電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

最近見た映画(2023年7月)

八つ墓村(1977年、日本、監督:野村芳太郎、151分)

  片田舎を舞台に腐敗した旧家と現地の奇妙な伝承を巡って殺人事件が発生し、外部の人間が捜査に乗り出す……というとおれはテレビ朝日『トリック』を思い出すけど、たぶんこの時期の諸作品がその源流なのだろう。かなり長い映画だけど展開や謎の提示もかなり多くて、途中でだれることもなく楽しめた。ただ、ややスロースタート気味かなとは思う。あと、登場人物がワッと増えるから慣れるまでは誰がどこの家の方なのかよくわからなかった。

 原作は著名な小説で、何度か映画化している。おれは原作は未読だし他の映像化作品も観ていないけど、本作はミステリよりも伝奇作品の側面がより強調されているらしい。個人的にはミステリよりも伝奇やホラーのほうが好きだから、そういう意味では本作と相性が良かったのかもしれない。二度ほど行われる田舎の葬儀は新鮮で印象的だったけど、これはあの地域特有のものじゃなくて広く一般的なものだったのかな。ちょっと気になる。

 金田一が登場する作品とは知らなかった。韜晦としたキャラクターは好感が持てるけど、なんかこの人「できるだけ被害者を少なく抑えて早急に犯人を逮捕する」という善性の意識がめっちゃ低くない? ある程度分かってて洞窟に放置するのは冷血というか……ただ、ラストで残酷な事実を主人公に告げないだけの良識は持っているわけだからアンバランスにバランスがとれているのかもしれない。

《印象的なシーン》桜が舞い散る中、画面にむけて走りくる要蔵。

 

 

プラネット・オブ・ロボット(2015年、イギリス、監督:ニール・ロウ、80分)

 うーん……意味不明は言い過ぎだけどちょっと良く分からない映画だった……と思ったけどこの解説読んで納得。なるほど、そういうことなら筋は一応通りますね。けど、だったら話している言語か、もしくは主人公の名前に一工夫欲しいところ。ほかにもそう言っている人がいたけど『猿の惑星』的なオチなのだと思い込んでいた。文字だって時代が離れていればわからないこともありえるわけだし。

 低予算映画らしいけど、それにしては良く出来ている。まあ、おれは無人(ロボットはいるけど人類はほとんどいない)の地を探索するというシチュエーションに弱いから贔屓目にみているのかもしれないけど。『ストーカー』が好きなのはほとんどそれに尽きるわけだし。

 ただ、このジャケットはいくらなんでも詐欺だと思う。こんな重工重厚未来スタイリッシュアクションロボット映画ではない。いや、本当に全然そういう映画ではない。

《印象的なシーン》ついてくる犬型ロボット。

 

 

Mr.&Mrs. スミス(2005年、アメリカ、監督:ダグ・リーマン、120分)

 スパイアクションは派手で出来がいいし、すれ違いコメディとしても思わず吹き出してしまうシーンも多い。良質な娯楽映画だと思う。ただ、終わりが唐突すぎる。あれじゃ事態は解決し切れていない気がする。けど、まあ、そのくらいは大目に見てもいいかな、と思えるくらいには純粋な楽しさがある。細かいことはまあいいか。前振りや状況の対比が最初と最後にしっかり組み込まれているし、唐突で破綻しているわけでもないのだから。

 思っていたより会話で笑わせてくるタイプで、目と耳の両方で楽しめる。これは感想サイトを漁っていて知ったんだけど、夫は仕事のやり方が古風で、妻は現代風という違いがあるらしい。なるほどなあ。

《印象的なシーン》「出会ってからの会話、やりなおさないとな」

 

 

パーム・スプリングス(2020年、アメリカ、監督:マックス・バーバコウ、90分)

 かなり好きな映画。『サマータイムマシン・ブルース』や『ドロステのはてで僕ら』と同じく、始まりの理屈はぼやかしているけど、終わりにそれなりの理屈をつけられたのはとても良い。最初はだれが主人公(というか主要な視点人物)かわからないで混乱していたけど、実質的な主人公は二人いたんだなあ。ループ中がこんなに楽しい映画はほかにないけど、これは苦しんでいる初期部分を飛ばしているなのかもしれない。あとは差し迫った危機がほとんど存在しなくて、ループのスパンや記憶の有無等の違いはあるけど谷川流エンドレスエイト」に近くて、永遠の休暇のイメージ。モラトリアムを経て一回り成長するという意味では案外王道の物語なのかもしれない。

 本筋とはやや離れた筋のいくつかの謎もキッチリ回収されていて、後味も良い。コメディとしてまとまった作品だけど、ちょっと意味深な場面もある。再び一人になってからの彼は周囲の人間から「誰だお前は」「もううんざりだ」みたいなことを言われるけど、メタフィクションっぽいというか、ループ中の世界からの愚痴のようなものともとれる。あと、ロイはどうするんだろうと思ったけど、それも一応のフォローがあったのも良かった。誰も不幸にならないコメディ映画の鑑のような作品。

《印象的なシーン》エンドロール中のワンシーン。

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ラ・ジュテ(1962年、フランス、監督:クリス・マルケル、28分)

 タイムトラベルの理屈はフィニイ『ふりだしに戻る』がそんな感じの設定だった記憶がある。設定と雰囲気は好き。けど、普通に動画でやった方が良かったのでは……と思ったけど、制作年代を考えるとけっこう画期的な手法だったのかも。終わりはちょっと『12モンキーズ』っぽいけど、順序でいえば逆になるのか。

《印象的なシーン》バスク・オムみたいな見た目の男。

 

 

モーレツ怪獣大決戦(2005年、日本、監督:荒木憲司、30分)

 思っていたよりコアな作品だった。もうちょっとライト層向けのコミカル怪獣アクションかなと思ってたもので……ちょっと本来の客層じゃなかったから観るのがつらかった。

《印象的なシーン》ヘリが墜落する場面。