電羊倉庫

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最近見た映画(2024年6月)

 コナン祭り第二弾。

 このあたりから昔読んだ原作の範囲ではカバーできない新キャラがでてくる。SNS等で話題になっていたからなんとなくは知っていたけれど、主に赤井関連と安室関係の予習を兼ねて『緋色の不在証明』と『灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』を観て、サンデーうぇぶりで関連エピソードを摘まんで読んだから大体把握できている。

 今月は20作目『純黒の悪夢』まで。

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紺碧のジョリー・ロジャー(2007年、日本、監督:山本泰一郎、107分)

 宝探し冒険ミステリ。

 世評はあまり高くないらしいけれど、そんなに悪い作品ではないと思う。雰囲気はかなり穏当でフィクション係数がかなり高い。劇場版で期待される派手さやお祭り感は低いから映画館で見たらガッカリするかもしれないけど、サブスクで見る分にはそこそこ面白い。期待度が違うからかな。蘭と園子の友情をピックアップしたのは慧眼だと思うけど、蘭が頼りになりすぎていたから、もうちょい互いを助け合うシーンがあったほうが良かった気もする。

 個人的には警察が限定的な状況でちゃんと捜査してるのは好き。ラストの暗号はあまり納得感がない。簡単すぎるような……と思ったけど、白骨体が多数あったということは大人で過去にあそこまでたどり着いた人がけっこういたということか。 あと、状況的にこっそり追跡していた、というのはちょっと無理があるような気もする。この人のこともあっさりしすぎているのもやや不満。

《印象的なシーン》海中でサメを追い払う蘭

 

 

戦慄の楽譜フルスコア(2008年、日本、監督:山本泰一郎、115分)

 音楽ミステリ作品で本格的な演奏/歌唱シーンがある。随所で顔をのぞかせる信頼がテーマかな。最終場面で新一と蘭のエピソードに回帰するの久々な気がする。蘭の回想にストップをかける園子には笑った。元太くん、それはさすがに窃盗ですよ……。サッカーと声楽で助けを呼ぶ場面の異色のコンビが印象深い。

 作中でも言われていたけど登場人物の人間関係がけっこう複雑で混乱したし、人数が多い割に小さくまとまったのはちょっと残念。あとアヴァンタイトルの事件が物語の根幹にそれほど関わっていないのはちょっと拍子抜けした。特に意味深なメールはあまり物語に寄与していないような気がする。まあミスリード要因だったのだろうけど……。

《印象的なシーン》ゲネプロの演奏。

 

 

漆黒の追跡者チェイサー(2009年、日本、監督:山本泰一郎、110分)

 ……すげえ、拳銃なら避けれるのか*1

 かなり良かった。殺人事件の謎解き/潜入者の特定というミステリから終盤に入ると殺陣と銃撃戦の派手なアクションが繰り広げられて娯楽としての純度が高い。殺人事件自体のトリックはあまり納得がいかないけれど事件の本筋である水谷/本上の二段オチには意表を突かれた。警察が無能っぽく見えると非難している人がけっこういたけど、地道な調査でしっかり事の真相に辿り着けているのだから、名探偵的ではないけどかなり有能として描かれていると思うんだけどなあ。

 アイリッシュは良いキャラしてる。コナンを無意味にいたぶるようなまごうことなき悪人なんだけど、最期はコナンを庇って銃殺される。善悪の二面性というか、一筋縄でいかない感じが良い。やっぱりコナンとベルモット、新一と服部の関係性は良いなあ。会話を聴いているだけでかなり楽しい。

《印象的なシーン》「工藤新一 いつまでも追い続けるがいい…」

 

 

天空の難破船ロスト・シップ(2010年、日本、監督:山本泰一郎、102分)

 BGM の雰囲気も相まってあんまり切迫感はないけど、アクション映画としてはかなり楽しい。珍しく殺人事件は起きていないし、(たぶん)死人も出ていない。そういう意味ではやや異色作。キッドが登場する映画だけど、キッドが狙う宝物はさほど重要な役割を果たさない。事件のほとんどがクローズドサークルで完結するだけに、謎解きもアクションも、それができるように舞台と状況に工夫がある。それにしてもびっくりするぐらい銃弾があたらないなあ。

 キッドとコナンが共闘する展開はかなり嬉しいけれど、キッドさん、その誤魔化し方は流石に無理があるのでは……呑み込んでしまう蘭も蘭だし、違うと確信するのもそこかあ。あとかなり好きなキャラだった小田切が再登場してくれたのが個人的にはかなり嬉しかった。

《印象的なシーン》飛行船から飛び降りるキッド。

 

 

沈黙の15分クォーター(2011年、日本、監督:静野孔文、109分)

 冒頭で爆発が起きると楽しくていいねえ。

 ミステリ要素はそんなにだけど、アクションは楽しい。ある種の事件の発端である、なつきがなぜあんな所にいたのかの説明があったのは良かった。渡辺刑事はほんとうにそのまま役者本人で笑ってしまった。ただ、この辺の時事ネタは通じない世代がでてくるだろうから危険なのかもしれない。引き続き小田切が登場している。

 全体的に少年探偵団が若干お荷物気味だったけど、まあ仕方ないか。本気で殺すつもりないのだったら追ってきてどうするつもりだったんだ、この人。あとコナン君を見つけたシーンは流石に心肺蘇生措置した方が良いと思う。

《印象的なシーン》震える手で新一に電話をかける蘭。

 

 

11人目のストライカー(2012年、日本、監督:静野孔文、110分)

 最序盤にぐんぐんイベントを進めてゲストキャラを紹介しているのはテンポが良くて好印象。中盤で特大のアクションを挟みつつ事件の真相に迫り、最後にもう一度アクションシーンを入れて締める。前振りもけっこう丁寧(本浦が小五郎に息子の写真を見せる等)で、恨みを持たれた事柄についても小五郎とサッカーファンの品格を落としすぎないように配慮しているのもよくできている。これまではどちらかというとトラブルメーカーとしての役割を負いがちだった少年探偵団がラストで破綻の回避に貢献しているのも嬉しい。

 サッカーが題材ということで現実のサッカー選手が実名でゲスト出演しているけれど……演技未経験者が長く喋るのは流石にきついところがある。サッカーファンには嬉しい出演だったと思うけど、もう少し負担を軽くするような工夫がほしかった。ミステリというか謎解き要素はかなり良い。特に予告状のトリックは好き。

《印象的なシーン》少年探偵団のパスワーク。

 

 

絶海の探偵プライベート・アイ(2013年、国、監督:静野孔文、110分)

 某国ってたぶん北のあの国だよなあ。

 スパイアクション。海自が全面協力しているだけにイージス艦の描写はかなり正確らしい。登場人物の雰囲気やモノローグの有無からかなり早い段階で誰が犯人(スパイ)かわかるけれど、発端の事件はかなり事情が入り組んでいて読み解くのはけっこう楽しい。

 犯人だけど、その飛ばし方されたら流石に死にそう……だけど蘭に打ち勝てるほど強き者だからやっぱり頑丈さも人一倍なのかな。冒頭のシーンを、倉田のリアクション等を含めて回収したのはすごく良かったけれど倉田への問い詰めはなんか甘くない? けっこうな背信行為だと思うんだけど……。珍しくエンドロール中に後日談入る。

《印象的なシーン》「五時半」に関する最後の謎解き演出。

 

 

異次元の狙撃手スナイパー(2014年、国、監督:静野孔文、110分)

 最後の一言で『名探偵コナン』本編の謎を一つ先行して解き明かしている。おれは正体を知っている状態で観たからそんなに感動しなかったけど、これを映画館で観た人は相当感動しただろうことは想像に難くない。狙撃の難しさをかなり丁寧に振っているから沖矢の能力の高さが際立っているのも上手い。

 無差別殺人と伝えられてパニックになりながらも日常に存在するもので一応の対策を打とうとするのは妙にリアルというかなんというか……あとネットの反応みたいな感じでニコニコ動画的なコメントが流れるけど、こういうときの製作陣のニコニコ動画への理解の深さは一体なんなんだろう。

《印象的なシーン》「了解」

 

 

業火の向日葵(2015年、日本、監督:静野孔文、112分)

 世評は芳しくないけれど、題材自体は悪くないと思う。五番目のひまわりを観続ける女性、チャーリー、厳重な警備の特設展示会場、兄弟の確執と愛情など。特にチャーリーは作中内での心情の変化を含めてめちゃくちゃ魅力的だから小田切みたいな感じで再登場してほしい。

 言われるほど悪くはないけど、コナンたちが介入しないところで事態が進行しすぎている。特に東の件はこれだけでかなり面白そうなのに上手く物語に組み込めていないのが残念で仕方ない。すべての事象に関与できないというのはある意味リアルだけど、なんかスッキリしない。うーん……まあ、前振りはちゃんと回収してるからよし。しかし、本当に贋作ですらないのか……。

 本当かどうかわからないけど諸事情で脚本をかなり削っているらしい。もっと時間をかけて過去(芦屋やアルル)の描写をやるつもりだったんじゃないかなと思っている。それがあったら評価だって違ったのだろうけど……。

《印象的なシーン》「でもね、見つめているだけではいつかきっと後悔する。私のようにね」

 

 

純黒の悪夢ナイトメア(2016年、日本、監督:静野孔文、112分)

 生身の逃走/追走、カーアクション、殴り合い、銃撃、巨大構造物の暴走阻止と多彩なアクションが繰り広げられる素晴らしい娯楽作品。

 かなり好きな作品。全体的に「色」がキーワードになっている。透明の瞳を持つキュラソー黒の組織に入り、記憶がなくなり少年たちとの交流を通して白いキーホルダーを貰い、彼らを助けるために最後に犠牲となって黒焦げになってしまう。素晴らしい。劇場版コナンでは珍しいビターエンド。明るいBGMで大団円で安室も赤井も喜んでいるなか、状況を把握しているコナンと灰原だけが最後に浮かない顔をしているのが胸にしみる。

 これは『沈黙の15分』もそうだったけど、ど頭にアクションあると楽しいねえ。訓練を受けた者同士の殴り合いは素晴らしい。これまでは主に蘭がその役割を負っていたけど、強き者とはいえ女子高生だから殴る方はともかくあんまり殴られるのは……というところがあったから。 

《印象的なシーン》「記憶じゃない。思い出だよ」

*1:いや、弾を見切ったんじゃなくて指の動きから予測して動いたんだろうけど、それでもすごいなあ。