ハイ・ヴォルテージ。
熊本公演に現地参加、武道館公演に配信で参加。配信は演奏開始五分前くらいから配信が始まって事前アナウンス*1も聞ける。悪霊に絡めた注意事項は楽しいけど、悪霊を喜ばせたいのか退治したいのかよくわからなくて少し笑った。
配信は今回も字幕付き。もちろん、歌詞はほとんど覚えているけど細かい表現を見ながら鑑賞できるのは嬉しい。
岡野昭仁さん*2の精強な歌声と新藤晴一さん*3のギターの技巧を堪能した三時間だった。
M1. 悪霊少女
いやあ、やっぱりこの曲ですよね。事前アナウンスやステージの雰囲気から予想通りだったという人も多かったみたい。おれも冒頭かラスト一曲かどちらかかなと思っていた。一発目ということで〈逃れられない〉の10秒間ロングトーンも完璧。両論あるかもしれないけど、やっぱりアップテンポから始まるほうがテンション上がって楽しい。曲の短さも相まってロケットスタートの印象。
ただ現地では例によって耳が慣れていないからか十全に味わえたとはいえない。ここから数曲そんな感じだっただけにやっぱり最終公演だけでも配信してくれるのは本当にありがたい。
M2. バトロワ・ゲームズ
短い曲が連続で来るのは予想外。なんとなく「悪霊少女」と日替わり交代で演奏されるのかなと思っていた。冒頭で表示されるプレステのロゴのパロディが洒落ている。爆発するような〈バトロワ・ゲームズ〉は圧巻の一言。
M3.カメレオン・レンズ
ここでやや落ち着いた曲が来るのはちょっと意外だった。特に前二曲が短めだったこともあって、これが一曲目だったかのような錯覚すら覚える。近年のライブで演奏される機会が多いだけに安定感は抜群。
M4.ジョバイロ (熊本)
M4.ネオメロドラマティック(武道館)
現地の「ジョバイロ」はポルノラテン曲の中でもかなり好きなほうで何度聴いても飽きない心地よさがある。比較的よく演奏されるだけに特別感はなかったけど、実直に楽しめた。歓声をあげながら踊れないのが残念でならない。
そして配信は「ネオメロドラマティック」。えっ、マジで? ついこの間こんなの書いて、またライブで聴きたいけど東京ドームでやってたし無理かなあ……と思っていたところでこれ。もしかしておれの思考読んでる? 怖っ……頭にアルミホイル巻かなきゃ……。アップテンポなリズムで畳みかけられる言葉のシャワーは昭仁の滑舌とこの上なく相性が良くて現地で堪能できた人は幸せだったはず。ある意味「マシンガントーク」よりマシンガントークしている。
M5.Stand for one's wish (熊本)
M5.プリズム(武道館)
現地参加時はこのあたりから耳が慣れて(もしくは音響が改善して?)聴きやすくなった。「稀・ポルノグラフィティ」から一曲くるかなとは思っていたからある意味予想通り。英語の発音が現代昭仁(?)になっていたことを覚えている。
武道館は「プリズム」。うぎぎ……わしゃあ「プリズム」をいつ生で聴けるのか楽しみにしておったんじゃ……。というわけで武道館に行けた人を本気で羨んだけど、Twitterで同じこと言っている人はけっこういた。ただ、やっぱりライブでやってくれたのは嬉しい。
M6.サボテン (熊本)
M6.愛が呼ぶほうへ(武道館)
現地では「サボテン」で、こういう初期のバラード系統の曲を大事にしてくれるのはファンとしてはとてもありがたい。
配信では「愛が呼ぶほうへ」。こちらも昔からファンに愛されている名曲で擬人化の手法の一つの極致。じっくりと楽しめる。
M7.ナンバー
音源版をライブで聴けるのはやっぱり嬉しい。ライブでは後奏のギターがより前面に出ていたのが印象に残る。賛否あったVISUAL ALBUMの映像も「旅」を強調する方向で効果的に使われていたと思う。
M8.クラウド
ライブで初披露ということでとてもオーソドックスに演奏されていた。薄明りのライトが明け方の晴れ空を思わせる。もしくは寂れた繁華街の淡い光か。どちらにしてもバックの映像は回想でステージ(で歌われている曲)と時系列にズレがあるという演出で、ラストで両者が一致するという構成……というのは穿った観方なのかも。
M9.ジルダ
こちらも初披露。序盤でロケットスタートを切って、このあたりから中長距離の走り方に切り替えてきたというイメージ。落ち着いて楽しめる。もちろん〈cheers〉の迫力は健在だしラストのフェイクも圧巻。
M10.うたかた
最高かよ。昭仁が作詞した楽曲で五指に入るくらい好きで「愛と青春の日々」以来演奏されていなかったのも知っていたから昭仁のMCでとび上がりそうになった。〈燦々と浴びてみようか〉の長く伸ばすアレンジに心をねじ切られる。原曲より「終わり」が強調されて、原曲よりもスローなのにどこか力強さがあって、儚さよりも哀しみを強く感じさせられる。歌詞の変更はないけど「サボテン」と「サボテン Sonority」の関係性に近い気がする。個人的には原曲の中華感がすごく好きだから、いつかそちらも演奏してほしい。
M11.瞬く星の下で
弾き語りスタイルからバンドメンバーが参加する流れはベタかもしれないけどやっぱり良い。落ち着いた弾き語りから一転して吹っ切れたかのように奮い立たせる歌詞を熱唱する構成、そして〈世界がわずかに輝く〉の終わりとともに流れ落ちていく星の演出や二番から窓枠越しに星空を見るというバックスクリーンの映像からは物語性を感じ取れる。
M12.Zombies are standing out
わたしは、いきる、しかばね、です。
M13.メビウス
字幕の恩恵の大きい曲で普段歌詞カードを見ない人には衝撃だったんじゃないかなと思う。〈こういうこと?〉の力強い緩急と、その直後の水中での衝撃のような鈍く重い音に躰が痺れる。後者は、もしかして殴打の暗喩だったりしないかな。
interlude
バイオリン(?)が終わったあたりで一瞬、「一雫」が始まるのかと思った。音楽のことなんかぜんぜんわからないけどライブで演奏されるインスト曲は大好きで、今回もこういうパートがあって嬉しかった。「Mission of the Far East」のように表情の移り変わりがあって、なんとなくミュージカル用に作った曲なんじゃないかなと思っていたりする。
M14.証言
いったんここでライブが終わっている。決して悪い意味じゃなくて、「証言」にはそれくらいのパワーがある。曲との調和という意味では数ある晴一の歌詞の中でも有数の完成度を誇るだけに字幕の恩恵が大きい。前回の「Fade away」と同じくテーマ的に難しいかもしれないけど定期的に演奏してほしい曲の一つ。
M15.アゲハ蝶
ここからクラップゾーン。間奏では「ララララー」の合唱の代わりにいろいろなリズムでクラップする時間があったけど想像よりずっと楽しかった。コロナ禍が過ぎ去ってしまえばいつの日か、というのはファン共通の想いだと思う。
interlude~ファンキー・タイム~
一公演で二回もインスト曲を聴けてしかもソロパートまであるとはなんてお得な(?)ライブなんだ! 壇上のヴォルテージがあがっていくにつれておれたちの期待も高まっていく。
M16.ミュージック・アワー
このアレンジめっちゃ好き。前回の「ミステーロ」もかなり好きだったけど、それを軽く上回るくらい好き。こんなにライブ版のアレンジを気に入ったのは初めてかもしれない。現地では飛び上がる挙動のせいでアキレス腱が切れるんじゃないかというくらいテンションが上がった。アゲアゲ。
M17.VS
現地でこの曲が流れた瞬間「えっ、MCもなしに本編最後の曲に行くの!?」と思ってしまった。それくらい「神VS神」でのプレイは強烈だったのだけど、今回もそれくらいのパワーがあった。本日二度目の終わり。
M18.テーマソング
おれたちに近い視点での励ましの歌は終盤を迎えて疲れつつある体と心にしみわたる。〈ほら 振り向けば夕日があって 燃えるような熱い赤〉をおれたちが歌える日はいつになるんだろう。
M19.暁
本編最後を告げるMC直前の重低音が全身を震わせる。膝をつく昭仁のパフォーマンスがあまりにも美しい。終盤でもこの声量。咽喉の筋肉はすべてを解決する。もっと血管浮かせて歌い続けてくれ……。アウトロで補強されたギターが強烈な余韻を残す。本日三度目の終わり。
En1.OLD VILLAGER
新曲!やったぜ‼
旧くて新しい曲、というのが第一印象。全体的に初期らしさ、それも『ロマンチスト・エゴイスト』から『雲をも摑む民』くらい雰囲気があるけれどサビは最近っぽさがある。それも、言葉のチョイスに関して、誤解を恐れずに書くならKing Gnuのような新進気鋭のアーティストのニュアンスがある気がする。アルバム『暁』の感想で異系交配のことを書いたけど、この曲もそれが絶妙なバランスで成り立っていると思う。もちろん近年楽曲でいえば「暁」の直系でもあるし「2012spark」の血も入っている。過去と今、もしくは内と外。
攻撃的な楽曲で歌詞も皮肉的だけど説教っぽさが薄いのは、どこか視点が内向きだからかもしれない。ギターソロも好き。もっと掻き鳴らしておれの頭を破壊してくれ。
新しい景色が見たい「そう願うなら自分を変えろ」
というパターンでしょ?
ここ、最高に晴一で大好き。
En2.Century Lovers
多幸感がすごい。熊本公演では「Fu-Fu!」がなかなか揃わずにみんなで悪戦苦闘した記憶があるけど、流石に武道館のチケットを勝ち取った猛者たちは一味違うらしく一発でそろっていた。現地には予算の都合でボイスストラップを購入せずに行ったんだけど割と本気で後悔した。おれはただ手を上げ続けるしかなかった。
En3.ジレンマ
近年復権したアンコールラストの定番曲。ソロパートはそれぞれ、玉田さんはまさかの素手でプレイ、山口さんは殴打するようなプレイ、tasukuさんは「今宵、月が見えずとも」、皆川さんは「サウダージ」のサビを演奏、そして全てを纏め上げるようにギターを搔き鳴らす晴一、そしてラスト一曲なのに有り余る体力すべてを発散するかのように動き回る昭仁と色合い豊かに最後まで楽しませてくれる。
――――
こうやってリストアップするとわかりやすくアルバム曲を演奏するパートが設けられていている。アルバム曲では「You are my Queen」だけ*4が演奏されなかったけど、今後のライブで演奏される機会があるのかちょっと楽しみ。近年ツアーでは定番となっていた「ハネウマライダー」と「オー!リバル」がどちらも演奏されないという珍しいツアーだった。もちろんタオルを振り回したり恍惚の表情でイントロを弾く晴一を観たい気持ちもあるけど、定番を外して尚盛り上がれるのも嬉しい。特に「ハネウマライダー」は終盤に演奏されることが多かったから終わりを察してしまうところもあったし……。「Zombies are standing out」がこの二曲と並ぶ定番になってほしい、というのはラバッパーの総意だと思う。あとインタールードの二曲はどちらもすげえ好きなんだけど何かしらのCD媒体に収録してくれないかなあ……。
病禍で声が出せなかったのはやっぱり残念ではあったけど、そのぶんクラップが多い公演だった。「アゲハ蝶」から始まるクラップパートでは目が血走ったチンパンジーのおもちゃみたいに手をたたき続けた。たぶん顔も同じ感じになっていたと思う。ちなみに熊本公演はW杯で日本が負けた直後だったからMCは何とも言えない雰囲気になっていた。昭仁が理論的な解説をしていたけど、おれの斜め前にいた同年代くらいの男性がしきりに頷いていたからたぶん正しいのだと思う。
あと、これは講演の内容とは直接関係あるわけじゃないけど事前に注文してたシャツが発送が遅れて公演の二日後に到着したのには笑った。普段着にしなさいというメッセージかな。それとロゴの「暁」が「NEW」を組み合わせて作られていることに今更気づいた。
感想はこれくらいにして「OLD VILLAGER」の皮肉に発破をかけられに日本武道館へ戻ります。
*1:サトシさんによるとディズニーのパロディらしい。演技と声質は神谷明さんっぽい気がするけど、自信はない。(追記:白山修さんが担当していました。失礼しました。)
*2:以下敬称略
*3:以下敬称略
*4:シングルを含めるなら「フラワー」「ブレス」も演奏されていない。