ⅱーゴースト&レディー(2020年、日本、監督:富士鷹和宏、119分) 素晴らしい。もちろん一作目の「スプリンガルド」も素晴らしいアニメ化だったけど、今作はそれを上回る、オールタイムベストに挙げられるくらいの完成度。原作のファンだけでなく史…

最近見た映画(2022年8月)

夏への扉 -キミのいる未来へ-(2021年、日本、監督:三木孝浩、118分) 原作を予習して視聴。 思ったよりずっと面白かった。若干期待値が低かったからというのもあるけど、十分満足できる。特に冒頭で世界観(現実の世界とは違うパラレルワールド的な世界)…

ロバート・A・ハインライン『夏への扉』[ちょっとアレなところはあるけど楽しい小説]

初読では割と印象が薄くて、話の筋は三分の一くらい(P126くらいまで)しか覚えてなかった。ということで印象はあまりよくなかったけど、読み返してみると思っていたよりずっとおもしろかった。 少しずついろいろな情報を小出しにしていくストーリー構成や、…

フィリップ・K・ディック『トータル・リコール』[娯楽色が強くすっきり楽しく読める短編集]

「トータル・リコール」(We Can Remember If You Wholesale)翻訳:深町眞理子 現実崩壊。旧題の「追憶売ります」のほうが洒落てるけど、やっぱり映画にはあやかっていかないとね。映画はリメイク版しか観ていないし記憶もちょっとあいまいだけど、かなり原…

ポルノグラフィティ12thアルバム『暁』感想

新藤晴一大博覧会、名優岡野昭仁七変化。聴きだしたらもうほとんど『スキャナーズ』。おれは壇上で頭を爆発させて、あとは二人が超能力バトルじゃい。 第一印象は「明るい」。もちろん重たいバラードや激しいロックもあるし、なんならそういう曲のほうが印象…

最近見た存在しない映画(2022年7月)

そばかすのフィギュア(1995年、日本、監督:菊池るみ、88分) この時代のアニメを観ているとなぜか懐かしくなってくる。どうしてなんだろう。年齢的にほとんど自我はなかったはずだけど、どこかで原体験になっているのかもしれない。 原作を読んでから観た…

最近見た映画(2022年7月)

ウィッカーマン(1973年、イギリス、監督:ロビン・ハーディ、100分) 『ミッドサマー』に影響を与えた映画ということで視聴。 思っていたよりずっと『ミッドサマー』だった、というか『ミッドサマー』が『ウィッカーマン』だった。大枠のストーリーは同じだ…

フィリップ・K・ディック『アジャストメント』[生涯のテーマからさらっと笑えるコメディまで]

「アジャストメント」(Adjustment Team)翻訳:浅倉久志 現実崩壊と上位存在。解説にもある通りいかにもディックらしい作品。世界の変化に気が付く場面(P35-39)の焦燥感は流石。ただ、その直後の電話ボックス直送のシーンはちょっと笑ってしまった。しが…

SFといえばフィリップ・K・ディック

男はバカだから「初恋の人」を生涯忘れられずに引き摺り続ける、と何かで読んだ記憶がある。これはたぶん真理で、そして「初恋の作家」にも同じことがいえる。少なくともおれはそうだ。 ディックを初めて読んだのは大学一年生のころだった。せっかく大学生に…

江面弘也『名馬を読む3』[バラエティ豊かな名馬たちと最新の顕彰馬キタサンブラック]

これでこのシリーズの既刊はすべて読破。構成は二作目とほとんど同じだけど、五章だけはキタサンブラック単体の小伝になっている。 一章ではカブラヤオーが印象的だった。菅原騎手がテスコガビーとカブラヤオーのどちらを選ぶか迷ったときに、茂木師が助言し…

江面弘也『名馬を読む2』[世家、列伝など。周縁事情、馬の関係性、時代、個性]

一作目から続いてこちらも読破。前作は時系列順に書かれていたけど、今作はそういうわけではない*1から、前作に比べると競馬史の流れを体験するという要素は薄い。ただ特に一章と三章は「時代の流れ」が重要な要素になっている個所もあって、日本競馬史の知…

最近見た存在しない映画(2022年6月)

命のネジを巻く旅人サバロ(1993年、日本、監督:江路村秋草、97分) アニメ化してるなんて知らなかった。こういう隠れた作品を見つけられるのもAmazonプライムのいいところですな。まあ、有料チャンネルに課金が必要で妙に高かったけど、草上仁先生の作品の…

最近見た映画(2022年6月)

ハードコア(2016年、ロシア/アメリカ、監督:イリヤ・ナイシュラー、96分) すごい。アイディアもそれを実現する技術力も、そして嘘をきちんと覆い隠す創意工夫も、非の打ち所がない。序盤からかなり飛ばした展開が続くけど、キチンと抜くところは抜いて緩…

ポルノグラフィティの色彩

※2022/08更新:11thアルバム『暁』まで反映、「365日」「カメレオン・レンズ」のカウントミスを修正 色の表現が好きなので、ポルノグラフィティの歌詞で「色」に関する言葉がどれくらい使われているか調べてみた。 docs.google.com スプレッドシート(DL) …

梶尾真治『美亜へ贈る真珠[新版]』[ほろ苦い恋物語にSFのエッセンス]

時間と愛についてのほろ苦いラブストーリー。 梶尾真治先生*1といえば多くの人は映画化された『黄泉がえり』を思い浮かべると思うけど、おれにとっては本作みたいな短編集のほうが印象深い*2。梶尾作品の二大ジャンルといえばラブロマンス系とドタバタコメデ…

生きていくためにとっても大切な薬物の話

今週のお題「本棚の中身」 移動装置を破壊した。これでもう戻れない。 ここは失われた過去の楽園。逃避行は完結した。タイムトラベルを巡る冒険は終わり、あとは生活が待っている。 ここへ至るまでの艱難辛苦は筆舌に尽くしがたい。ほとんど狂気じみた執念を…

最近見た存在しない映画(2022年5月)

李陵(2015年、台湾、監督:盧三造、115分) 日本で李陵といえば中島敦「李陵」が最も有名だろうけど、この映画は中島敦の小説は一切関係がない。というか、原題は「司馬太史令」で、メインは司馬遷のほうなんだけど、どういうわけか李陵が訳出されている。…

最近見た映画(2022年5月)

曲がれ!スプーン(2009年、日本、監督:本広克行、106分) 少し不思議なコメディ映画。物語が動き出すのがやや遅いし派手な結末もないけど、飽きることなく楽しく観ることができる、という不思議な映画。なんでだろうと思ったけど、たぶん会話のテンポ感だと…

湊かなえ『往復書簡』[徐々に明かされる情報とオチの謎解きが気持ち良い短編集]

全編が手紙のやり取りで構成された連作短編集。作品ごとに主要キャラクターは入れ替わるけど、登場人物や赴任先の国など、小さなつながりがある。ただ、それも直接関連しているわけではなく、世界観を共有しているという程度。 彼らはそれぞれの過去に起きた…

最近見た存在しない映画(2022年4月)

美亜へ贈る真珠(2017年、日本、監督:梶渡司、96分) お気に入りの短編小説がついに映像化する、ということでとても楽しみにしていたおれの期待を裏切らない素晴らしい作品だった。短編を100分近くの映画にするにあたってそれなりに肉付けがなされているけ…

最近見た映画(2022年4月)

プラットフォーム(2019年、スペイン、監督:ガルダー・ガステル=ウルティア、94分) こういう閉塞的なシチュエーションの映画はかなり好み。階層社会や飽食、持続可能性がテーマとして提示されつつ、どこか宗教的な物語構造になっているのも面白い。ヨーロ…

野球のニュース見て漫画読み返してなんか落ち込んだ話

先日、佐々木朗希投手と白井一行球審のトラブルがニュースになっていた。いろいろ擁護も批判もあるみたいだけど、野球には詳しくないから具体的なことはよくわからない。礼儀とか権威とか純粋なルールとか人間が判定することの限界とかいろいろなことが議論…

ポルノグラフィティ「悲観と陰鬱」10選

1.音のない森(作詞:岡野昭仁) 岡野昭仁さん*1初の作詞作曲のシングルにしてドン底ネガティブ岡野昭仁心情吐露ソングの原点。人生を静まり返った暗い森に例えて、閉塞感や将来への不安を描いている。ミュージシャンが唄う〈音も無いこの深い森に怯えて〉と…

アルフレッド・べスター『イヴのいないアダム』[キレる名作短編とオムニバス式中編]

乾いた文体で会話文が多くてテンポが良く、全体的に初読の時と感想は変わらない。 圧巻の名作「ごきげん目盛り」はいつ読んでもどれだけ読んでも肌が泡立つ。この作品のためだけに購入する価値はあると思う。一人称形式の自我の混乱はおれが書きたかったもの…

ポルノグラフィティ「嘘と本当」10選

1.LiAR(作詞:新藤晴一) 名は体を表すポルノグラフィティの「嘘」の代表曲。鮮烈な色調が印象的で、花に関連する言葉と人工物を巧みに織り交ぜて「自然と人為」という対称的な比喩表現によって相互不理解や嘘を表現している。二人(?)がどういう関係性だ…