電羊倉庫

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最近見た映画(2023年6月)

名探偵ピカチュウ(2019年、アメリカ/日本、監督:ロブ・レターマン、104分)

 思っていたよりCGの出来がいいなあ、というのが第一印象。質感が不気味の谷に落ちるギリギリにいて、表情の豊かさや仕草の可愛らしさは素晴らしいものがある。ポケモンが生活に溶け込んでいる描写はそれだけでかなり楽しい。

 王道を征くバディ探偵ものだけど、名探偵と題しているわりにミステリ要素は低めでストーリーもわりと単純。その割にやや詰め込み気味で説明も少なく若干不親切。その辺は正直あまり高くは評価できないけど、とんでもない矛盾があったりとか耐え難い破綻があるわけではない。

 ポケモンは二作目の金銀までしかやっていないからもちろん知らないポケモンの方が多いのだけど、知っているポケモンもけっこう多くてそれがなんだか嬉しい。題材的にも設定的にもポケモンバトルに重点を置いた作品ではないけど、やっぱりラウンドハウスでのゲンガーvsカメックスは印象的。「かげぶんしん」をそういう風に表現するのかあ。

《印象的なシーン》漫画調のエンディング。

 

 

隣のヒットマン(2000年、アメリカ/カナダ、監督:ジョナサン・リン、98分)

 正直、最初は主人公であるオズ、その妻ソフィーのどちらにもイライラして視聴し始めたのを後悔したけど、フランキーと出会ったあたりから順当に笑いどころが増えてきてほっと胸をなでおろした。サスペンス的な面もそれなりに巧く出来ているし、人間関係の二転三転も無理がなくて、ラストの一下りも(現実的なのかはさておき)それまでの前振りをキチンと上手く活かしていて優等生的。最後の最後まで適度にハラハラさせられる。

 意外だったのはユーモアがあるタイプのコメディだったこと。小粋な台詞やなんともいえないすれ違いで笑わせてくれるタイプの映画とは思ってなかった。五分間隔くらいで細かな笑えるシーンを挿入してくれるから飽きない。

 ただ、タイトルのわりにアクションシーンはそんなに多くない。あと、これは設定的に仕方ないのだけど、どうしても『夏への扉』でも感じた「いやその落とし方はちょっと……」というところもある。まあ、あっちに比べてこっちはやってることが数段ひどいから不憫には思わないけど。

 長さも程よくてとても楽しい映画だった。疲れた日にながら見するのに最適かもしれない。

《印象的なシーン》フランクリンが宿泊するホテルでのドタバタ。

 

 

ブラック・レイン(1989年、アメリカ/日本、監督:リドリー・スコット、125分)

 怖っ。いや、本当、一人だけ違うタイプの作品から紛れ込んできたんじゃないかってくらい怖い。

 ヤクザ映画はほとんど見たことないから間違った感想かもしれないけど、日本のヤクザ映画とアメリカの刑事映画が良いバランスで融合した映画だと思う。バイクを駆るチンピラというと『AKIRA』を思い出すけど製作年代が近い。当時の世相としてそういうのが流行っていたのかな。怖い世の中だなあ。

 面白かったけど、ストーリーは良く言えばオーソドックス、悪く言えばありきたりなもので真新しいものはほとんどない。もちろん、おかしなところはないしテンポもそれなりによくて楽しいのは楽しい。ただ、不朽の名作かと問われると素直に肯定しずらいかなあ。

《印象的なシーン》相棒の遺品に紛れたチャカ。

 

 

マンディブル 2人の男と巨大なハエ(2020年、フランス/ベルギー、監督:カンタン・デュピュー、77分)

 絶妙に不愉快で絶妙に笑える。登場人物が全体的に好感が持てないやつらばかりだけど、それはそれとしてスラプスティックコメディとしてはそれなりに楽しいし、彼らが多少ひどい目にあってもそんなに不憫にも思わない、とある意味バランスが取れている。

 最初のキャンピングカーで暮らしていたおじさんが脱出するシーンはなんだか意味深に思えたけど大きな意味はなかった。巨大な蠅を発見する、というそもそもの設定と併せてもっとマジックリアリズム的な展開になるのかと思ったのだけど、そういう意味ではちょっと期待外れ。あと、巨大な蠅を可愛いと思えるのはこの映画唯一無二の美点(?)かもしれない。

《印象的なシーン》蠅の複眼視点。

 

 

ひとまずすすめ(2015年、日本、監督:柴田啓佑、30分)

 ここでもちょっと書いたけどおれが葛藤や苦悩にあまり価値を置かないというもあって、そんなに好みではなかった。ただ、個人的嗜好は別にすると良く出来た映画で、登場人物の倫理観や属性行動等、それに「正しさ」に偏りがなかったのはすごく良かったと思う。

《印象的なシーン》風にさらわれた名刺。

 

 

ひとまずすすんだ、そのあとに(2014年、日本、監督:柴田啓佑、14分)

 上記作品の続編でオムニバスコメディというおれ好みのジャンルの作品。前作よりもなんでもない日常が多くてクスリと笑えて明るくなれる。まあ、ただ、タイトルにするほど進んでいるかというと……どうだろう。あと、制作年代が前作と前後しているのはどういうことなんだろう。

《印象的なシーン》「工藤さんって本当、水も滴るいい男ですよね