ディックのジャンクSF作品。退廃的な世界で真剣にボードゲームで競っている大人たち、という設定は「パーキー・パットの日々」でおなじみ。ネガティブで機会があれば死のうとする男が主人公というのも何度か見たことがある。いかにもB級な見た目の異星人は数えきれないほど。ぐるぐると目まぐるしく展開してあっちこっちを飛び回って急速に物語が収束する。ある程度ディックの長篇を読んできた人なら随所に既視感を覚えるはず。
舞台は第三次世界大戦によって荒廃した地球。戦時中に使用された化学兵器によって出生率が極端に低くなり人口が激減していて、その対策として人類は廊下除去手術で長命になり、パートナーを次々に取り換えて子供が生まれやすい男女の組み合わせを探すようにしている。人口が激減していても特権階級は存在していて、彼らは地球の土地の権利書を持っていて、それを賭けてゲームをすることに血道をあげている。ここにヴァグと呼ばれるタイタン人が絡んできて……ってところが大まかな設定。
もちろん、メインのストーリーラインはタイトルの通り土地を賭けたゲーム……といえるかどうか。地球人同士のゲーム→殺人事件と記憶喪失の謎→泥沼人間関係→にせもの=スパイサスペンス→星間規模の陰謀の発覚→現実崩壊→戻ってきてヴァグとのゲーム、と本当に目まぐるしく展開していく。事件のほとんどは納得できるようなできないような感じで収束してすかさず次の展開に移っていく。「なんか唐突に出てきたあれってなんだっけ」「問題になっていたあれってどうなったんだっけ」なんて思っている暇はない。お前が読むべきは目の前の事件/事象だけなのだ。ただそれだけだ。過去を振り返るな未来を予想したりするな! 今目の前にあることだけに集中しろ!
素晴らしきB級SF! 素晴らしきジャンクSF!
で、面白かったのか、と問われると……正直あんまりおもしろくない。大学生の時に読んだはずなんだけど、主人公が希死念慮に囚われていて、それを美女に救われる、ということしか覚えてなかったし、いまこうやって作品の感想を書いていても話の筋も覚束ないありさまで、訳者あとがきと解説と『ハヤカワSF文庫総解説』を参照しながらどうにか記憶の片隅から読んでいた時の感情を掬い上げているという体たらく。だから、これから読もうかなと思っている人がいてもお勧めはできない。ディック作品は全部読みたいという人だけ読めばいいと思う。
解説にある通り深く考えずにすさまじいスピードでページを捲り続けてディックが書き殴ったであろうペースと同じくらいの速度で読み進めるのが良い読み方なんじゃないかなと思う。
※リンクは創元推理文庫だけど創元SF文庫異装版で読んだ。
