収録作品はすべて既読。戦争を題材にしたコンセプトアルバムだけどせっかく「ジョンの世界」が収録されているのだから「変種第二号」もセットで収録してほしかった。そこはちょっと残念。収録作の感想は大森望編『ディック短編傑作選』シリーズで書いたので省略する。
改めて読んでみると「変数人間」は面白いけど、ラストで艦隊が壊滅しているのに「宇宙船が開発されたからOK!」ってのはちょっとどうなんだろう、一応人がたくさん死んでいるんだけどなあ。戦争が題材のわりに暗い雰囲気の作品はそれほど多くはない。「地球防衛軍」「ジョンの世界」「変数人間」はかなり前向きなラスト。
ベストはやっぱり「傍観者」かな。めちゃくちゃ好きなんだよなあこの作品。娯楽性は低いけどディックの切実さが如実に表れている。政党をあえて戯画化しているのも効果的だ。ただ、解説によると原稿を売るのには苦労したらしい。マジか……やっぱり政治性が高いとみなされたのかな。まあ本国だと仕方ないところもあるんだろうけど、それでももう少し高く評価されてほしいなあ……。