電羊倉庫

嘘をつく練習と雑文・感想など。ウェブサイト(https://electricsheepsf.web.fc2.com/index.htm)※「創作」タグの記事は全てフィクションです。

2026-01-01から1年間の記事一覧

伊藤典夫編訳『吸血鬼は夜恋をする』[名訳者によるファンタジーとSF]

タイトルひとめぼれで購入。SF&ファンタジーのショートショート集ということで多種多様な作品が収められているけれど、どちらかというとファンタジー的な作品のほうが印象に残った。既読の作品は(記憶している範囲では)二作だけ。気に入った作品が多くて…

フィリップ・K・ディック『ニックとグリマング』[唯一無二の児童文学作品]

ディックの児童文学作品。 ……ディックが児童文学!? あのB級SFと泥沼不倫と人類滅亡を山ほど書いてきたディックが子供向けの作品を!? 低年齢層に受け入れてもらえそうな要素皆無なのに!? 本書はディック唯一児童文学作品。ディックは本来SFよりも主流文…

最近見た映画(2026年5月)

ノロイ(2005年、日本、監督:白石晃士、115分) 素晴らしい。傑作ジャパニーズモキュメンタリーホラー。いまのところ洋の東西を問わずこのタイプの映画のなかで一番好きな作品。ややスロースターターなところはあるけれど、後半の畳みかけは最高に怖くてワ…

平野清美編訳『チェコ21世紀SF短編集』[とおい国から最新のファンタチスカ]

チェコSF短編集第三弾。タイトルの通り2000年以降にチェコで発表SF/ファンタジー作品を収録している。編訳者あとがきで「最終章」と書かれているから、とりあえずこのシリーズはひと段落付いたということかな。 作品のほとんどが2010年代後半から2020年代に…

ポルノグラフィティFANCLUBツアー「FANCLUB UNDERWORLD 6」[ファンへの強烈なサプライズプレゼント]

散りばめられた強烈なサプライズプレゼント。 福岡公演に参加。当時の感想はここだけど記憶を頼りに書いているから簡単なものでしかなく、本稿は先日発売されたBDを基に書いている。なので、前掲記事と重複するところはあるけど、その辺はご勘弁ください。 …

フィリップ・K・ディック『メアリと巨人』[苛烈と繊細の青春小説]

優しい雰囲気の和製RPGみたいなタイトルだなあ……。 ディックの主流文学作品。ディックにしてはかなり珍しい女性主体、それも少女が*1主人公という一風変わった特徴を持つ作品。但し、視点キャラは複数いてメアリアンの視点のみで物語が描かれているわけでは…

最近見た映画(2026年4月)

劇場版 ほんとうにあった怖い話~変な間取り~(2024年、日本、監督:寺西涼、82分) 形式的には連作短篇映画ってことになるかな。ある一軒家を舞台にした『禁じられた部屋』『話し相手』『林に埋まった映像』の三エピソードが収録されている。「ほんとうに…

フィリップ・K・ディック『小さな場所で大騒ぎ』[罪と報い……ではなかった物語]

ディックの主流文学作品。電化製品店、倦んだ家庭と不倫、複数人物視点、破綻による物語の収束……と、かなりいつものディック。死後出版された作品*1だけど訳者解説によると執筆自体は1950年代後半から1960年代前半と推測されている。だとすると日の目を見な…

フィリップ・K・ディック『マイノリティ・リポート』[楽しく明るい短編集]

収録作はすべて既読。 異装版カバー写真からわかるように映画『マイノリティ・リポート』制作決定を受けて編まれた短編集。解説によると、発行当時は文庫未収録の短篇を採録していて希少性もそれなりに高かったみたいだけど、現在は収録作品の多くが同文庫《…

最近見た映画(2026年3月)

プロジェクト・ヘイル・メアリー(2026年、アメリカ、監督:フィル・ロード&クリス・ミラー、156分) 素晴らしい。オールタイムベストクラス。 原作は未読。大変面白いという評判だけは知っていたけど内容についてはマジでまったく何も一ミリも知らない状態…

tvk『この動画は再生できません3』[怖さはやや控えめなミステリホラーコメディ]

コント仕立てのホラーコメディシリーズ第三作。テレビドラマとしては三作目だけど、発表順としては本作と二作目の間に劇場版が挟まる形になっていて、たぶん時系列的にも1→2→劇場版→3になっているのだと思う。ただ、劇場版とはそれほど強く繋がっていないか…

フランツ・カフカ『ブレシアの飛行機/バケツの騎士』[初期カフカのサウンドトラック]

形式的にはショートショート集かもしくは断片集ということになるかな。訳者あとがきによると本書はカフカが生前に発表した作品で光文社古典新訳文庫の既刊に採録されていない作品をすべて収めているらしい。落穂拾いの完全版という言葉の通りの一冊になって…

フランツ・カフカ『田舎医者/断食芸人/流刑地で』[短くキレたフルアルバム]

カフカが生前に発表した作品を採録した短編集。冒頭二作品はショートショートにも満たない、どちらかというと詩文とかに近い分量の作品で断片的なイメージをただ想起させる。ほか基本的には短編だけど「夢」はその二作品に近い分量で、独立の作品というより…

最近見た映画(2026年2月)

ザ・フライ(1986年、アメリカ、監督:デヴィッド・クローネンバーグ、96分) 想像していたよりもずっと正道な映画だった。 物質転移装置の事故によって蠅と融合してしまった男の顛末を描いたシンプルなホラーSF。特殊メイクによるグロテスク表現が素晴らし…

フィリップ・K・ディック『ウォー・ゲーム』[アイディア重視な初期短編集]

あちらはソノラマ文庫版、こちらはちくま文庫版。編訳者が同一人物だから、というのもあるだろうけど共通して収録されている作品も多い。ちなみに本書は時系列的には後発の本になる。初期の短篇を収録しているだけにSF色は強めでアイディア短篇的な作品が多…

フィリップ・K・ディック『銀河の壺なおし』[怪獣大戦争による破綻と寂しくも前向きなラスト]

ギャラクティック・ポットヒーラー。ちょっと強そう。見るからにB級なタイトルだけど、その名に反せずディックらしいB級SFな物語が展開される。 奇妙な遊戯、倦んだ日常からの脱出装置としてのB級SF的なギミック、嫌な元妻と新たな恋人、奇妙な仕事、多種多…

最近見た映画(2026年1月)

激突!(1971年、アメリカ、監督:スティーヴン・スピルバーグ、90分) スピルバーグの出世作ということで視聴。些細なことで巨大なトラックが煽り運転を始めてやがて本気で殺しにかかってくる、というシンプルなホラー映画で主人公の運転する自家用車と殺人…

フランツ・カフカ『変身/掟の前で』[両A面とc/wな短編集]

二百ページもないかなり薄い本。四作品が収録されていて、しかもそのうち百ページ超を「変身」が占めているという、まさにA面とc/wみたいな構成……ってサブスクが主流の現代の若い人には通じないかもしれないけど、とにかくバーンと有名な作品が表題作として…

フィリップ・K・ディック『死の迷路』[終わりのない悪夢という無間地獄]

暗く淀んだ世界観。主人公のいない群像劇。煮詰まった嫌な人間関係を軸に物語が進んでいき、事態を打破しようと四苦八苦するけれど結局は破綻の中に呑み込まれてしまい、そして「目覚めて」からの世界も……。 ディックの長篇の中でも一二を争うレベルで暗く閉…

最近見た存在しない映画(2025年12月)

緊迫!(1955年、アメリカ、監督:アルフレッド・ジンネマン、60分) 作中時間と現実の時間がリンクしている『24 -TWENTY FOUR-』シリーズと同じタイプの作品。この時代にその発想はかなり先進的でそれだけに観客の反応も悪くて興行的には大失敗だった。先駆…

最近見た映画(2025年12月)

サウンド・オブ・サンダー(2005年、アメリカ/ドイツ、監督:ピーター・ハイアムズ、102分) 原作の短篇小説が好きなので視聴。イマイチ評判が悪いことは知っていて、だから身構えていたからというのはあるだろうけど、思っていたよりは悪い映画ではなかった…

みなとみらいロマンスポルノ'25 「THE OVEЯ」感想[反転して百面相をみせるステージ。そして新潮流な新曲]

アップテンポハイテンション、みっつの夏、光で表現される夕暮れと夜、映像とともに深い夜、年の瀬と新年の抱負。 最終日のカウントダウンライブに配信で参加。いつもに増してステージ演出が素晴らしくて、そういう意味ではかつてないほど視覚的なライブだっ…