電羊倉庫

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もっと評価されるべきポルノグラフィティの楽曲「Love,too Death,too」

Love,too Death,too」(作詞:新藤晴一 作曲:ak.homma 編曲:ak.homma,PornGraffitti)

 

 こんなタイトルを付けておいてなんだけど、そんなに嫌われているわけではないと思う。作詞作曲は初期から中期くらいまでの王道の組み合わせ(新藤晴一さん*1本間昭光さん)で作られているし、ブログや個人サイトを覗いてみても嫌いな曲リストに入っているのもあまり見たことがない。「Uta-Net」でのアクセス数は全ポルノグラフィティ楽曲中38位(2021/11現在)とそんなに悪い数字*2ではない。ただ「ねとらぼ調査隊」のシングル曲ランキングでは「EXIT」「真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ」とタイ37位で、まあ順位は相対的なものだからともかくとして、問題は投票数が25ということだ。ちなみに有効投票総数は約4800票。

 どうなんだろう。さっき「嫌いな曲リストに入っていない」と書いたけど、逆に言うと「好きな10曲」とかそういうのにもあまり入っていない気がする。ねとらぼの調査に投票した人間が筋金入りのファンかそれとも代表曲は知っているくらいの人なのかも気になるけどそれは調べようがない。ただ思い出補正もあるけど*3、かなり好きな曲のひとつなので、少なくともこの票数は不服ではある。

 理由を考えてみた。たぶん競合曲の多さのせいだ。音楽的なことはなにも分からないけどwikipedia*4によるとラテン曲に分類されるらしくて、となると「サウダージ」や「アゲハ蝶」「ジョバイロ」「オー! リバル」「LiAR」など鎬を削らなければならず、ノンタイアップの上収録アルバムがベスト盤のみということもあって相対的に「嫌いではないけど地味で目立たない曲」という評価に落ち着いたんじゃないかと思っている。

 

 というわけでいいところを上記の楽曲とある程度比較しながら語ってみたい。

 まずタイトル。ポルノグラフィティ史上一二を争うレベルの美しい。珍しく直截な言葉がタイトルに選ばれていて、英語表記とはいえ「愛」はともかく「死」なんてタイトルどころか歌詞中にすらほとんど使われていない*5。英語の素養がないので「,」の意味とか直訳ではないスラング的な意味があるのかどうかはわからないけれど、比較的明快なタイトルを付ける傾向にあるポルノグラフィティの楽曲の中でもやや凝ったタイトルだろう。

 もちろん歌詞もタイトルに負けないくらい美しい。手拍子の音に惹起される舞踏のリズムに合わせて「離別したと思われる者の幸せを祈りながらも妙に未練たらしくてそもそも交際していたのか片思いだったのか相手は生きているのかどんなシチュエーションだったのかすらよくわらかない」という晴一の真骨頂といえる作詞が繰り広げられる。上記楽曲内ならどちらかというと「ジョバイロ」が近いけど、比較するとど「Love,too Death,too」のほうが大きな人生の流れを歌っているようにも思える。おれはこういう歌詞をすぐに「死別」と解釈する病気に罹っているけど、そう考えなくても解釈の余地は広く、永遠に味の消えないガムのように噛み続けられる。

 人生(愛)の終焉(死)というスケールの大きさに比べ、ちりばめられた言葉のは〈鳥〉〈星〉〈花〉〈砂〉と日常的なものばかりだ。そして「ジョバイロ」に比べて暗喩的な表現は少なく、〈色とりどり〉や〈指の間を落ちていく〉とリアルに感じ取れる表現が多い。そういう地に足の着いた描写は良い意味で大きなスケールを感じさせず、高い視点に圧迫されずに音楽を楽しめるようにしてくれる。

 ちょっと強引だけどもう一つ注目したいのが「絵を描く」という行為。例えば「パレット」〈パレットの上の青色〉→「Love,too Death,too」〈自分のキャンバスに〉→「ゆきのいろ」〈暗い部屋の壁に掛かる一枚の絵〉と時を置いて「絵を描く」描写が登場する楽曲が作られている。三曲とも全然違う曲調だけど、どこか大きな人生の流れについて唄っているようなに思える。だとすると晴一にとっての「絵を描くこと」は「一個人の生涯」を仮託するのに適した題材ということになる。そういう意味でも興味深い曲だ。

 

Love,too Death,too」は、同じラテン調の曲でありながら上記の名曲たちとはまた別の色味で違う種類の味がする曲に仕上がっている。

 これは上記楽曲より優れている/劣っているという話ではなく、それぞれに違った良さがあって、もちろんこの「Love,too Death,too」だってそれは同じで、違った特色の上質な言葉が詰まっている。だからこの「Love,too Death,too」もう少しだけ注目してくれてもいいんじゃないかな。

 

 

 完全に余談になるけど個人的にはMVがとてもいい。最初の間奏で仁王立ちして筋肉を見せつけてくるスキンヘッドの巨漢マッチョメンと晴一の後ろから飛び出してくる口を開けたお姉さんが好き。16thツアー「UNFADED」での「幸せについて本気出して考えてみた」のときにバックで流れていた豪華絢爛な如来像(?)の幾何学模様もそうだったけど、ポルノグラフィティにとって(もしくは映像関係のスタッフの方にとって)の「楽しさや幸福」ってああいうイメージなのかもしれない。

 

「恒常公開ショート版」


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「期間限定公開フル版」


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*1:以下敬称略

*2:過去曲のほうが相対的に有利な点を鑑みてもそこそこ閲覧されている方だと思う

*3:初めて自分で買ったシングルだった。トランプはまだ未開封でとってある。

*4:「ソースはwikipediaかよ……」と思われるかもしれないけど楽曲のジャンルは他に調べる術を知らないのです。音楽の素養がないから自分で聴いてもいまいちよくわからないし……。

*5:ぱっと思いつく範囲で「Zombies are standing out」くらい