電羊倉庫

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最近見た映画(2024年2月)

ベイビー・ドライバー(2017年、イギリス/アメリカ、監督:エドガー・ライト、113分)

 すごい。冒頭一発目のカーチェイスだけで元が取れる。音楽とカーアクションは文句なく素晴らしいけれどストーリーは良くも悪くもオーソドックスで新鮮味はない。個人的にはもうちょっと捻りがあってほしかったけど、ちゃんとハッピーエンドっぽいしまあいいか!

 コメディのタグがついていたからもっと気軽な映画だと思っていたけど、微笑ましいシーンはあっても声をだして笑えることはほとんどなく、死人は多いしややシリアスな展開もあるしでちょっと戸惑ったところはある。ベイビーについても善人とはいえ死人が出ている犯罪に関わっているわけで……けどあまり救いがないのもちょっと……けど償いもないってのはいくらなんでも……と終盤モヤモヤしていたけど落としどころとしては悪くなかったんじゃないかなと思う。ドクが絆されたのも結局はベイビーの善性が理由だった……なんだろうけどなんだか唐突感は否めない。

 登場人物はみなキャラが立っている。チームのメンバーは犯罪にかかわるだけあって一癖も二癖もあって倫理観も壊れているけど個性があって魅力的。その中でもバディとダーリンは特に好印象だっただけに終盤の展開がちょっと納得しがたいところがあるんだよなあ。

《印象的なシーン》ラストの順走と逆走のカーチェイス

 

 

ゴーストライダー(2007年、アメリカ、監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン、110分)

 アメコミが原作らしくかっこいい映画。街頭の付ける消すのせめぎ合いがカッコ良くてあまりの意味の無さに笑った。いくつか「……ん?」と思うシーンもあったけど、まあ良し!

 原作がどのくらいの冊数あるのか知らないけど、圧縮してでも原作の良いシーンを映像化しようという努力の跡が見えて、だから展開にスピード感はあるけど設定をあまり活かせていないような印象がある。始まりからある程度の終わりまでを詰め込んでいて継ぎ接ぎを感じてしまうのは……邪推に近いかもしれない。

 他人に話せない事情を抱えて自分では制御が難しい絶大な力を授かり、けれどそれは社会のためになることでアンチヒーローだけど正義を忘れてはいない。やむにやまれぬ事情で約束をすっぽかっし本当のことを話しても信じてもらえず不義を疑われ喧嘩別れになるけど、実は大きな仕事に関わっていることが理解してもらえて誤解が解けて謝罪されてそれを鷹揚にそれを許しながらも一緒に入られないと告げる。基本になっているのは中二病的な楽しい設定だけど、この辺がどこか当時の社会人ウケを狙っているように感じられる。

《印象的なシーン》バイクが変形する場面。

 

 

バーン・アフター・リーディング(2008年、アメリカ/イギリス、監督:イーサン/ジョエル・コーエン、96分)

 登場人物全員が俗物で品性下劣でスラプスティックに駆けまわって無意味に死んでいき嘆き悲しみ保身に走っては失敗してのたうち回る。お下品な悲喜劇。結局誰も幸せになっていないよなあ。それにしても……コケシって。なんとなく原語がどんな言葉だったかわかってしまうだけに笑ってしまった。

 思っていた感じのコメディではなかったけれど、こういう映画と知ったうえで観ればそれなりに楽しい……かもしれない。個人的にはどういう心持で観ても好きになれない映画だったけど気楽な映画ではあるからそういうのが好きな人ならそれなりに楽しめると思う。それにしても不倫ヒューマンしかいないなあ。

《印象的なシーン》「まったくどいつもこいつも」

 

 

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ(2015年、アメリカ、監督:トッド・ストラウス=シュルソン、91分)

 B級スラッシャー映画がほしくて鑑賞。思ったより凝った設定でちゃんとした映画だった。80年代スラッシャー映画に詳しいとより楽しめるらしいけど、そうでなくても意図は理解できるだろうしメタっぽいコメディはちゃんと笑える。『ラスト・アクション・ヒーロー』との関連性を指摘している人も多かったけど、個人的には『ジュマンジ』の親戚にあたる作品のような気もする。

 流血暴力逃走追跡エログロナンセンス、という映画を望んでいると肩透かしを食らうくらいゴア描写は少ない。設定や倫理観がちゃんとしているということを含めて思っていた映画ではなかったけど個人的には意外な収穫というか、予想以上に好きなタイプの映画だった。ラストに続編を匂わせるのもこういう映画の典型なのかな。ただ、そのオチだとすると「死後の世界説」にも信憑性が出てきてちょっと……と思わなくもない。

《印象的なシーン》「こっちのセリフだよ」

 

 

予定は未定(2018年、日本、監督:磯部鉄平、27分)

 走るシーンの青空が印象深い。懐古的な感情を含めた非現実的な願望と決別して、ちゃんと地に足をつけて前を向けた、というストーリーかな。ただ紙ヒコーキが飛んできてもそれを開けるより先に周りを見て持ち主を探すべきでは? 

《印象的なシーン》「ちょっとくらい皺があっても結婚できるんです」

 

 

失恋科(2018年、日本、監督:長谷川徹、25分)

 フラッシュモブ失敗後の気まずい雰囲気が辛くて笑える。とんでもないレントゲンですげえ笑った。あまりに悲しすぎる診断室前の待合。他のものはともかくフラッシュモブへの彼女の言動はその通りすぎる。最新の科学は素晴らしいなあ。ちゃんと前振りもしていて良いオチだあ! 全体的な雰囲気を含めて『世にも奇妙な物語』みたいでとても良かった。

《印象的なシーン》「男は妊娠しないでしょー。それと同じです」